イソステアリン酸フィトステリルとは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 感触改良 発色 安定化成分
イソステアリン酸フィトステリル
[化粧品成分表示名称]
・イソステアリン酸フィトステリル

[医薬部外品表示名称]
・イソステアリン酸フィトステリル

イソステアリン酸(高級脂肪酸)とフィトステロールからつくられるフィトステロール誘導体(エステル油)です。

30℃付近で角質層の細胞間脂質と同様のラメラ液晶構造形成能を有しています。

角質層のラメラ液晶構造とは、以下のラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数の水溶性成分が存在し水分を保持しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

細胞間脂質は、疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水を挟み込むような構造となっており、水分を保持しつつ角質間を隙間なく埋めることで健常なバリア機能を維持しています。

結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らない(文献6:1991)のは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、リップ製品など様々な製品に使用されます(文献1:-;文献3:2000;文献4:2004;文献5:2009)

角質層柔軟化およびバリア保護によるエモリエント作用

角質層柔軟化およびバリア保護によるエモリエント作用に関しては、2009年にノエビアによって公開された技術情報によると、

各フィトステロール誘導体を10%配合した水中油型乳化物または無配合乳化物を用いて、ヒト皮膚におけるオレイン酸によるバリア機能破壊に対する抑制効果を比較評価した。

10人の被検者の前腕に各試料2μL/c㎡を塗布し、さらにオレイン酸を市販の絆創膏に含浸させ、試験部位に貼付し、その部分をラッピングし閉塞貼付を行った。

4時間後に絆創膏を剥離し、試験部位を洗浄し、水分蒸散量(TEWL)を測定したところ、以下の表のように、

水分蒸散量(処理前) 水分蒸散量(処理後)
無配合 13.2 ± 0.5 22.0 ± 2.5
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 12.7 ± 0.2 18.6 ± 1.2
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル) 12.4 ± 0.4 17.2 ± 0.5
イソステアリン酸フィトステリル 13.4 ± 0.4 19.0 ± 1.8

イソステアリン酸フィトステリルは、オレイン酸によるバリア機能の破壊を抑制する効果を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2009)、イソステアリン酸フィトステリルにバリア保護によるエモリエント作用が認められています。

皮表水分量増加によるエモリエント作用

皮表水分量増加によるエモリエント作用に関しては、日本精化の技術情報によると、

マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ラノリンワセリンまたはオリーブ油10gに精製水を0.2から0.5mLずつ滴下しながら練り込み、水が入らなくなった点を終点とし、英国薬局方、ラノリンの含水価測定法に準じて試料に対する百分率で抱水率を測定したところ、以下のグラフのように、

イソステアリン酸フィトステリルの抱水性

イソステアリン酸フィトステリルは、抱水性の高さで知られるラノリンと同等の高い抱水性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:-)、イソステアリン酸フィトステリルに皮表水分量増加によるエモリエント作用が認められています。

イソステアリン酸フィトステリルの抱水性は、ラメラ液晶構造形成能によるものであると考えられます。

感触改良

感触改良に関しては、さっぱりした使用感を有していながら膜感およびコク感に優れていることが報告されており、とくにリップ製品・口紅と相性が高いと考えられています(文献4:2004)

発色機能付与

発色機能付与に関しては、2000年にノエビアによるヒト使用試験により、イソステアリン酸フィトステリルを配合した口紅において着色料本来の色が得られ、また色相のシフトを抑制できることが報告されています(文献3:2000)

リポソームの安定化作用

リポソームの安定化作用に関しては、まず前提知識としてリポソームについて解説します。

リポソームとは、以下の画像のように、

リポソームの構造

細胞膜と同じ脂質二重膜からなる閉鎖小胞であり、1965年にリポソーム形成が発見されて以来(文献7:1965)、水溶性でそのままでは皮膚に浸透しない成分などを脂質二重膜に包み込んで、体内の成分分布を量的・空間的・時間的にコントロールするドラッグ輸送技術のひとつとして使用されてきています。

2009年にノエビアによって公開された技術情報によると、

in vitro試験において、セラミド3/パルミチン酸/コレステロール/コレステロールサルフェート(40:25:25:10)の混合脂質を用いて脂質膜を形成し、カルセイン溶液を添加してカルセイン内包リポソームを得た。

このリポソームをTris緩衝液(pH7.5)で500倍に希釈した溶液に各脂質類を5μL添加し、5分撹拌した後に15mg/mLのオレイン酸を添加し、さらに5分撹拌した後にリポソーム崩壊抑制率を測定したところ、以下の表のように、

添加量(%) 抑制率(%)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 1.0 38.6
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル) 1.0 47.5
イソステアリン酸フィトステリル 1.0 14.3

イソステアリン酸フィトステリルは、in vitro試験においてオレイン酸によるリポソーム膜の崩壊抑制効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2009)、イソステアリン酸フィトステリルにオレイン酸によるリポソーム膜の崩壊抑制作用(リポソーム安定化作用)が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

イソステアリン酸フィトステリルの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

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イソステアリン酸フィトステリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

イソステアリン酸フィトステリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日光ケミカルズの安全性データシート(文献2:2013)によると、

  • [ヒト試験] ヒトパッチテストの結果、陰性

ノエビアの安全性データ(文献3:2000)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者(20-50歳)に10%イソステアリン酸フィトステリルを配合した口紅を使用したところ、いずれの被検者においても使用時に痛み、チクチク感、ヒリヒリ感、ビリビリ感、温感などの刺激を感じず、また口唇に何らかの異常を認めた被検者もいなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、いずれも非刺激性と記載されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日光ケミカルズの安全性データシート(文献2:2013)によると、

  • 実質的非刺激性物質

と記載されています。

安全データをみるかぎり、非刺激性と報告されているため、

皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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イソステアリン酸フィトステリルはエモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. 日本精化株式会社(-)「Plandool Series」技術資料.
  2. 日光ケミカルズ株式会社(2013)「フィトステリルイソステアレート」製品安全データシート.
  3. 株式会社ノエビア(2000)「口紅」特開2000-86448.
  4. 株式会社ノエビア(2004)「皮膚外用剤」特開2004-051586.
  5. 株式会社ノエビア(2009)「表皮バリアー機能向上剤」特開2009-221144.
  6. Imokawa G, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator.」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  7. A.D.Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.

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