ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 感触改良 安定化成分
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)
[化粧品成分表示名称]
・ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)

[医薬部外品表示名称]
・N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2-オクチルドデシル)

化学構造的にアミノ酸の一種であるグルタミン酸と高級脂肪酸の一種であるラウリン酸のアミド(∗1)であるラウロイルグルタミン酸と、高級アルコールの一種であるオクチルドデカノールベヘニルアルコールおよびフィトステロールの混合アルコールとのジエステル(∗2)です。

∗1 アミドとは、脱水縮合した構造のことを指し、脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。

∗2 ジエステルとは、分子内に2基のエステル結合を持つエステルのことです。

角質層の細胞間脂質と同様の優れたラメラ形成能を有しており、セラミド類似成分として合成セラミド・疑似セラミドとも呼ばれます。

角質層のラメラ構造とは、以下のラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数の水溶性成分が存在し水分を保持しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

細胞間脂質は、疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水を挟み込むような構造となっており、水分を保持しつつ角質間を隙間なく埋めることで健常なバリア機能を維持しています。

結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らない(文献4:1991)のは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、リップ製品、日焼け止め製品、ネイル製品など様々な製品に使用されます(文献2:2011;文献3:-;文献5:2009;文献6:2008)

角質層柔軟化およびバリア保護によるエモリエント作用

角質層柔軟化およびバリア保護によるエモリエント作用に関しては、2011年に日本精化によって公開されたヒト長期連用試験によると、

2%ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)配合乳液の角層水分含有量変化を評価するために、4週間にわたって顔面の頬部に塗布し、比較対照として未配合乳液および2%流動パラフィン(ミネラルオイル)配合乳液を同様に塗布したところ、以下のグラフのように(∗3)

∗3 コンダクタンスとは、皮膚に電気を流した場合の抵抗(電気伝導度)を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなり、コンダクタンス値が高値になることから、角層水分量を調べる方法として角層コンダクタンスを経時的に観測する方法が定着しています。

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)配合乳液の角層水分含有量への影響比較

2%ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)配合乳液は、2週間後および4週間後において顕著に角層水分量の増加を示した。

また上記試験においてTEWL(経表皮水分蒸散量)も検討したところ、以下のグラフのように、

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)配合乳液のTEWL抑制影響比較

2%ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)配合乳液は、無処理と比較して2週間後および4週間後において顕著に高い経表皮水分蒸散量の抑制が確認された。

これらの結果をうけて作用メカニズムを検討したところ、塗布部位である顔面の頬部に角層ラメラ液晶構造の改善が観察された。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2011)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)に角質層柔軟化によるエモリエント作用が認められています。

また2008年にポーラ化成工業によって公開された技術情報によると、

肌の柔軟性の向上に寄与する成分は多価アルコールなどの保湿成分であるといわれてきたが、種々の油性成分における肌の柔軟性向上作用への影響を調査したところ、油性成分も肌の柔軟性向上に大きく影響しており、また肌柔軟性向上作用の大きさは油剤の種類により大きく異なることが判明した。

このような背景から20種類の油剤における肌への柔軟性付与効果を測定したところ、水添ナタネ種子油、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)がとくに柔軟付与効果に優れていることが明らかになった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2008)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)に角質層柔軟化によるエモリエント作用が認められています。

さらに2009年にノエビアによって公開された技術情報によると、

各フィトステロール誘導体を10%配合した水中油型乳化物または無配合乳化物を用いて、ヒト皮膚におけるオレイン酸によるバリア機能破壊に対する抑制効果を比較評価した。

10人の被検者の前腕に各試料2μL/c㎡を塗布し、さらにオレイン酸を市販の絆創膏に含浸させ、試験部位に貼付し、その部分をラッピングし閉塞貼付を行った。

4時間後に絆創膏を剥離し、試験部位を洗浄し、水分蒸散量(TEWL)を測定したところ、以下の表のように、

水分蒸散量(処理前) 水分蒸散量(処理後)
無配合 13.2 ± 0.5 22.0 ± 2.5
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 12.7 ± 0.2 18.6 ± 1.2
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル) 12.4 ± 0.4 17.2 ± 0.5
イソステアリン酸フィトステリル 13.4 ± 0.4 19.0 ± 1.8

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)は、オレイン酸によるバリア機能の破壊を抑制する効果を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2009)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)にバリア保護によるエモリエント作用が認められています。

皮表水分量増加によるエモリエント作用

皮表水分量増加によるエモリエント作用に関しては、日本精化の技術情報によると、

ラウロイルグルタミン酸系アミノ酸誘導体の抱水率を測定したところ、以下の表にように、

ラウロイルグルタミン酸系アミノ酸誘導体 抱水率(%)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチドデシル) 412
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチドデシル/フィトステリル/べヘニル) 365

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)は、有意に高い抱水性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:-)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)に皮表水分量増加によるエモリエント作用が認められています。

高い抱水性は、ラメラ液晶構造形成能によるものであると考えられます。

感触改良剤

感触改良剤に関しては、2008年にポーラ化成工業によって公開された技術情報によると、

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)のベタつき感を改善する成分を調査したところ、パルミチン酸セチルと併用することでベタツキ感が抑制できることがわかった。

また、このベタつき抑制作用はパルミチン酸セチルに特異的に認められたものであり、類似構造成分ではそれほど顕著な作用は認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2008)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)とパルミチン酸セチルの併用でベタつき感抑制作用(感触改良効果)が認められています。

リポソームの安定化作用

リポソームの安定化作用に関しては、まず前提知識として細胞膜の構造およびリポソーム技術について解説します。

細胞膜とは、細胞の内外を隔てる生体膜であり、以下の図をみてもらうとわかるように、

細胞膜の構造

親水性のリン酸基(頭部)と疎水性の脂肪酸鎖(テール部分)をもつリン脂質が二層に連なった脂質二重層で構成されており、ほぼ全ての生物で細胞膜の基本構造として存在しています。

リン脂質のような両親媒性分子は、水溶液中に存在すると親水性のリン酸基は水溶液側に向かって動くため外側に位置し、また疎水性の脂肪酸鎖は水溶液から自ら離れて内側に向くように自然に自己集合して、以下の図のように、

リポソームの構造

脂質二分子膜を形成し、さらにリポソームと呼ばれる閉じた球状の閉鎖小胞を形成します。

このリポソーム形成現象は、1960年代にBanghamによって見いだされ(文献7:1965)、医療分野においては、そのままでは皮膚に浸透しない成分を脂質二重膜の親水性部分および/または脂肪酸鎖部分に充填・内包することで、安定性を保持したまま皮膚内へ浸透させるDDS(Drug Derivery System:ドラッグ輸送技術)とよばれる医療技術に応用されており、現在では化粧品においてもその技術が応用されています(文献8:2005;文献9:2011)

ただし、リポソームの形成により皮膚に対して内包成分に薬効が認められる場合は、医薬品または医薬部外品として扱われることから(文献10:1990)、化粧品においては化粧品としての効果にとどまると考えられます。

2009年にノエビアによって公開された技術情報によると、

in vitro試験において、セラミド3/パルミチン酸/コレステロール/コレステロールサルフェート(40:25:25:10)の混合脂質を用いて脂質膜を形成し、カルセイン溶液を添加してカルセイン内包リポソームを得た。

このリポソームをTris緩衝液(pH7.5)で500倍に希釈した溶液に各脂質類を5μL添加し、5分撹拌した後に15mg/mLのオレイン酸を添加し、さらに5分撹拌した後にリポソーム崩壊抑制率を測定したところ、以下の表のように、

添加量(%) 抑制率(%)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 1.0 38.6
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル) 1.0 47.5
イソステアリン酸フィトステリル 1.0 14.3

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)は、in vitro試験においてオレイン酸によるリポソーム膜の崩壊抑制効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2009)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)にオレイン酸によるリポソーム膜の崩壊抑制作用(リポソーム安定化作用)が認められています。

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ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)の安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日本精化の安全性データシート(文献1:2011)によると、

  • [ヒト試験] 臨床安全評価反復パッチ試験の結果、非刺激性

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日本精化の安全性データシート(文献1:2011)によると、

  • [in vitro試験] ウサギ角膜上皮由来細胞(SIRC 細胞)に被験物質を暴露した後、72時間培養後のSIRC細胞の細胞生存率を評価したところ、非刺激性に分類された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本精化の安全性データシート(文献1:2011)によると、

  • [ヒト試験] 臨床安全評価反復パッチ試験の結果、陰性

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)はエモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日本精化株式会社(2011)「Plandool-LG1」Material Safety Data Sheet.
  2. 日本精化株式会社(2011)「Plandool-LG1」技術資料.
  3. 日本精化株式会社(-)「Plandool Series」技術資料.
  4. Imokawa G, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator.」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  5. 株式会社ノエビア(2009)「表皮バリアー機能向上剤」特開2009-221144.
  6. ポーラ化成工業株式会社(2008)「肌の柔軟化のための化粧料」特開2008-115110.
  7. A.D.Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.
  8. 内藤 昇, 他(2005)「化粧品とリポソーム」リポソーム応用の新展開,644-650.
  9. 紺野 義一(2011)「リン脂質の化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(45)(2),83-91.
  10. 田村 健夫, 他(1990)「リポソーム」香粧品科学 理論と実際 第4版,281-283.

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