角質剥離成分の解説と成分一覧

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角質剥離成分

角質剥離成分の定義

角質剥離成分とは、剥がれ落ちるべき角質細胞の除去を化学的に促進する成分です[1a]

一方で、剥がれ落ちるべき角質細胞を物理的研磨よって除去する成分はスクラブ剤に分類しています。

皮膚新陳代謝のメカニズム

皮膚最外層である表皮は、以下の表皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)の仕組み

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後にはケラチンから成る角質細胞となります[2a]

角質細胞は、以下の角質細胞間接着の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質細胞間接着の構造図

角質層に存在するデスモソームであるコルネオデスモソーム(corneodesmosome)によって細胞間を結合・接着されており、角層上層へ押し上げられていくにしたがってタンパク質分解酵素であるセリンプロテアーゼ(∗1)やアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンDによってコルネオデスモソームが分解され、最終的に角片(∗2)として剥がれ落ちます[2b][3][4][5][6a][7a]

∗1 セリンプロテアーゼとしては、トリプシン様酵素とキモトリプシン様酵素の2種類が同定されていますが[8a]、ここではまとめてセリンプロテアーゼとしています。

∗2 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的に「ターンオーバー(turnover)」と呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています[9]

過角化(角質肥厚)の解説とその原因

正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持していますが、加齢、肌荒れなどの影響によってターンオーバーに遅延が生じると、剥がれ落ちるべき角質細胞が残ったままの状態となり、次第に角質層の異常堆積(∗3)が起こり、ターンオーバーのサイクルが狂いはじめることが知られています[10a]

∗3 堆積とは、幾重にも積み重なることをいいます。

ターンオーバーのサイクルが狂いはじめ角質層に異常堆積が起こると、以下の皮膚の表面(皮表)の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

皮表の構造

角層が生理的範囲を超えて肥厚し、部分的に皮膚が硬くなり、皮丘と皮溝の高低差が増し、キメが粗くなる過角化(角質肥厚:ハイパーケラトーシス)と呼ばれる症状が現れます[10b][11]

また、皮膚の色を直接左右するメラニンは、通常、角化とともに角層へ押し上げられ、最終的には角質細胞の落屑によって皮膚から排泄されますが、ターンオーバーが遅延し表皮内に長期間滞留するとシミやくすみの原因となることが報告されています[12][13]

ニキビ(尋常性ざ瘡)の解説と角質剥離成分との関係

ニキビ(尋常性ざ瘡)(∗4)においても角質剥離成分が効果を発揮することが知られていますが、まず前提知識としてニキビの種類および重症度について解説します。

∗4 ざ瘡とは、毛を包んでいる毛包と呼ばれる細長い管に生じる様々な炎症を伴った症状の総称であり、尋常性ざ瘡とはニキビの学術的な名称であり、いろいろなざ瘡の中で最も一般的な標準型という意味です[14a]

以下のニキビの種類・重症度図をみるとわかりやすいと思いますが、

ニキビの種類・重症度

ニキビは、毛包漏斗部(毛穴開口部)が過剰な皮脂分泌によって硬くなったり、角質細胞と脂質の混合物が詰まることによってせばめられ、毛包内に皮脂が貯留している状態である微小面皰を形成することから進行していき、さらに毛穴が閉じて皮脂の貯留が増えていくと面皰(∗5)として、

∗5 面皰(めんぽう)はコメド(comedo)とも呼ばれ、脂腺性毛包において脂腺の活動性の亢進から皮脂の分泌が増加し、毛包漏斗部の角化亢進により皮脂の毛包内貯留をきたした状態を指します。炎症は起こしていない状態であり、毛穴開口部が閉じた閉鎖面皰(白色面皰:白ニキビ)と毛穴が開大した開放面皰(黒色面皰:黒ニキビ)に分けられます[14b]。微小面皰は面皰の前段階であり、皮疹としては認識できない程度の毛包内皮脂貯蔵に伴う病理組織学的な変化を指します[15a]

重症度一般名称学術名称炎症性状態
軽度



重度
白ニキビ閉鎖面皰非炎症性正常の皮膚色で白っぽくポツンとできて毛穴が閉じている面皰であり、非炎症性で面皰の内容物はまだ外気に触れていない
黒ニキビ開放面皰貯留している皮脂が毛穴を押し拡げて毛穴が開き、外に出て空気中の汚れなどの付着と皮脂の酸化がみられると、面皰の先端部(毛穴の開口部)が黒っぽくなる
赤ニキビ紅色丘疹炎症性面皰の内容物のうち、皮脂成分による毛包への刺激と細菌による作用により、毛包周囲に炎症が誘導され、炎症性丘疹が起こる
黄ニキビ膿疱紅色丘疹が毛包周囲の組織にまで進行し、好中球などの白血球が浸潤して化膿を起こす

このように重症化していくことが知られています[14c][15b][16]

ニキビ(尋常性ざ瘡)においては、面皰ができる軽度の段階で面皰頭部を開口し、面皰の内容物を外部に排出する目的で角質剥離成分が用いられています[17]

角質剥離成分の作用ポイント

化粧品において角質剥離成分とは、剥がれ落ちるべき角質細胞の除去を化学的に促進する成分のことをいいます[1b]

角質剥離における実際の角質剥離成分の作用ポイントは、

  1. 角層プロテアーゼの活性促進
  2. カテプシンD産生促進
  3. コルネオデスモソーム分解促進

主にこのようなポイントに作用する成分が報告されており、これらのうち1つ以上の効果を有することで角質剥離にアプローチします。

1. 角層プロテアーゼの活性促進

加齢や低湿度環境などの影響によって角層の水分量が減少すると、剥がれ落ちるべき角質細胞が残ったままの状態となり、過角化(角質肥厚)などが生じることが知られていますが、一般的な過角化のメカニズムとしては角層の水分量が減少することでコルネオデスモソームを分解するセリンプロテアーゼの働きが弱くなり、コルネオデスモソームが多く残っていることによって正常に剥離・落屑しないことによるものであると考えられています[8b]

このような背景から、角層セリンプロテアーゼの活性を促進する角質剥離アプローチが用いられています。

ただし、角層水分量低下によって起こる過角化の改善は、前提として角層の水分量を増加しセリンプロテアーゼが適切に働けるようにする必要があるため、一般に保湿剤(ヒューメクタント)が単独使用または併用されます[8c]

2. カテプシンD産生促進

カテプシンDは、アスパラギン酸プロテアーゼであり、セリンプロテアーゼと同様に顆粒層の上層で発現した後に角質細胞間に放出され、pHが弱酸性となる角層上層で活性化し、コルネオデスモソームを分解することが明らかにされています[6b][7b]

このような背景から、カテプシンDの産生を促進することが角質剥離促進アプローチとして用いられています。

3. コルネオデスモソーム分解促進

角層の水分量が減少すると、コルネオデスモソームを分解するセリンプロテアーゼの働きが弱くなり、剥がれ落ちるべき角質細胞が残ったままの状態となり、過角化(角質肥厚)などが生じることが知られています[8d]

角質剥離を促進するアプローチとしては、角層の水分量を増加する保湿アプローチを含むセリンプロテアーゼ活性促進によってコルネオデスモソームの分解を促進する方法がありますが、それとは別に直接コルネオデスモソームの接着を弱めることでセリンプロテアーゼによる分解を受けやすくするアプローチも知られています。

この直接コルネオデスモソームの接着を弱める作用は、医療分野において肌荒れ(ドライスキン)やニキビ(尋常性ざ瘡)のような角質肥厚を呈する皮膚に対して、α-ヒドロキシ酸やβ-ヒドロキシ酸を塗布した際の治療効果によって知られるようになり[18][19][20]、α-ヒドロキシ酸のケミカルピーリング剤としての有効性は多くの臨床研究によって証明されています。

ただし、化粧品においては有効性よりも安全性が重視されるため、一般にかなり穏やかな角質剥離作用となるように濃度やpHが調整されています。

参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「剥離剤」日本化粧品成分表示名称事典 第3版付録,687-688.
  2. ab朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  3. 清水 宏(2018)「角化」あたらしい皮膚科学 第3版,8-10.
  4. A. Lundstrom & T. Egelrud(1988)「Cell shedding from human plantar skin in vitro: evidence of its dependence on endogenous proteolysis」Journal of Investigative Dermatology(91)(4),340-343. PMID:3049831.
  5. T. Egelrud & A. Lundstrom(1990)「The dependence of detergent-induced cell dissociation in non-palmo-plantar stratum corneum on endogenous proteolysis」Journal of Investigative Dermatology(95)(4),340-343. PMID:1698889.
  6. abHorikoshi, et al(1999)「Role of endogenous cathepsin D-like and chymotrypsin-like proteolysis in human epidermal desquamation」British Journal of Dermatology(141)(3),453-459. DOI:10.1046/j.1365-2133.1999.03038.x.
  7. abC. Caubet, et al(2004)「Degradation of Corneodesmosome Proteins by Two Serine Proteases of the Kallikrein Family, SCTE/KLK5/hK5 and SCCE/KLK7/hK7」Journal of Investigative Dermatology(125)(5),1235-1244. DOI:10.1111/j.0022-202X.2004.22512.x.
  8. abcd小山 純一, 他(1999)「角層の接着, 剥離の機構とスキンケアに対する役割」日本化粧品技術者会誌(33)(1),16-26. DOI:10.5107/sccj.33.16.
  9. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  10. ab朝田 康夫(2002)「異常角化現象とは」美容皮膚科学事典,134-135.
  11. 清水 宏(2018)「過角化(角質増殖/角質肥厚/角質増生)」あたらしい皮膚科学 第3版,41-42.
  12. 金田 泰雄(1996)「くすみとは何か その原因と定義をめぐって」Fragrance Journal(24)(2),9-16.
  13. 福安 健司・田中 浩(1996)「冬期におけるくすみとその対策」Fragrance Journal(24)(2),25-30.
  14. abc朝田 康夫(2002)「ニキビができるメカニズム」美容皮膚科学事典,213-220.
  15. ab林 伸和, 他(2017)「尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017」日本皮膚科学会雑誌(127)(6),1261-1302. DOI:10.14924/dermatol.127.1261.
  16. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「にきびケア剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,579-585.
  17. 光井 武夫(2001)「にきび用薬剤」新化粧品学 第2版,173-175.
  18. E.J. Van Scott & R.J. Yu(1974)「Control of Keratinization With a-Hydroxy Acids and Related Compounds」Archives of Dermatology(110)(4),586-590. DOI:10.1001/archderm.110.4.586.
  19. E.J. Van Scott & R.J. Yu(1989)「Alpha hydroxy acids: procedures for use in clinical practice」Cutis(43)(3),222-228. PMID:2523288.
  20. M.V. Dahl & A.C. Dahl(1983)「12% lactate lotion for the treatment of xerosis. A double-blind clinical evaluation」Archives of Dermatology(119)(1),27-30. DOI:10.1001/archderm.1983.01650250031011.

角質剥離成分一覧

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