アラビアゴムの基本情報・配合目的・安全性

アラビアゴム

化粧品表示名称 アラビアゴム
医薬部外品表示名称 アラビアゴム
化粧品国際的表示名称(INCI名) Acacia Senegal Gum
配合目的 乳化安定化皮膜形成 など

1. 基本情報

1.1. 定義

マメ科植物アラビアゴムノキ(学名:Acacia senegal 英名:Gum Arabic Tree)の幹から得られる樹液粘質物・凝固物(樹脂)であり、化学構造的にアラビン酸(∗1)のカルシウム、マグネシウム、カリウムの混合塩を主成分とした複合多糖かつ植物系水溶性高分子です[1][2a]

∗1 アラビン酸(arabic acid)の塩はアラビン(arabin)であり、アラビアガムの約80%を占めます。アラビンは以下の化学式で表される1,3結合したβ-D-ガラクトース単位を主鎖とし、側鎖には2-5個の1,3結合したβ-D-ガラクトースユニットが1,6結合し、さらに主鎖と側鎖の両方にβ-L-アラビノフラノース、β-L-ラムノース、β-D-グルクロン酸などが含まれた構造をもつガラクタンを主鎖としています[2b][3]

アラビアゴムの化学構造

1.2. 分布

アラビアゴムは、自然界においてアフリカのスーダンに分布するマメ科植物であるアラビアゴムノキ(学名:Acacia senegal)やアカシアセヤル(学名:Acacia seyal)の成木の浸出液として存在しています[2c]

1.3. 化粧品以外の主な用途

アラビアゴムの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 油性香料や油性色素の乳化目的で飲料、ゼリー、アイスクリームなどの菓子類に、皮膜形成能に優れているためコーティング目的でチョコレート類やナッツ類などに広く用いられています[4][5a]
医薬品 結合、懸濁・懸濁化、コーティング、粘着、賦形、分散、糖衣目的の医薬品添加剤として経口剤、筋肉注射、外用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化
  • 皮膜形成

主にこれらの目的で、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、スキンケア化粧品、洗顔料、クレンジング製品、デオドラント製品、まつ毛美容液、シャンプー製品、コンディショナー製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、アラビアゴムは化学構造的に疎水性ペプチドが結合しており、疎水ペプチドを油脂中に親水性の多糖部分を水中に存在させることで強い乳化力を示し、また広い酸性下でも乳化に影響を受けないことから、食品・飲料分野において古くから油脂ならびに油性香料の乳化に広く使用されており[5b][7]、化粧品においても乳化または乳化安定化目的で植物油脂や油性植物エキスをはじめ様々な製品に使用されています[8][9]

2.2. 皮膜形成

皮膜形成に関しては、アラビアゴムは水溶性の粘性物質であり、完全に乾くとフィルム状の皮膜を形成するため、お湯で落とせるマスカラの皮膜形成剤として使用されています[10]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

アラビアゴムの配合製品数と配合量の調査結果(2000-2001年)

4. 安全性評価

アラビアゴムの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

食品添加物の既存添加物リスト、日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11]によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者(18-49歳)に8%アラビアゴムを含むマスカラ0.1mLを対象にMaximization皮膚感作試験を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間において皮膚感作反応は観察されなかった。この試験条件下では8%アラビアゴムを含むマスカラは検出可能な接触感作能を有さず、したがって通常使用条件下で接触感作反応を引き起こす可能性は低いと結論付けられた(Ivy Laboratories,2000)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「アラビアゴム」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,154.
  2. abcA.A. Mariod(2018)「Functional Properties of Gum Arabic」Gum Arabic,283-295. DOI:10.1016/B978-0-12-812002-6.00024-5.
  3. A.A. Mariod(2018)「Chemical Properties of Gum Arabic」Gum Arabic,67-73. DOI:10.1016/B978-0-12-812002-6.00006-3.
  4. 樋口 彰, 他(2019)「アラビアガム」食品添加物事典 新訂第二版,25.
  5. ab井戸 隆雄・片山 豪(2011)「アラビアガムの特性とその利用」応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌(1)(3),244-246. DOI:10.5458/bag.1.3_244.
  6. 日本医薬品添加剤協会(2021)「アラビアゴム」医薬品添加物事典2021,26-27.
  7. 浅井 以和夫, 他(1996)「多糖類による食品物性形成」応用糖質科学(43)(3),385-392. DOI:10.11541/jag1994.43.385.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「高分子」パーソナルケアハンドブックⅠ,106-134.
  9. 鈴木 一成(2012)「アラビアガム」化粧品成分用語事典2012,592.
  10. 宇山 侊男, 他(2020)「アラビアゴム」化粧品成分ガイド 第7版,233.
  11. W. Johnson(2005)「Final Report of the Safety Assessment of Acacia Catechu Gum, Acacia Concinna Fruit Extract, Acacia Dealbata Leaf Extract, Acacia Dealbata Leaf Wax, Acacia Decurrens Extract, Acacia Farnesiana Extract, Acacia Farnesiana Flower Wax, Acacia Farnesiana Gum, Acacia Senegal Extract, Acacia Senegal Gum, and Acacia Senegal Gum Extract」International Journal of Toxicology(24)(3_suppl),75-118. DOI:10.1080/10915810500257170.

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