ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 分散 乳化
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2
[化粧品成分表示名称]
・ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2

[医薬部外品表示名称]
・ジイソステアリン酸ポリグリセリル

化学構造的に炭素数18の合成飽和脂肪酸であるイソステアリン酸2つを疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、4個の水酸基をもつジグリセリン(∗2)を親水基としたジエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される親油性非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)およびエモリエント剤です。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ジグリセリン(ポリグリセリル-2)とは2個のグリセリンがまとまって2量体(平均重合度2)として機能する重合体であり、ギリシャ語で「2」を「ジ(di)」ということから、ジグリセリンと呼ばれます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、口紅&リップグロス化粧品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、マスク製品、ヘアスタイリング製品などに使用されています(文献1:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、ワックスや油剤との相溶性が高く、高粘性のエモリエント剤として口紅・リップケア化粧品、メイクアップ化粧品などに使用されます(文献1:2016;文献6:-;文献7:2010)

分散

分散に関しては、顔料を均一に分散する分散性に優れていることから、口紅、リップグロス、クリームファンデーションの油剤として使用されます(文献8:-)

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献2:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献2:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献3:2015)

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
3.2 , 4.0 W/O型乳化 わずかに分散

このように報告されており(文献4:-;文献5:-;文献6:-)、W/O型乳化剤(親油性界面活性剤)として、主に口紅&リップグロス化粧品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品などに使用されています。

一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。

混合乳化剤としてのジイソステアリン酸ポリグリセリル-2

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2は、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMALEX MC-10
構成成分 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルトリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸PEG-30グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2PEG-10ジメチコンジメチコングリチルリチン酸2Kグリセリン、塩化K、
特徴・主な用途 極性油をイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルとグリチルリチン酸2Kによりゲル化したジェル状乳化剤

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の安全性(刺激性・アレルギー)について

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギに未希釈のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を4時間半閉塞パッチ適用し、皮膚刺激性を評価したところ、パッチ除去24時間で1匹のウサギに明瞭な紅斑が観察されたが、臨床的に重要ではないと判断され、この試験物質は非刺激性に分類された(European Chemicals Agency,2015)
  • [動物試験] 2匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に1%,10%および未希釈のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を含む食塩水を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激を評価したところ、未希釈では両方のウサギに明瞭な紅斑と明瞭な浮腫が観察され、10%濃度では1匹のウサギに一過性の著しい紅斑が観察され、1%濃度では1匹のウサギにわずかな紅斑が観察された。これらの結果からわずかな皮膚刺激性があると結論づけられた(European Chemicals Agency,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性は非刺激性-わずかな刺激性が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激性-わずかな刺激性が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に未希釈のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(0.1mL)を点眼し、OECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激性を評価したところ、24時間でいくつかの刺激反応が観察されたが48時間ですべて消失した。この結果からこの試験物質は非刺激性に分類された(European Chemicals Agency,2015)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に未希釈のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(0.1mL)を点眼し、眼はすすがず、眼刺激性を評価したところ、24時間で1匹のウサギに腫れがみられ、48時間で2匹に紅斑がみられ、他の2匹に腫れがみられたが、72時間ですべて消失した。この結果から一次刺激物質ではないと結論づけられた(European Chemicals Agency,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットにジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を対象にBuehler皮膚感作性試験を閉塞パッチにて実施(誘導期間:100%濃度、チャレンジ期間:20%濃度を含むアセトン溶液)したところ、いずれのモルモットも皮膚反応は観察されず、この試験物質は皮膚感作の兆候は示さなかった(European Chemicals Agency,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2はエモリエント成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  3. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  4. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX DISG-2」技術資料.
  5. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX DISG-2EX」技術資料.
  6. 阪本薬品工業株式会社(-)「Sフェイス IS-202P」技術資料.
  7. 日清オイリオグループ株式会社(2010)「コスモール 42V」技術資料.
  8. 高級アルコール工業株式会社(-)「リソレックス PGIS22」技術資料.

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