スクワレンの基本情報・配合目的・安全性

スクワレン

化粧品表示名 スクワレン
医薬部外品表示名 スクワレン
INCI名 Squalene
配合目的 エモリエント など

スクワレンは、英名が「Squalene」であることもあり、化学分野などにおいて「スクアレン」と表示されますが、化粧品分野や医薬品分野においては「スクワレン」と表示されるため、ここでは「スクワレン」で統一して記載します。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される炭素数と二重結合の数が30:6で構成された炭素鎖の中に4個のメチル基(-CH3を側鎖としてもつ不飽和炭化水素(動物系または植物系炭化水素)(∗1)です[1a][2a]

∗1 動物系か植物系かは由来原料に依存します。

スクワレン

1.2. 物性・性状

スクワレンの物性・性状は(∗2)

∗2 凝固点とは液体が固体になりはじめる(固まりはじめる)温度のことです。

状態 凝固点(℃) 溶解性
液体 -4.8 – -5.2 水に不溶、エタノールに難溶、エーテルに易溶

このように報告されています[3a][4][5a]

1.3. 分布

スクワレンは、動物界においてサメ肝油に多量に存在するほか、ヒトの皮脂にも含まれており、植物界においてはオリブ油コメヌカ油コムギ胚芽油ゴマ油などの植物油に少量存在しています[3b]

1.4. 皮膚におけるスクワレンの役割

皮膚におけるスクワレンの役割については、まず前提知識として皮膚表面に存在する皮表脂質の構造と役割について解説します。

以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

ヒトの皮膚表面はうすい脂質膜である皮表脂質(skin surface lipids)で覆われており、この皮表脂質は表皮細胞(角化細胞)の分化過程で産生されるコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったもののことをいいます[6a]

皮表脂質の成分組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量範囲(%)
表皮細胞 コレステロールエステル 1.5 – 2.6
コレステロール 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクワレン 10.1 – 13.9
ワックス 22.6 – 29.5
トリグリセリド 19.5 – 49.4
ジグリセリド 2.3 – 4.3
遊離脂肪酸 7.9 – 39.0

このように報告されており[7]、皮脂腺由来の脂質が約95%、表皮細胞由来の脂質が約5%で構成されています。

この皮表脂質は、皮膚を外部環境や異物から保護する皮膚保護作用や体内からの水分漏出を防ぎ皮膚の水分量を保持するエモリエント作用など種々のバリア機構の働きをすることが知られているほか、皮膚表面をなめらかに保つ柔軟作用、何らかの影響によりアルカリ性となった皮膚を弱酸性に戻すアルカリ中和能などの役割を担っています[6b]

皮表脂質において皮脂腺から分泌されるスクワレンは、汗腺からの分泌物と乳化して皮膚表面を保湿し、なめらかさの保持に役立っています[8a]

1.5. 化粧品以外の主な用途

スクワレンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤、軟化、乳化、溶剤、溶解目的の医薬品添加剤として外用剤などに用いられています[5b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • エモリエント効果

主にこれらの目的で、スキンケア製品、パック&マスク製品、メイクアップ製品、ボディケア製品、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、スクワレンはヒトの皮膚を覆っている皮表脂質の構成成分であり、皮膚親和性が非常に高く、閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[1b][8b][9]、各種クリーム、乳液、メイクアップ製品などに使用されています。

ただし、化学的に6個の二重結合をもち、そのままでは長時間空気にさらされると酸化しやすいため[2b]、スクワレンを用いる場合は酸化しにくい製品設計(∗3)が必要であると考えられます。

∗3 一般に酸化しにくい設計として個別包装(使い切り)、数ヶ月で使い切れるような小容量設計、酸化防止剤の併用、カプセル化、またはこれら以外の処方技術などが考えられます。

3. 混合原料としての配合目的

スクワレンは、混合原料が開発されており、スクワレンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 L22
構成成分 (ホホバ油/マカデミア種子油)エステルズ、スクワレンマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルフィトステロールズ
特徴 20代前半の皮脂構成成分を植物由来成分で再現し、優れた保湿機能を発揮する非常に軟らかい感触のオイル
原料名 CORNEOSTICKER DS
構成成分 ベントナイト、オリーブ油デシルエステルズ、グリセリン含水シリカ乳酸スクワレンクロレラエキス海塩トコフェロール
特徴 角層の構成成分と類似した構造の薄い皮膜を形成し、皮膚柔軟効果や経表皮水分蒸散抑制効果を発揮するエモリエント剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2001年および2018-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

スクワレンの配合製品数と配合量の調査結果(2001年および2018-2019年)

5. 安全性評価

スクワレンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)に100%および76%スクワレンを含むサメ肝油不鹸化物を72時間適用し、適用後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者においても検出可能で有害な皮膚反応はみられなかった(B. Boughton et al,1955)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に100%スクワレンを点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、点眼後に眼をすすいだかどうかにかかわらず、ウサギの眼に刺激や損傷はみられず、この試験物質はウサギの眼において非刺激剤であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1956)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「スクワレン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,543-544.
  2. ab広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
  3. ab大木 道則, 他(1989)「スクアレン」化学大辞典,1188.
  4. 有機合成化学協会(1985)「スクアレン」有機化合物辞典,477.
  5. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「スクワレン」医薬品添加物事典2021,319.
  6. ab松尾 聿朗・犬飼 則子(1988)「皮表脂質の生理的役割」油化学(37)(10),827-831. DOI:10.5650/jos1956.37.827.
  7. D.T. Downing, et al(1969)「Variability in the Chemical Composition of Human Skin Surface Lipids」Journal of Investigative Dermatology(53)(5),322-327. DOI:10.1038/jid.1969.157.
  8. ab海谷 篤(1990)「天然スクアレン, スクアランの用途と最近の原料事情」油化学(39)(8),525-529. DOI:10.5650/jos1956.39.8_525.
  9. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  10. abR.L. Elder(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Squalane and Squalene」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),37-56. DOI:10.3109/10915818209013146.

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