べヘニルアルコールの基本情報・配合目的・安全性

べヘニルアルコール

化粧品表示名称 べヘニルアルコール
医薬部外品表示名称 べヘニルアルコール
化粧品国際的表示名称(INCI名) Behenyl Alcohol
配合目的 乳化安定化感触改良加脂肪 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、炭素数22で構成された一価アルコールかつ脂肪族アルコール高級アルコールです[1]

べヘニルアルコール

1.2. 物性

べヘニルアルコールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 溶解性
65-70 180(0.22mmHg) 水に不溶、エタノールに可溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 分布

べヘニルアルコールは、自然界においてナタネ油などに存在しています[2b]

1.4. 化粧品以外の主な用途

べヘニルアルコールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤目的の医薬品添加剤として外用剤などに用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化
  • 粘稠性調整による感触改良
  • 加脂肪

主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、マスク製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、日焼け止め製品、洗顔料、シャンプー製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、べヘニルアルコールはセタノールステアリルアルコールと比較して融点が高く炭素数が大きいことから温度耐性や安全性が高く、かつ乳化安定性に優れることを特徴としており、乳化製品の経時的安定化目的でクリーム系製品、乳液、メイクアップ製品、ヘアケア製品などに汎用されています[5][6a]

2.2. 粘稠性調整による感触改良

粘稠性調整による感触改良に関しては、べヘニルアルコールは油性基剤の融点や粘稠性(∗1)を調整する感触調整目的でスティック系メイクアップ製品やクリーム系製品に使用されています[6b]

∗1 粘稠性(ねんちょうせい)とは、粘り(ねばり)のことであり、クリームや油性基剤の固さ・柔らかさを示します。粘稠性が高いほど固くなり、また流動性が低く(伸びにくく)なります。

2.3. 加脂肪

加脂肪に関しては、べヘニルアルコールは洗浄製品に加えることで泡をきめ細かくし、かつ過渡の脱脂を抑制することから[7][8][9]、皮膚・毛髪の保護を兼ねた泡質改善目的で主に洗顔料、シャンプー製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

べヘニルアルコールは、混合原料が開発されており、べヘニルアルコールと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 HELIOSOFT
構成成分 レシチンべヘニルアルコールベヘン酸グリセリル
特徴 柔らかな感触を付与し、ラメラ液晶を形成するO/W型乳化剤
原料名 AMISOLSOFT
構成成分 レシチンダイズステロールべヘニルアルコールステアリン酸グリセリル
特徴 ラメラ構造を構築し、高い保湿性を発揮するO/W型乳化剤
原料名 PROLIPID 141
構成成分 ステアリン酸グリセリルべヘニルアルコールパルミチン酸ステアリン酸レシチン、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールセタノール
特徴 ラメラ液晶を形成するO/W型乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス LC
構成成分 べヘニルアルコールステアリルアルコール、PEG-20フィトステロール、セタノールフィトステロールズステアリン酸グリセリル水添レシチントリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
特徴 様々な油性成分を乳化し、皮膚上で細胞間脂質と類似の安定なラメラ型液晶構造を形成しバリア機能を発揮する複合O/W型乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス LC-EF
構成成分 べヘニルアルコールステアリルアルコールフィトステロールズステアリン酸グリセリルミリスチン酸ポリグリセリル-10水添レシチントリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
特徴 皮膚上で細胞間脂質と類似の安定なラメラ型液晶構造を形成しバリア機能を発揮する複合O/W型乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス 41
構成成分 べヘニルアルコール、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイルラクチレートNa
特徴 ゲルネットワーク構造を形成するスキンケア製品用O/W型乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス 61H
構成成分 べヘニルアルコール、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、乳酸ステアラミドプロピルジメチルアミン
特徴 コンディショニング効果を有し、水中でゲルネットワーク構造を形成する頭髪製品用O/W型乳化剤
原料名 EMACOL SKN-131
構成成分 ポリソルベート60べヘニルアルコールステアリン酸グリセリルエチルヘキサン酸セチルオクチルドデカノールステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸PEG-15グリセリル
特徴 耐塩性に優れたクリーム基剤
原料名 MONTANOV 202
構成成分 アラキジルアルコール、べヘニルアルコール、アラキジルグルコシド
特徴 アルキルグルコシドと高級アルコールからなるO/W型乳化剤
原料名 DN Pearl SC5
構成成分 グリセリンイソステアリン酸ポリグリセリル-10べヘニルアルコールペンチレングリコール、クインスシードエキス、
特徴 パール光沢を付与するパール濃縮液
原料名 EMACOL CD-6710
構成成分 ミリスチルアルコール、ジメチルステアラミン、べヘニルアルコールアジピン酸ジイソブチルシア脂ミリスチン酸、ヘキシルデカノール
特徴 三級アミン型トリートメント基剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1988年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

べヘニルアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1988年および2005-2006年)

5. 安全性評価

べヘニルアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性

日光ケミカルズの安全性データ[10]によると、

  • [ヒト試験] 51名の被検者に10%ベヘニルアルコールを含むスクワラン溶液を48時間単回閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、軽度以上の皮膚刺激反応を示さなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[3b]によると、

  • [動物試験] 5匹のウサギの右眼に1%ベヘニルアルコールを含むオイル50μLを点眼し、Draize法に基づいて点眼2,6,24および48時間後に結膜刺激スコアを0-20のスケールで評価したところ、点眼2および6時間後の平均結膜刺激スコアはそれぞれ18および10であり、24および48時間で結膜刺激の兆候はみられず、この試験物質は最小限の眼刺激剤であった(Henkel and Cie GMBH,1977)

このように記載されており、試験データをみるかぎり最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

医薬品添加物規格2018および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「べヘニルアルコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,871.
  2. ab田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール」香粧品科学 理論と実際 第4版,117-120.
  3. abR.L. Elder(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Alcohol,Cetyl Alcohol, lsostearyl Alcohol,Myristyl Alcohol, and Behenyl Alcohol」Journal of the American College of Toxicology(7)(3),359-413. DOI:10.3109/10915818809023137.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「べヘニルアルコール」医薬品添加物事典2021,541-542.
  5. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.
  6. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,44-55.
  7. 日油株式会社(2019)「高級アルコール」化粧品用・医薬品用製品カタログ,36.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(1982)「過脂肪剤」化粧品製剤実用便覧,17.
  9. 田村 隆光(2009)「界面活性剤水溶液の泡膜特性」オレオサイエンス(9)(5),197-210. DOI:10.5650/oleoscience.9.197.
  10. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「高級アルコール」新化粧品原料ハンドブックⅡ,815.

TOPへ