ミリスチルアルコールの基本情報・配合目的・安全性

ミリスチルアルコール

化粧品表示名称 ミリスチルアルコール
医薬部外品表示名称 ミリスチルアルコール
化粧品国際的表示名称(INCI名) Myristyl Alcohol
配合目的 乳化安定化感触改良加脂肪 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、炭素数14で構成された一価アルコールかつ脂肪族アルコール高級アルコールです[1]

ミリスチルアルコール

1.2. 物性

ミリスチルコールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 溶解性
36.4-38 167
(15mmHg)
水に難溶エタノールに微溶エーテルに可溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 分布

ミリスチルアルコールは、自然界においてマッコウ鯨油、イルカの油脂、ヤシ油パーム核油などに存在しています[2b][3b]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ミリスチルアルコールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤、コーティング、乳化目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤などに用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化
  • 粘稠性調整による感触改良
  • 加脂肪

主にこれらの目的で、コンディショナー製品、トリートメント製品、シャンプー製品、ヘアカラー製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料、ボディソープ製品、洗顔石鹸、メイクアップ製品、化粧下地製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、ミリスチルアルコールは化学構造的に炭素数14(C14)という比較的短い直鎖構造の末端にあるヒドロキシ基(-OH)が親水活性を与え、油相と水相の界面においてその界面膜を強靭なものとすることから、乳化製品の経時的安定化目的でクリーム系製品、乳液、メイクアップ製品、ヘアケア製品などに使用されています[5][6a]

2.2. 粘稠性調整による感触改良

粘稠性調整による感触改良に関しては、ミリスチルアルコールは油性基剤の粘稠性(∗1)を調整する感触調整目的でクリーム系製品に使用されています[6b]

∗1 粘稠性(ねんちょうせい)とは、粘り(ねばり)のことであり、クリームや油性基剤の固さ・柔らかさを示します。粘稠性が高いほど固くなり、また流動性が低く(伸びにくく)なります。

2.3. 加脂肪

加脂肪に関しては、ミリスチルアルコールは洗浄製品に加えることで泡をきめ細かくし、かつ過渡の脱脂を抑制することから[6c][7][8][9]、皮膚・毛髪の保護を兼ねた泡質改善目的で主に洗顔料、シャンプー製品などに使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ミリスチルアルコールは、混合原料が開発されており、ミリスチルアルコールと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 CERAPHYL 50
構成成分 乳酸ミリスチル、ミリスチルアルコール
特徴 乳酸とミリスチルアルコールで構成されたエモリエント剤
原料名 MONTANOV 14
構成成分 ミリスチルアルコール、ミリスチルグルコシド
特徴 あらゆる油性成分を安定に乳化するO/W型乳化剤
原料名 PROLIPID 141
構成成分 ステアリン酸グリセリルべヘニルアルコールパルミチン酸ステアリン酸レシチン、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールセタノール
特徴 ラメラ液晶を形成するO/W型乳化剤
原料名 EMACOL CD-6710
構成成分 ミリスチルアルコール、ジメチルステアラミン、べヘニルアルコールアジピン酸ジイソブチルシア脂ミリスチン酸、ヘキシルデカノール
特徴 三級アミン型トリートメント基剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1988年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ミリスチルアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1988年および2005-2006年)

5. 安全性評価

ミリスチルアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度0.8%以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 53名の被検者に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水を4週間にわたって適用したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)
  • [ヒト試験] 229名の被検者に0.25%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)
  • [ヒト試験] 106名の被検者に0.1%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)
  • [ヒト試験] 52名の被検者に0.1%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に3%ミリスチルアルコールを含む制汗剤0.1mLを点眼し、6匹の眼はすすぎ、残りの3匹の眼はすすがず、Draize法に基づいて点眼1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激性を評価したところ、洗眼群では軽度の、非洗眼群では中程度の眼刺激を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1963)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水0.1mLを点眼し、点眼1,2および3日後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても眼刺激は観察されず、この試験物質はこの条件下で眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度依存的に非刺激-中程度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は濃度依存的に非刺激-中程度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10c]によると、

  • [ヒト試験] 52名の被検者に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿化粧水を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光感作なしと報告されているため、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ミリスチルアルコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,965.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「1-テトラデカノール」化学大辞典,1492.
  3. ab有機合成化学協会(1985)「1-テトラデカノール」有機化合物辞典,578.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ミリスチルアルコール」医薬品添加物事典2021,630-631.
  5. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.
  6. abc日光ケミカルズ株式会社(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,44-55.
  7. 日油株式会社(2019)「高級アルコール」化粧品用・医薬品用製品カタログ,36.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(1982)「過脂肪剤」化粧品製剤実用便覧,17.
  9. 田村 隆光(2009)「界面活性剤水溶液の泡膜特性」オレオサイエンス(9)(5),197-210. DOI:10.5650/oleoscience.9.197.
  10. abcR.L. Elder(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Alcohol,Cetyl Alcohol, lsostearyl Alcohol,Myristyl Alcohol, and Behenyl Alcohol」Journal of the American College of Toxicology(7)(3),359-413. DOI:10.3109/10915818809023137.

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