イソステアリン酸フィトステリルとは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分
イソステアリン酸フィトステリル
[化粧品成分表示名称]
・イソステアリン酸フィトステリル

[医薬部外品表示名称]
・イソステアリン酸フィトステリル

化学構造的に植物ステロールであるフィトステロールズのヒドロキシ基(水酸基:-OH)高級脂肪酸の一種であるイソステアリン酸を結合して得られる植物ステロールエステル(∗1)です。

∗1 環状アルコールの主なものをステロール(sterol)と総称し、動物に含まれているステロールは動物ステロールと称され、主な動物ステロールとしてコレステロールがあります。そして植物に含まれているステロールはフィトステロール(植物ステロール)と称されます。植物ステロールエステルは、フィトステロールと他の成分がエステル結合したフィトステロール誘導体であり、イソステアリン酸フィトステリルの場合は炭素数18(C18)の高級脂肪酸であるイソステアリン酸とエステル結合した植物ステロール脂肪酸エステルです。

皮膚における植物ステロールエステルを解説する上で、まず前提知識としてコレステロールエステルについて解説します。

以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、また細胞間脂質は以下のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献3:1991)。

細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような構成および比率となっており(文献4:1995)、コレステロールおよびコレステロールエステルはラメラ構造において膜の柔軟性を高める役割を担っています(文献5:2011)

コレステロールと植物ステロールであるフィトステロールは化学構造、物性および皮膚への作用などが類似していることから、化粧品においてはコレステロールの代替としてフィトステロールが使用されています。

このような背景から、植物ステロールエステル(フィトステロールエステル)は細胞間脂質を構成するコレステロールエステルに類似した、皮膚親和性の高い油性成分であると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、リップ化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ネイル製品などに使用されています。

抱水性エモリエント作用

抱水性エモリエント作用に関しては、植物ステロールエステルであることから皮膚親和性が高く、また1.5以上の屈折率を有していることからツヤ感を付与するため(文献6:-;文献7:2015)、軽くさっぱりした感触およびツヤ感を付与する目的でシャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、スキンケア化粧品、リップ化粧品、アイメイク化粧品などに使用されています。

抱水性に関しては、イソステアリン酸フィトステリルは30℃付近において単独でラメラ液晶を形成し、抱水能(水分保持能)を有することが報告されており(文献6:-;文献7:2015)、角層水分量増加や経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)の抑制といった保湿性が認められています(文献7:2015)

日本精化によって公開された植物ステロールエステルの抱水性比較検証によると、

マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ラノリンワセリンまたはオリーブ油10gに精製水を0.2から0.5mLずつ滴下しながら練り込み、水が入らなくなった点を終点とし、英国薬局方、ラノリンの含水価測定法に準じて試料に対する百分率で抱水率を測定したところ、以下のグラフのように、

イソステアリン酸フィトステリルの抱水性

イソステアリン酸フィトステリルは、抱水性の高さで知られるラノリンと同等の高い抱水性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:-)、イソステアリン酸フィトステリルに優れた抱水性が認められています。

イソステアリン酸フィトステリルの抱水性は、ラメラ液晶形成能によるものであると考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

イソステアリン酸フィトステリルの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

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イソステアリン酸フィトステリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

イソステアリン酸フィトステリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

タマ生化学の安全性データシート(文献1:2013)によると、

  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)にイソステアリン酸フィトステリルをパッチ適用したところ、この試験物質は陰性であった

ノエビアの安全性試験データ(文献2:2000)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者(20-50歳)に10%イソステアリン酸フィトステリルを配合した口紅を使用したところ、いずれの被検者においても使用時に痛み、チクチク感、ヒリヒリ感、ビリビリ感、温感などの刺激を感じず、また口唇に何らかの異常を認めた被検者もいなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと記載されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

タマ生化学の安全性データシート(文献1:2013)によると、

  • 実質的に非刺激性物質

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、非刺激性と報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

イソステアリン酸フィトステリルはエモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. タマ生化学株式会社(2013)「フィトステリルイソステアレート」安全性データシート.
  2. 株式会社ノエビア(2000)「口紅」特開2000-86448.
  3. G Imokawa, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  4. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
  5. 内田 良一(2011)「セラミドと皮膚バリア機能」セラミド-基礎と応用 ここまできたセラミド研究最前線,140-147.
  6. 日本精化株式会社(-)「Plandool Series」技術資料.
  7. 日本精化株式会社(2015)「植物由来ステロールエステル」技術資料.

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