ベヘン酸の基本情報・配合目的・安全性

ベヘン酸

化粧品表示名 ベヘン酸
医薬部外品表示名 ベヘニン酸
INCI名 Behenic Acid
配合目的 乳化安定化 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、炭素数と二重結合の数が22:0で構成された飽和脂肪酸高級脂肪酸です[1]

ベヘン酸

1.2. 物性

ベヘン酸の物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 溶解性
81-82 306(60mmHg) 水に不溶、エタノールやエーテルに難溶

このように報告されています[2a][3]

1.3. 分布

ベヘン酸は、自然界において非常に少ない量ですがナタネ油やカラシナ種子油などに存在しています[2b][4a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ベヘン酸の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、スキンケア製品、ボディソープ製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、ベヘン酸は脂肪酸としては融点が高く、またアルキル基が大きいにも関わらず抱水性がすぐれており、乳化した場合の安定性や温度耐性が優れていることから、乳化物の安定化目的でつけっぱなし製品を中心に使用されています[4b][6]

3. 混合原料としての配合目的

ベヘン酸は混合原料が開発されており、ベヘン酸と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Picocare SE
構成成分 水添レシチンミリスチン酸ステアリン酸ベヘン酸ステアリルアルコールベヘニルアルコール
特徴 独特の肌触りを付与する天然レシチン乳化剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ベヘン酸の配合製品数と配合量の比較調査結果(2016-2019年)

5. 安全性評価

ベヘン酸の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

医薬品添加物規格2018および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ベヘン酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,873.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「ベヘン酸」化学大辞典,2146.
  3. 有機合成化学協会(1985)「ドコサン酸」有機化合物辞典,599.
  4. ab広田 博(1997)「飽和脂肪酸」化粧品用油脂の科学,64-68.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ベヘン酸」医薬品添加物事典2021,542.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(1977)「天然脂肪酸」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,39-50.

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