ヒマワリ種子油の基本情報・配合目的・安全性

公開日:2022年1月3日  最終更新日:2022年01月06日

ヒマワリ種子油

化粧品表示名 ヒマワリ種子油
医薬部外品表示名 ヒマワリ油(1)、サンフラワー油
部外品表示簡略名 ヒマワリ油-1
INCI名 Helianthus Annuus (Sunflower) Seed Oil
配合目的 エモリエント、基剤、溶剤 など
  1. 基本情報
    1. 定義
    2. 物性・性状
    3. 脂肪酸組成および不鹸化物
    4. 分布と歴史
    5. 化粧品以外の主な用途
  2. 化粧品としての配合目的
    1. エモリエント効果
    2. 油性基剤
    3. 溶剤
  3. 混合原料としての配合目的
  4. 配合製品数および配合量範囲
  5. 安全性評価
    1. 皮膚刺激性および皮膚感作性（アレルギー性）
    2. 眼刺激性
  6. 参考文献

1. 基本情報

1.1. 定義

キク科植物ヒマワリ（学名：Helianthus annuus 英名：Sunflower）の種子から得られる脂肪油（植物油）です[1]。

1.2. 物性・性状

ヒマワリ種子油の物性・性状は(∗1)、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い（二重結合の数が多い）ため、酸化を受けやすくなります。

状態 融点(℃) ヨウ素価
油状液体 -16 – -18 113-146（乾性油）

このように報告されています[2a][3a]。

1.3. 脂肪酸組成および不鹸化物

ヒマワリ種子油の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数：二重結合数 比率（%）
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 6.7
ステアリン酸 C18:0 4.0
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 17.9
リノール酸 C18:2 69.8
リノレン酸 C18:3 0.9

このような種類と比率で構成されていることが報告されており[3b]、またヒマワリ種子油には不鹸化物(∗2)が0.3-1.2%範囲で含有されており、以下の表のように、

∗2 不鹸化物（不ケン化物）とは、脂質のうちアルカリで鹸化されない物質の総称です。水に不溶、エーテルに可溶な成分である炭化水素、高級アルコール、ステロール、色素、ビタミン、樹脂質などが主な不鹸化物であり、油脂においてはその含有量が特徴のひとつとなります。

不鹸化物 構成比
トコフェロール（ほとんどがα-トコフェロール） 484ppm
フィトステロール（主にシトステロール） 250-430mg/100g

このような種類で構成されていることが報告されています[4a]。

ヒマワリ種子油は、不飽和脂肪酸であるリノール酸を主成分としており、他の植物油と比較して抗酸化物質であるトコフェロールの含有量が少ないことから、総合的に自動酸化に対する安定性がやや低いといった特徴を有していると考えられます。

ただし、化粧品においてはトコフェロールに代表される酸化防止剤を添加することで酸化安定性が大幅に向上するため、一般にトコフェロールなどの酸化防止剤やトコフェロールの含有量の多い植物油脂と一緒に使用されます。

1.4. 分布と歴史

ヒマワリは、米国西部を原産とし、この地域では紀元前3000年以前より居住していた原住民が種子を食用にしていたといわれており、その後アメリカ大陸発見後の16世紀にヨーロッパにもたらされ、ヨーロッパでは観賞用としての栽培だったものの、後に食用、薬用に用いられた経緯があり、現在はEU、ロシア、ウクライナ、アルゼンチン、米国などで生産されています[4b]。

日本においては、17世紀後半に渡来したとされていますが、観賞用、飼料用として栽培されるのみで、食用としては用いられていません[4c]。

1.5. 化粧品以外の主な用途

ヒマワリ種子油の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 食用サラダ油として用いられています[5]。

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • エモリエント効果
  • 油性基剤
  • 溶剤

主にこれらの目的でメイクアップ製品、リップ系化粧品、化粧下地製品、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、ネイル製品、ヘアスタイリング製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、ヒマワリ種子油は閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[2b][6][7]、各種クリーム、メイクアップ製品、ヘアケア製品などに汎用されています。

2.2. 油性基剤

油性基剤に関しては、ヒマワリ種子油は油性基剤としてクリーム系製品、オイル系製品を中心に使用されています[2c]。

2.3. 溶剤

溶剤に関しては、ヒマワリ種子油は主に油溶性植物エキスや油溶性化合物を溶かし込む溶剤として広く用いられています。

3. 混合原料としての配合目的

ヒマワリ種子油は混合原料が開発されており、ヒマワリ種子油と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Aecosoft ひまわり
構成成分 ヒマワリ種子油、ラウリルグルコシド、水
特徴 ヒマワリ由来アルキルグルコシドによってヒマワリ油が水に可溶化したオイル
原料名 EmulsiPure ひまわり
構成成分 ヒマワリ種子油、セテアリルグルコシド、ステアリン酸グリセリル
特徴 ヒマワリ由来のセテアリルグルコシドおよびステアリン酸グリセリルからなる天然乳化剤
原料名 HELIOGEL
構成成分 リン脂質、ヒマワリ種子油、アクリレーツコポリマーNa、水添ポリデセン、ステアリン酸ポリグリセリル-10
特徴 乳化作用も併せ持つゲル化剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)。

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品（スキンケア製品やメイクアップ製品など）を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品（シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど）を指します。

ヒマワリ種子油の配合製品数と配合量の調査結果（2017年）

5. 安全性評価

ヒマワリ種子油の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性：ほとんどなし
  • 眼刺激性：詳細不明
  • 皮膚感作性（アレルギー性）：ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性（アレルギー性）

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8]によると、

  • [ヒト試験] 108名の被検者に6%ヒマワリ種子油を含むスキンクリームを対象に皮膚一次刺激性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった（Institut D’Expertise Clinique,2010）
  • [ヒト試験] 108名の被検者に20%ヒマワリ種子油を含むフェイスセラムを対象に皮膚一次刺激性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった（Institut D’Expertise Clinique,2010）
  • [ヒト試験] 57名の被検者に0.264%ヒマワリ種子油を含むクリームを対象にHRIPT（皮膚刺激性&皮膚感作性試験）を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった（EVIC Portgual,2006）
  • [ヒト試験] 106名の被検者に6%ヒマワリ種子油を含むスキンクリームを対象にHRIPT（皮膚刺激性&皮膚感作性試験）を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった（Institut D’Expertise Clinique,2010）
  • [ヒト試験] 108名の被検者に20%ヒマワリ種子油を含むフェイスセラムを対象にHRIPT（皮膚刺激性&皮膚感作性試験）を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった（Institut D’Expertise Clinique,2010）
  • [ヒト試験] 107名の被検者に39.8%ヒマワリ種子油を含むマッサージオイル0.2mLを対象にHRIPT（皮膚刺激性&皮膚感作性試験）を実施したところ、誘導期間の7回目のパッチにて1名の被検者に一時的なわずかな紅斑が観察されたが、その後は観察されなかった。また他の被検者はいずれも皮膚反応は観察されず、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと判断された（Institut D’Expertise Clinique,2008）

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. ⌃日本化粧品工業連合会（2013）「ヒマワリ種子油」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,822.
  2. ⌃abc日光ケミカルズ株式会社（2016）「油脂」パーソナルケアハンドブックⅠ,1-19.
  3. ⌃ab鈴木 修, 他（1990）「油脂およびろうの性状と組成」油脂化学便覧 改訂3版,99-137.
  4. ⌃abc伊藤いづみ, 他（2012）「ひまわり油」油脂の特性と応用,273-292.
  5. ⌃杉田 浩一, 他（2017）「ひまわり油」新版 日本食品大事典,666-667.
  6. ⌃鈴木 一成（2012）「ヒマワリ油」化粧品成分用語事典2012,15.
  7. ⌃平尾 哲二（2006）「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  8. ⌃C.L. Burnett（2017）「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),51S-129S. DOI:10.1177/1091581817740569.

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