水添ポリデセンの基本情報・配合目的・安全性

水添ポリデセン

化粧品表示名 水添ポリデセン
INCI名 Hydrogenated Polydecene
配合目的 エモリエント溶剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるデセンの重合体(∗1)に水素添加して得られる炭化水素(合成系炭化水素)です[1a][2a]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指します。

水添ポリデセン

1.2. 物性・性状

水添ポリデセンの物性・性状は、

状態 溶解性
液体 水に不溶、エタノールに微溶

このように報告されています[3]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • エモリエント効果
  • 溶剤

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、マスク製品、ボディ&ハンドケア製品、クレンジング製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、水添ポリデセンは熱や酸化に対する安定性が高く、油性感の少ないさっぱりとした感触を有し、閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[1b][4a][5]、各種クリーム、乳液、メイクアップ製品などに汎用されています。

2.2. 溶剤

溶剤に関しては、水添ポリデセンは油溶性の化合物や植物エキスを溶かし込む溶剤として使用されています[1c][4b]

3. 混合原料としての配合目的

水添ポリデセンは、混合原料が開発されており、水添ポリデセンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 SILKFLO 364
構成成分 オレフィンオリゴマー、水添ポリデセン
特徴 スクワランと同等の感触を付与する混合炭化水素油
原料名 SMART C5
構成成分 イソドデカン水添ポリデセン
特徴 揮発性シリコーンの代替として開発された、揮発性が高く軽い感触を付与する混合炭化水素油
原料名 PIONEIR GEL 12 PAO
構成成分 水添ポリデセン、、水添(スチレン/イソプレン)コポリマー、トコフェロール
特徴 流動性を保持したまま増粘できるオイルゲル化剤
原料名 HELIOGEL
構成成分 リン脂質、ヒマワリ種子油、アクリレーツコポリマーNa、水添ポリデセンステアリン酸ポリグリセリル-10
特徴 乳化作用も併せ持つゲル化剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

水添ポリデセンの配合製品数と配合量の調査結果(2013-2015年)

5. 安全性評価

水添ポリデセンの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2b]によると、

  • [動物試験] ウサギに100%水添ポリデセン(分子量範囲367-596)を適用し、Draize法に基づいて適用後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Creation Coleurs,2014)
  • [動物試験] 6匹のウサギの通常部位および擦過した部位に水添ポリデセン(分子量および濃度不明)0.5mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの部位においてもこの試験物質は皮膚刺激剤ではないと結論付けられた(European Chemicals Agency,2014)
  • [動物試験] 20匹のモルモットを用いて最大濃度10%の水添ポリデセン(分子量不明)を含むミネラルオイルを対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(European Chemicals Agency,2014)
  • [動物試験] 20匹のモルモットを用いて最大濃度100%の水添ポリデセン(分子量不明)を含むコーンオイルを対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(European Chemicals Agency,2014)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2c]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に100%水添ポリデセン(分子量範囲367-596)0.1mLを点眼し、改変Draize法に基づいて眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは0-6の範囲であり、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Creation Coleurs,2014)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%水添ポリデセン(分子量不明)0.1mLを点眼し、眼はすすがず、点眼から72時間後まで眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは0-4の範囲であり、この試験物質は眼刺激剤ではないと結論付けられた(European Chemicals Agency,2014)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に水添ポリデセン(分子量および濃度不明)0.1mLを点眼し、3匹の眼はすすぎ、残りの6匹の眼はすすがず、点眼から72時間後まで眼刺激性を評価したところ、非洗眼群で1時間で油性残留物を伴う中程度から重度の結膜発赤がみられたが、24時間でわずかな発赤になり、48時間で消失した。洗眼群では1時間でわずかな結膜発赤がみられたものの24時間で消失した。この試験条件下においてこの試験物質は総合的に中程度の眼刺激剤と結論付けられた(European Chemicals Agency,2014)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-中程度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-中程度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

6. 参考文献

  1. abc日本化粧品工業連合会(2013)「水添ポリデセン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,538.
  2. abcC.L. Burnett, et al(2020)「Safety Assessment of Polyene Group as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(39)(2_suppl),59S-90S. DOI:10.1177/1091581820952385.
  3. Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives 49th session(1997)「Hydrogenated poly-1-decene」Compendium of Food Additive Specifications. Addendum 5.
  4. ab鈴木 一成(2012)「水添ポリデセン」化粧品成分用語事典2012,30.
  5. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.

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