イソステアリン酸フィトステリルの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | イソステアリン酸フィトステリル |
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医薬部外品表示名 | イソステアリン酸フィトステリル |
INCI名 | Phytosteryl Isostearate |
配合目的 | エモリエント など |
1. 基本情報
1.1. 定義
脂肪酸とステロール(∗1)とのエステルの一種であり、イソステアリン酸のカルボキシ基(-COOH)にフィトステロールズのヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗2)したエステルです[1]。
∗1 環状アルコールの主なものをステロール(sterol)と総称し、動物に含まれているステロールは動物ステロールと称され、主な動物ステロールとしてコレステロールがあります。そして植物に含まれているステロールはフィトステロール(植物ステロール)と称されます。
∗2 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。
1.2. 物性・性状
イソステアリン酸フィトステリルの物性・性状は(∗3)、
∗3 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。
状態 | 融点(℃) |
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液体またはペースト状物質 | 15 |
2. 化粧品としての配合目的
- 抱水性エモリエント効果
主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、リップケア製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、ボディ&ハンドケア製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料など様々な製品に使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 抱水性エモリエント効果
抱水性エモリエント効果に関しては、イソステアリン酸フィトステリルは化学構造的に分岐鎖脂肪酸とフィトステロールズで構成された細胞間脂質類似物質であり、約2.5倍量の水を吸収する抱水性を示し、皮膚や毛髪にさっぱりとした感触、柔軟性および滑らかさを付与する優れたエモリエント性を有していることから[2b][3b][4]、スキンケア製品、メイクアップ製品、リップケア製品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品など様々な製品に使用されています。
3. 混合原料としての配合目的
イソステアリン酸フィトステリルは混合原料が開発されており、イソステアリン酸フィトステリルと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | NIKKOL セラリピッド PI236 |
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構成成分 | セラミドNG、セラミドNP、セラミドAP、イソステアリン酸フィトステリル、ベヘニルアルコール、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアロイル乳酸Na |
特徴 | 水中でラメラ層を形成する安定なセラミドNG、NP、APおよびイソステアリン酸フィトステリル混合物 |
4. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)。
∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
5. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
5.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。