テオブロマグランジフロルム種子脂の基本情報・配合目的・安全性

テオブロマグランジフロルム種子脂

化粧品表示名 テオブロマグランジフロルム種子脂
慣用名 クプアスバター
INCI名 Theobroma Grandiflorum Seed Butter
配合目的 エモリエント など

1. 基本情報

1.1. 定義

アオイ科植物クプアス(学名:Theobroma grandiflorum 英名:cupuassu)の種子から得られる油脂植物油脂です[1a]

1.2. 物性・性状

テオブロマグランジフロルム種子脂の物性・性状は(∗1)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。

状態 融点(℃) ヨウ素価
固体 26.9 43.5(不乾性油)

このように報告されています[2a]

1.3. 脂肪酸組成

テオブロマグランジフロルム種子脂の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 7.5
ステアリン酸 C18:0 34.3
アラキジン酸 C20:0 10.5
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 41.9
リノール酸 C18:2 3.9
エイコセン酸 C20:1 1.5

このような種類と比率で構成されていることが報告されており[2b]、ステアリン酸とオレイン酸を主成分とすることから、酸化安定性に優れるといった特徴を有していると考えられます。

1.4. 分布と歴史

カカオと同じ種類に属するクプアスの木は、中南米を原産とし、アマゾン地方に多く自生しており、その果実はトロピカルフルーツ独特のさわやかで強い芳香をもち、アイスクリームやジュースなどに加工され、また種子はカカオの代用として地元住民に長年用いられてきた歴史があります[3][4a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 抱水性エモリエント効果

主にこれらの目的で、リップ系化粧品、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、洗顔料、洗顔石鹸、ネイルケア製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 抱水性エモリエント効果

抱水性エモリエント効果に関しては、テオブロマグランジフロルム種子脂は閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有しており[1b][5]、そのうえ精製水を50%まで抱水することが確認されています[4b]

このような背景から、皮膚や髪になめらかな柔軟性のある感触の付与と同時に持続性のある保湿効果目的で、リップ系化粧品、メイクアップ製品、各種クリーム、ヘアケア製品などに使用されています[2c]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

テオブロマグランジフロルム種子脂の配合製品数と配合量の比較調査結果(2017年)

4. 安全性評価

テオブロマグランジフロルム種子脂の現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6]によると、

  • [ヒト試験] 106名の被検者に5%テオブロマグランジフロルム種子脂を含むリップバーム150μLを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Product Investigations Inc,2008)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「テオブロマグランジフロルム種子脂」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,653.
  2. abc香栄興業株式会社(2005)「精製クプアスバター」Fragrance Journal(33)(2),116-117.
  3. 橋本 梧郎(1978)「クプアスー」ブラジルの果実,415-416.
  4. ab一ノ原 初弥(2007)「機能性植物油剤の化粧品への応用」Fragrance Journal臨時増刊(20),76-83.
  5. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  6. C.L. Burnett, et al(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),51S-129S. DOI:10.1177/1091581817740569.

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