ラノリンアルコールの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名称 ラノリンアルコール
医薬部外品表示名称 ラノリンアルコール
化粧品国際的表示名称(INCI名) Lanolin Alcohol
配合目的 乳化安定化エモリエント など

1. 基本情報

1.1. 定義

ラノリンの加水分解により得られる高級アルコールとステロールの混合物です[1]

1.2. 物性・性状

ラノリンアルコールの物性・性状は(∗1)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

状態 融点(℃) 溶解性
ロウ状または軟膏様物質 45-75 水に不溶エタノールに易溶

このように報告されています[2][3a]

1.3. アルコール組成

ラノリンアルコールの組成については、一例として、

アルコールの種類 アルコールの分類 炭素数範囲 含有比(%)
脂肪族
アルコール
直鎖アルコール 16-30 4
イソアルコール 16-24 6
アンテイソアルコール 17-23 7
ジオール、直鎖およびイソ 14-26 4
ステロール コレステロール 30
その他 7
トリテルペン
アルコール
ラノステロール 16
ジヒドロラノステロール 16
その他 7

このような種類と比率で構成されていることが報告されています[4a]

ステロールと高級アルコールの混合物であり、脂肪族アルコールにおいては直鎖のものは少なく、大部分が分岐鎖アルコールであり、また一般に化粧品に用いられる高級アルコールと比較して炭素数が大きく、ステロールにおいてはコレステロールが約30%を占めるといった特徴を有しています。

1.4. 化粧品以外の主な用途

ラノリンアルコールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤、分散目的の医薬品添加剤として外用剤などに用いられています[3b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 乳化安定化
  • エモリエント効果

主にこれらの目的で、ボディ&ハンドケア製品、ボディソープ製品、洗顔料、メイクアップ製品、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 乳化安定化

乳化安定化に関しては、ラノリンアルコールはコレステロールをはじめとするステロールの含有量が多く、他の高級アルコールと比較して保水性や乳化性がよく、W/O型クリームに用いると粘稠性およびキメの良好なクリームが得られ、O/W型乳化物に用いると流動性の良好なものが得られることから[4b][5]、乳化の安定性を高める目的でクリーム系製品、メイクアップ製品などに使用されています。

2.2. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、ラノリンアルコールはコレステロールの含有量が多く、また高級アルコールとしては分岐鎖アルコールが多いことから、皮膚に対して親和性が高く、粘着性の少ないサラッとした感触を付与し、湿潤性を高めるとともに皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[6][7]、メイクアップ製品、クリーム系製品などに使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1980年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラノリンアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1980年および2002-2003年)

4. 安全性評価

ラノリンアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):まれに皮膚感作を引き起こす可能性あり
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎を有している場合は1.8-2.3%の皮膚感作陽性率が報告されているため、注意が必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8a][9][10][11]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 50名の被検者に100%ラノリンアルコールを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎、女子顔面黒皮症、その他湿疹、皮膚炎患者430例にラノリンおよびその誘導体をパッチテストしたところ、接触アレルギー反応率は30%ラノリンアルコールが最も高く、+以上6.8%、++以上2.3%であった。なお1週後も何らかの陽性反応を認めた例が6例あり、そのうちラノリンアルコールが3例で最も多かった(ラノリンパッチテスト研究班,1985)
  • [ヒト試験] 1982年から1991年までの22年間に香粧品または外用薬による接触皮膚炎の疑いのある4,839例を対象にICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)の基準に基づいて30%ラノリンアルコール、ラノリン(局方精製ラノリン)、水素添加ラノリン(還元ラノリン)の3種類を対象にパッチテストを実施したところ、平均陽性率はラノリンアルコールが99名(2.0%)、ラノリンが28名(0.6%)、還元ラノリンが79名(1.7%)であり、陽性者のうち26.8%がアトピー性皮膚炎患者であった(大阪回生病院皮膚科,1994)
  • [ヒト試験] 2016年4月から2017年3月までの1年間にパッチテストを必要とする様々な疾患を有する1,168名を対象にラノリンアルコールのパッチテストを実施したところ、陽性数は21名であり、陽性率は1.8%であった(高山かおる, 他,2020)

このように記載されており、試験データをみるかぎり健常な皮膚を有する場合においては共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚炎を有する場合においては、試験データをみるかぎりラノリンアルコールは1.8-2.3%の陽性率が示されており、また日本皮膚免疫アレルギー学会によって選定されるジャパニーズスタンダードアレルゲン2015にも選定されていることから、まれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%ラノリンアルコールを適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に50%ラノリンアルコールを含むミネラルオイルを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は軽度の眼刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に100%ラノリンアルコールを適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に100%ラノリンアルコールを適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8c]によると、

  • [ヒト試験] 20名の被検者に3%ラノリンアルコールを含む製剤を対象に光刺激性試験を実施したところ、この試験物質は光刺激の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,-)
  • [ヒト試験] 25名の被検者に3%ラノリンアルコールを含む製剤を対象に光感作性試験を実施したところ、この試験物質は光感作の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,-)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ラノリンアルコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1064.
  2. 日光ケミカルズ株式会社(1982)「アルコール類」化粧品製剤実用便覧,131-137.
  3. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「ラノリンアルコール」医薬品添加物事典2021,703-704.
  4. abE.V. Truter(1962)「The Activities of Some Water-in-Oil Emulsifying Agents」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(13)(4),173-187.
  5. 田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール」香粧品科学 理論と実際 第4版,117-120.
  6. 広田 博(1970)「アルコール類」化粧品のための油脂・界面活性剤,48-57.
  7. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  8. abcR.L. Elder(1980)「Final report on the safety assessment for acetylated lanolin alcohol and related compounds(∗2)」Journal of environmental pathology and toxicology(4)(4),63-92.
    ∗2 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。
  9. 加藤 順子, 他(1994)「ラノリンによる接触アレルギー」皮膚(36)(2),115-124. DOI:10.11340/skinresearch1959.36.115.
  10. ラノリンパッチテスト研究班(1985)「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」西日本皮膚科(47)(5),864-873. DOI:10.2336/nishinihonhifu.47.864.
  11. 高山 かおる, 他(2020)「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌(130)(4),523-567. DOI:10.14924/dermatol.130.523.

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