ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 光沢 分散
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)
[化粧品成分表示名称]
・ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)

[医薬部外品表示名称]
・ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)

化学構造的に脂肪酸の一種であるジリノール酸(∗1)と、アルコール成分として植物ステロールであるフィトステロールズ、分岐鎖を有するイソステアリルアルコールおよび直鎖アルコールより成るセタノールステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールの混合物を結合して得られるダイマー酸エステル(∗2)(∗3)です(文献1:2003)

∗1 「モノ(mono)」「ジ(di)」「トリ(tri)」はギリシャ語でそれぞれ「1」「2」「3」を意味しますが、ジリノール酸とは、炭素数18(C18)の不飽和脂肪酸の一種であるリノール酸が2つ結合した二量体のことをいいます。二量体とはダイマー(dimer)とも呼ばれ、2つの同種の分子または単量体がまとまった物質のことをいいます。

∗2 ダイマー酸とは、炭素数18の不飽和脂肪酸(主にオレイン酸リノール酸)を二量化して得られる炭素数36の二量化脂肪酸(脂肪族二塩基酸)を指します(文献2:2000)。

∗3 ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)は、フィトステロールと二量化脂肪酸および高級アルコールを結合して得られるため、植物ステロールエステルでもあります。

2000年以前においては、抱水性、エモリエント性、光沢性、顔料分散性などに優れた代表的なペースト状油性基剤として羊毛脂由来のラノリンが汎用されていましたが、動物由来原料の安全性への懸念などを背景に1990年代から植物由来原料が好まれる傾向が大きくなる中で、ラノリンの代替として開発されたラノリン様特性を有した植物由来ペースト状油性基剤です(文献1:2003)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、リップ化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ネイル製品などに使用されています。

抱水性エモリエント作用

抱水性エモリエント作用に関しては、一般的に抱水性の高い油剤はエモリエント効果が高いことが知られており、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)は高い抱水性をはじめ、ラノリンに類似した粘度挙動および感触、良好な展延性(∗4)を有することが報告されています(文献1:2003)

∗4 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

このような機能性から、高いエモリエント効果、しっとり感付与目的でスキンケア化粧品、リップ化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ネイル製品などに使用されています。

日本精化によって公開された植物ステロールエステルの抱水性比較検証によると、

ダイマージリノール酸ダイマールリノレイルビス(べヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)、ラノリン、ワセリンまたはオリーブ油10gに精製水を0.2から0.5mLずつ滴下しながら練り込み、水が入らなくなった点を終点とし、英国薬局方、ラノリンの含水価測定法に準じて試料に対する百分率で抱水率を測定したところ、以下のグラフのように、

ダイマージリノール酸の抱水性

ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)は、抱水性の高さで知られるラノリンと同等の抱水性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:-)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)に優れた抱水性が認められています。

光沢付与

光沢付与に関しては、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)は高い屈折率(40℃で1.478)を有しており(文献1:2003)、ツヤ感の付与目的でとくにリップ化粧品に使用されています。

顔料分散

顔料分散に関しては、日本精化の技術情報によると、

ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)の顔料分散性を検討するために、酸化チタンまたはベンガラに試料を20質量%加え、流動パラフィンを徐々に加えながらよくかき混ぜ、Flow Point(均一な流動性を示すようになる流動パラフィンの最小量(g/100g顔料))を求めたところ、以下のグラフのように、

ダイマージリノール酸誘導体の顔料分散性(酸化チタン)

ダイマージリノール酸誘導体の顔料分散性(ベンガラ)

ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)はラノリンと同等の優れた顔料分散効果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:-)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)に顔料分散効果が認められています。

顔料分散目的で化粧品に配合される場合は、口紅やリップスティックなどのリップ化粧品、アイシャドーやアイブロウまたはアイペンシルなどアイメイクアップ化粧品、また酸化チタンなどの紫外線散乱剤の分散目的で日焼け止め製品、チークやファンデーションなどのメイクアップ化粧品などに使用されています。

ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 配合不可
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 80.0
薬用口唇類 80.0
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可

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ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)の安全性(刺激性・アレルギー)について

ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日本精化の安全性試験データ(文献1:2003;文献3:2011)によると、

  • [ヒト試験] 45人の被検者にダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)を24時間パッチ適用したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さず、この試験物質は陰性であった
  • [動物試験] モルモットを用いてダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)を対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと記載されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日本精化の技術資料(文献3:2011)によると、

  • [動物試験] ウサギ角膜由来株化細胞であるSIRC細胞にダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)の希釈液を曝露した後、細胞生存率を測定したところ、この試験物質は眼刺激性を示さなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、非刺激性と報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)はエモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 大橋 幸浩(2003)「ラノリン様特性を有する新規植物性油性基剤の開発と化粧品への応用」Fragrance Journal(31)(11),55-60.
  2. 片山 剛(2000)「新規植物性油剤」Fragrance Journal(28)(12),75-80.
  3. 日本精化株式会社(2011)「Plandool」技術資料.
  4. 日本精化株式会社(-)「Plandool Series」技術資料.

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