セタノールの基本情報・配合目的・安全性

セタノール

化粧品表示名 セタノール
医薬部外品表示名 セタノール
INCI名 Cetyl Alcohol
配合目的 乳化安定化感触改良加脂肪 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、炭素数16で構成された一価アルコールかつ脂肪族アルコール高級アルコールです[1]

セタノール

1.2. 物性

セタノールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 溶解性
49.5 190(15mmHg) 水に不溶、有機溶媒に可溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 分布

セタノールは、自然界において魚油や鯨油などに存在しています[2b][3b]

1.4. 化粧品以外の主な用途

セタノールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 安定・安定化、界面活性剤、潤沢、基剤、結合、懸濁・懸濁化、光沢化、コーティング、乳化、粘稠、賦形目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、歯科外用剤および口中用剤用などに用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化
  • 油性感および密着性低減による感触改良
  • 加脂肪

主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、日焼け止め製品、洗顔料、シャンプー製品、ヘアスタイリング製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、セタノールは化学構造的に炭素数16(C16)という比較的短い直鎖構造の末端にあるヒドロキシ基(-OH)が親水活性を与え、油相と水相の界面においてその界面膜を強靭なものとすることから、乳化製品の経時的安定化目的でクリーム系製品、乳液などに汎用されています[5][6a]

2.2. 油性感および密着性低減による感触改良

油性感および密着性低減による感触改良に関しては、セタノールは植物油脂の油性感やロウ類の密着性・粘稠性を低減する感触調整目的で口紅などのスティック系メイクアップ製品に使用されています[6b][7]

2.3. 加脂肪

加脂肪に関しては、セタノールは洗浄製品に加えることで泡をきめ細かくし、かつ過渡の脱脂を抑制することから[6c][8][9][10]、皮膚・毛髪の保護を兼ねた泡質改善目的で主に洗顔料、シャンプー製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

セタノールは、混合原料が開発されており、セタノールと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL WAX-110
構成成分 セタノール、セチル硫酸Na
特徴 アニオン性自己乳化型ワックス
原料名 NIKKOL WAX-220
構成成分 セテス-25、セタノール
特徴 非イオン自己乳化型ワックス
原料名 POLAWAX GP-200
構成成分 セタノール、ステアリン酸PEG-23
特徴 自己乳化型ワックス
原料名 EMULCIRE 61 WL 2659 CG MB
構成成分 セタノールセテス-20ステアレス-20
特徴 クリーム用O/W乳化剤
原料名 EMULIUM DELTA MB
構成成分 セタノールステアリン酸グリセリルステアリン酸PEG-75セテス-20ステアレス-20
特徴 液晶構造を形成し、種々の油剤と優れた相溶性を有するO/W型乳化剤
原料名 EMULIUM MELLIFERA MB
構成成分 ジステアリン酸ポリグリセリル-6、ホホバエステル、ポリグリセリル-3ミツロウ、セタノール
特徴 繊細でライトな瑞々しい質感を強く意識したO/W型乳化剤
原料名 EMACOL SKN-161
構成成分 ミリスチン酸グリセリル、セチルリン酸K、BGセタノール
特徴 撥水性・耐水性に優れたクリーム基剤
原料名 SP DURAQUENCH IQ SA MBAL
構成成分 セタノールイソステアリン酸イソステアリル、セチルリン酸K、ステアリン酸セチル、ステアリン酸
特徴 肌表⾯の脂質構造を合理的に整え肌保湿を最適にする効果を発揮する複合エモリエント剤
原料名 PROLIPID 141
構成成分 ステアリン酸グリセリルベヘニルアルコールパルミチン酸ステアリン酸レシチン、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールセタノール
特徴 O/W型ラメラ液晶乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス LC
構成成分 ベヘニルアルコールステアリルアルコール、PEG-20フィトステロール、セタノールフィトステロールズステアリン酸グリセリル水添レシチントリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
特徴 様々な油性成分を乳化し、皮膚上で細胞間脂質と類似の安定なラメラ型液晶構造を形成しバリア機能を発揮する複合O/W型乳化剤
原料名 TEFOSE HC MB
構成成分 セタノールステアリン酸グリセリルセテス-20ステアレス-20
特徴 ヘアケア用O/W型乳化剤
原料名 DN-R コンク VP
構成成分 セタノール水添パーム油BGオリーブ油コカミドMEAステアルトリモニウムクロリドイソプロパノール
特徴 毛髪にツヤ、うるおい、柔軟性を付与する効果を有し、様々な油剤を乳化するコンディショニング・トリートメント用基剤
原料名 EMACOL OT-100
構成成分 セタノールプロパンジオールステアルトリモニウムクロリド安息香酸アルキル(C12-15)、ジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリド
特徴 柔らかさ、滑らかさ、浸透感に優れるアウトバストリートメント用基剤
原料名 EMACOL CD-JJ15
構成成分 セタノール、ホホバアルコール、ベヘントリモニウムクロリドセテス-20ホホバ種子油
特徴 ホホバアルコールを高配合した耐塩性トリートメント基剤
原料名 EMACOL VT-740
構成成分 セタノールベヘントリモニウムクロリド、セテス-2、ホホバアルコール、ミリスチン酸イソプロピル
特徴 ホホバアルコール配合パーマ用粘性基剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1988年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

セタノールの配合製品数と配合量の調査結果(1988年および2005-2006年)

5. 安全性評価

セタノールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎または皮膚乾燥を有する場合):まれに皮膚感作を引き起こす可能性あり
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎または皮膚乾燥を有している場合は、まれに皮膚感作が報告されているため、注意が必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11a]によると、

  • [ヒト試験] 20名の被検者に100%セタノールを24-48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)
  • [ヒト試験] 80名の被検者に11.5%セタノールを含むクリームを対象に10日間の累積刺激性試験を実施したところ、1名の被検者に紅斑や毛嚢炎が観察されたが、他の被検者はいずれも皮膚刺激を示さなかった(E.Novak,1969)
  • [ヒト試験] 9名の被検者に5%セタノールを含むクリームを対象に21日間の累積刺激性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚累積刺激剤ではなかった(Hill Top Research Inc,1984)
  • [ヒト試験] 75名の被検者に3.25%セタノールを含むコンディショナーを対象に30日間の使用試験を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Hill Top Research Inc,1981)
  • [ヒト試験] 11名の被検者に2%セタノールを含むクリームを対象に21日間の累積刺激性試験を実施したところ、この試験物質は軽度の皮膚累積刺激剤の可能性が示唆された(Hill Top Research Inc,1982)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%セタノールを点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、この試験物質は実質的に眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に6.36%セタノールを含むクリームを点眼し、3匹の眼はすすぎ、残りの3匹の眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Leberco Laboratories Inc,1983)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に5%セタノールを含むクリームを点眼し、3匹の眼はすすぎ、残りの3匹の眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に3.25%セタノールを含むコンディショナーを点眼し、6匹の眼をすすぎ、残りの3匹の眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Consumer Product Testing Co,1982)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11c][12]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 110名の被検者に8.4%セタノールを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
  • [ヒト試験] 103名の被検者に4%セタノールを含むリップスティックを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] ;116名の被検者に3%セタノールを含むハンドクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において1名の被検者に軽度-中程度の紅斑が観察されたが、チャレンジ期間において皮膚反応は観察されず、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 650名の被検者に2%セタノールを含むハンドローションを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に健常な皮膚を有する場合において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎を有する242名の患者(19-60歳)の背中に30%セタノールを含む白色ワセリンを対象に48時間パッチテストを3年間にわたって実施したところ、242名のうち27名(11.2%)がセタノールに陽性反応を示した。この結果は他の研究結果(たとえばHjorth and Trolle-Lassenの試験では1,664名のうち陽性反応は2名のみ、Fisher et alの試験では100名のうち陽性反応なし)と一致しなかった(A. Blondeel,1978)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 2005年4月に女性会社員(29歳)の両手に乾燥症状があり、A社10%尿素クリームを毎日外用したが、徐々に瘙痒をともなう紅斑、亀裂がひろがったため、6月に近医皮膚科を受診した。パスタロン10ローションの処方を受け、毎日3-4回外用したものの改善しないため、精査治療目的のために48時間閉塞パッチを実施した。結果はICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)基準でA社尿素クリームが48時間および72時間後で+および++であり、パスタロン10ローションは48時間および72時間後で+および+であった。この結果をうけ、各成分のパッチテストを実施したところ、30%セタノールは48時間および72時間後で+および++であり、30%ステアリルアルコールは48時間および72時間後で+および+であり、30%セバシン酸ジエチルは48時間および72時間後で+および++であった。これらの成分を健常な皮膚を有する4名にパッチテストしたところ、陰性であった。これらの結果から、セタノール、ステアリルアルコールおよびセバシン酸ジエチルによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した(杉浦 真理子 他,2006)

このように記載されており、試験データをみるかぎりまれに陽性反応が報告されているため、皮膚炎または皮膚乾燥を有する場合はまれに皮膚感作反応を引き起こす可能性があると考えられます。

5.4. 光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[11d]によると、

  • [ヒト試験] 52名の被検者に4%セタノールを含むリップスティクを対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 407名の被検者に1%セタノールを含むスキンケア製品を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して光感作なしと報告されているため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「セタノール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,598-599.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「1-ヘキサデカノール」化学大辞典,2120-2121.
  3. ab有機合成化学協会(1985)「1-ヘキサデカノール」有機化合物辞典,898.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「セタノール」医薬品添加物事典2021,346-347.
  5. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.
  6. abc日光ケミカルズ株式会社(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,44-55.
  7. 広田 博(1970)「アルコール類」化粧品のための油脂・界面活性剤,48-57.
  8. 日油株式会社(2019)「高級アルコール」化粧品用・医薬品用製品カタログ,36.
  9. 日光ケミカルズ株式会社(1982)「過脂肪剤」化粧品製剤実用便覧,17.
  10. 田村 隆光(2009)「界面活性剤水溶液の泡膜特性」オレオサイエンス(9)(5),197-210. DOI:10.5650/oleoscience.9.197.
  11. abcdR.L. Elder(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Alcohol,Cetyl Alcohol, lsostearyl Alcohol,Myristyl Alcohol, and Behenyl Alcohol」Journal of the American College of Toxicology(7)(3),359-413. DOI:10.3109/10915818809023137.
  12. 杉浦 真理子, 他(2006)「セタノール,ステアリルアルコール,セバシン酸ジエチルによるアレルギー性接触皮膚炎」アレルギー(55)(3-4),455. DOI:10.15036/arerugi.55.455_3.

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