バチルアルコールの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | バチルアルコール |
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医薬部外品表示名 | バチルアルコール、グリセリンモノステアリルエーテル |
INCI名 | Batyl Alcohol |
配合目的 | 乳化安定化、基剤、エモリエント など |
1. 基本情報
1.1. 定義
グリセリンとステアリルアルコールのモノエーテルであり、以下の化学式で表される二価アルコール(∗1)です[1]。
∗1 アルコールの中でヒドロキシ基(-OH)の数が1個のものを一価アルコール、2個のものを二価アルコール、n個のものをn価アルコールといい、2個以上含むものは多価アルコールともいいます。バチルアルコールはヒドロキシ基(-OH)を2個もつ二価アルコールです。
1.2. 物性
バチルアルコールの物性は、
融点(℃) | 溶解性 |
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70-71 | 水に不溶、エタノール、エステルに熱時可溶 |
このように報告されています[2a]。
1.3. 分布
バチルアルコールは、自然界においてサメの肝油の不鹸化物中にスクワレンなどととともに存在しています[2b]。
2. 化粧品としての配合目的
- 乳化安定化
- 油性基剤
- エモリエント効果
主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、クレンジング製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ネイルケア製品など様々な製品に汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 乳化安定化
乳化安定化に関しては、バチルアルコールは少量の添加により乳化物の粘性を上げる性質があるため、乳化製品の経時的安定化目的でクリーム系製品、乳液などに使用されています[3a][4a]。
2.2. 油性基剤
油性基剤に関しては、バチルアルコールはきわめて化学安定性に優れ、柔軟で油性感の少ない耐水性の皮膜を形成することから、油性基剤としてボディクリーム、ハンドクリーム、日焼け止めクリーム、ヘアクリーム、口紅などに汎用されています[3b][4b]。
2.3. エモリエント効果
エモリエント効果に関しては、バチルアルコールは油性感が少ないにもかかわらず閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[4c]、各種クリーム、ヘアケア製品などに汎用されています。
3. 混合原料としての配合目的
バチルアルコールは混合原料が開発されており、バチルアルコールと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | NIKKOL ニコリピッド 81S |
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構成成分 | バチルアルコール、ステアリン酸、レシチン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル |
特徴 | 水溶液中でゲルネットワーク構造を形成することにより安定なエマルションが得られるO/W型乳化剤 |
4. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)。
∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
5. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 40年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
ただし、有機化合物辞典には皮膚刺激性が少ないと記載されています[2c]。
5.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。