フィトステロールズ(ダイズステロール)とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 安定化成分
フィトステロールズ
[化粧品成分表示名称]
・フィトステロールズ、ダイズステロール

[医薬部外品表示名称]
・フィトステロール

植物油から得られる分子量414.7のステロール類(ステロイドアルコール)の混合物です(文献2:2019)

一般的には大豆に多く含まれており、フィト(phyto)が植物を意味することから植物ステロールとも呼ばれ、コレストロールと化学構造が類似しているため、性質もコレステロールと似ています。

ただし、コレステロールが単一の化合物であるのに対してフィトステロールズは、

  • β-シトステロール
  • スチグマステロール
  • カンペステロール

これらの混合物であり、比率は上からおよそ2:1:1で構成されています(文献3:2016)

コレストロールと性質が似ていること、また植物指向の風潮があることからコレステロールの代替として利用される傾向があります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、など様々な製品に使用されます(文献3:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、コレステロールと類似した性質のため、クリーム系の化粧品やメイクアップ製品にエモリエント剤として配合されます(文献3:2016)

リポソームの安定化作用

リポソームの安定化作用に関しては、まず前提知識として細胞膜の構造およびリポソーム技術について解説します。

細胞膜とは、細胞の内外を隔てる生体膜であり、以下の図をみてもらうとわかるように、

細胞膜の構造

親水性のリン酸基(頭部)と疎水性の脂肪酸鎖(テール部分)をもつリン脂質が二層に連なった脂質二重層で構成されており、ほぼ全ての生物で細胞膜の基本構造として存在しています。

リン脂質のような両親媒性分子は、水溶液中に存在すると親水性のリン酸基は水溶液側に向かって動くため外側に位置し、また疎水性の脂肪酸鎖は水溶液から自ら離れて内側に向くように自然に自己集合して、以下の図のように、

リポソームの構造

脂質二分子膜を形成し、さらにリポソームと呼ばれる閉じた球状の閉鎖小胞を形成します。

このリポソーム形成現象は、1960年代にBanghamによって見いだされ(文献4:1965)、医療分野においては、そのままでは皮膚に浸透しない成分を脂質二重膜の親水性部分および/または脂肪酸鎖部分に充填・内包することで、安定性を保持したまま皮膚内へ浸透させるDDS(Drug Derivery System:ドラッグ輸送技術)とよばれる医療技術に応用されており、現在では化粧品においてもその技術が応用されています(文献5:2005;文献6:2011)

ただし、リポソームの形成により皮膚に対して内包成分に薬効が認められる場合は、医薬品または医薬部外品として扱われることから(文献8:1990)、化粧品においては化粧品としての効果にとどまると考えられます。

2007年にファンケルによって報告された超微細化リポソーム安定化技術検証によると、

界面活性剤を用いてリポソームの微細化検討を行い、フィトステロール添加によるリポソームの安定性および内水相容積を評価した。

リポソームの膜補助成分としてフィトステロールを添加した場合、粒子径と保持効率との間には比例関係が成り立つことがわかったが、フィトステロールを添加した場合は、添加していない場合に比べて同じ粒子径でも格段に保持効率を上昇させることがわかった。

またフィトステロールの添加によって膜厚が薄くなっていることがわかった。

さらにフィトステロールとポリオキシエチレンフィトスタノールを併用することで内水相容積の減少を抑制しながらリポソームを微細化できることもわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2007)、フィトステロールズにリポソームの脂質安定化作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

フィトステロールズの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

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フィトステロールズの安全性(刺激性・アレルギー)について

フィトステロールズの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(大豆アレルギーを有する場合):ほとんどなし-まれに可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の前腕の擦過した皮膚に100%フィトステロールズ(サクロ由来)1mLを3日間連続して24時間チャンバー適用し、チャンバー除去30分後および次のチャンバー適用前に試験部位を評価したところ、皮膚を刺激しなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に3種類の100%フィトステロールズ(ザクロ、大豆、アサイー由来)を処理したところ、皮膚刺激性は予測されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2014)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に3種類の100%フィトステロールズ(ザクロ、大豆、アサイー由来)を処理したところ、眼刺激性は予測されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性は報告されていないため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2014)によると、

    – 大豆アレルギーを有する場合 –

  • [ヒト試験] 市販の大豆抽出物に陽性反応を示した22人の被検者のうち、16人は大豆単離物に対して陽性反応を示し、6人は大豆に陽性反応を示した。19人はフィトステロールズに皮膚反応を示さなかった

と記載されています。

試験データには明確に記載されていませんが、大豆抽出物に陽性反応を示した22人のうち3人はフィトステロールズに感作反応を示した可能性が考えられるため、大豆アレルギーを有する場合はまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

一方で、明確な記載がなく、フィトステロールズでは感作を引き起こさない可能性も考えられるため、詳細がわかりしだい追補します。

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フィトステロールズは、エモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Phytosterols as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “Pubchem”(2019)「Phytosterols」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Phytosterols> 2019年11月16日アクセス.
  3. 日光ケミカルズ(2016)「フィトステロール」パーソナルケアハンドブック,46.
  4. A.D.Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.
  5. 内藤 昇, 他(2005)「化粧品とリポソーム」リポソーム応用の新展開,644-650.
  6. 紺野 義一(2011)「リン脂質の化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(45)(2),83-91.
  7. 松尾 真樹, 他(2007)「超微細化リポソームの安定化技術」日本化粧品技術者会誌(41)(3),167-172.
  8. 田村 健夫, 他(1990)「リポソーム」香粧品科学 理論と実際 第4版,281-283.

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