コレステロールとは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 安定化成分
コレステロール
[化粧品成分表示名称]
・コレステロール

[医薬部外品表示名称]
・コレステロール

主に動物組織中に遊離状態または脂肪酸エステルとして広く分布している動物ステロール(∗1)であり、化学構造的にステロイド環(シクロペンタノヒドロフェナントレン環)の3位にヒドロキシ基(水酸基:-OH)を有した環状アルコールです(文献2:1997;文献3:2009)

∗1 環状アルコールの主なものをステロール(sterol)と総称し、動物に含まれているステロールは動物ステロールと称され、主な動物ステロールとしてコレステロールがあります。また、植物に含まれているステロールはフィトステロール(植物ステロール)と称されます。

コレステロールは、細胞膜を構成する物質であり、以下の細胞膜の構造を見てもらうとわかりやすいと思いますが、

細胞膜の構造

細胞膜は、細胞内部を保護し独立を保ちつつ、細胞外部との間で物質やエネルギーを出入りさせる役割を担っており、その中でコレステロールは細胞膜の流動性を調節する役割を担っています(文献4:1981)

また、生体においてはコレステロールを原料として胆汁酸、ビタミンD、コレステロールエステルおよびステロイドホルモンなどを合成することから、これらの前駆体として重要な物質でもあります(文献4:1981)

コレステロールは皮膚にも存在しており、以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、また細胞間脂質は以下のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献5:1991)。

細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような構成および比率となっており(文献6:1995)、コレステロールはラメラ構造において膜の柔軟性を高める役割を担っています(文献7:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、シャンプー製品、トリートメント製品、洗顔料、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ヘアスタイリング製品、ボディソープ製品など様々な製品に使用されています。

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、コレステロールは角質層の脂質中に遊離状態およびコレステロールエステルとして含まれているという点から皮膚親和性が高く、皮膚保護目的のエモリエント剤として古くからスキンケアクリーム、乳液、ヘアケア製品などに使用されています(文献2:1997)

乳化安定化

乳化安定化に関しては、コレステロールは親油性の乳化性能を有しており(文献2:1997;文献8:1978)、親水性乳化剤と併用してO/W型エマルションに配合することで乳化安定性を非常に高めることから、クリーム、乳液などに古くから使用されています(文献2:1997)

リポソームの安定化

リポソームの安定化に関しては、まず前提知識として細胞膜の構造およびリポソーム技術について解説します。

細胞膜とは、細胞の内外を隔てる生体膜であり、以下の図をみてもらうとわかるように、

細胞膜の構造

親水性のリン酸基(頭部)と疎水性の脂肪酸鎖(テール部分)をもつリン脂質が二層に連なった脂質二重層で構成されており、ほぼ全ての生物で細胞膜の基本構造として存在しています。

リン脂質のような親水性と疎水性の両方を含む両親媒性分子は、水溶液中において親水性のリン酸基は水溶液側に向かって動くため外側に位置し、また疎水性の脂肪酸鎖は水溶液から自ら離れて内側に向くように自然に自己集合して、以下の図のように、

リポソームの構造

脂質二分子膜を形成し、さらにリポソームと呼ばれる閉じた球状の閉鎖小胞を形成します。

このリポソーム形成現象は、1960年代にBanghamによって見いだされ(文献9:1965)、医療分野においては、そのままでは皮膚に浸透しない成分を脂質二重膜の親水性部分および/または脂肪酸鎖部分に充填・内包することで、安定性を保持したまま皮膚内へ浸透させるDDS(Drug Derivery System:ドラッグ輸送技術)とよばれる医療技術に応用されており、現在では化粧品においてもその技術が応用されています(文献10:2005;文献11:2011)

ただし、リポソームの形成により皮膚に対して内包成分に薬効が認められる場合は、医薬品または医薬部外品として扱われることから(文献12:1990)、化粧品においては化粧品としての効果にとどまると考えられます。

1996年にクラシエ(旧鐘紡)によって報告された角質細胞間脂質を用いたリポソームの温度感受性に与える脂質組成の影響検証によると、

皮膚モデルとしてリポソームを利用する場合、リン脂質を用いるよりも角質細胞間脂質を用いたほうが、より実際に近い物性を評価できると考え、角質細胞間脂質を用いて調整したリポソームからの内包物質の漏出挙動を、脂質組成を変化させて調べた。

リポソームを構成する各脂質の組成比を単独で変化させ、漏出を測定していくと、コレステロール減少群にのみ顕著な漏出が観察され、脂肪酸減少群、セラミド減少群ではほとんど漏出は観察されなかった。

この結果は、これら脂質混合物が形成するラメラ膜の相転移をコレステロールが抑制し、安定化していることを示すものである。

またこれらのリポソームに界面活性剤を添加した場合の漏出挙動も同様に、コレステロール減少群にのみ界面活性剤濃度から顕著な漏出が観察された。

これらのことから、コレステロールが実際の角質層で形成されるラメラ膜の安定性に重要な影響を与えていることが推察される。

このような検証結果が明らかにされており(文献13:1996)、コレステロールにリポソームの安定化作用が認められています。

一般的にはコレステロールが用いられる場合は水添レシチンを乳化剤として併用したリポソームが汎用されています。

セラミドの安定化

セラミドの安定化に関しては、皮膚におけるセラミドの役割および化粧品におけるセラミドの効果について理解している前提で解説します。

荒れ肌、乾燥した皮膚、アトピー性皮膚炎などバリア機能が低下した皮膚はセラミド比率が低下していることが知られており(文献14:1998;文献15:2011)、セラミドを塗布することで直接的にセラミドが補強・充填されることから、

  • バリア機能の改善
  • バリア機能改善による水分保持能の改善

これらの効果が知られています。

ただし、補強・充填されるセラミドというのはラメラ液晶構造を形成したセラミドのことであり、ラメラ液晶構造はセラミド単体では形成されず(∗3)、コレステロール、遊離脂肪酸などの両親媒性脂質(∗4)とともに形成されることから(文献16:2004)、化粧品にセラミドが配合される場合はコレステロールまたはフィトステロールなどのステロールが併用される処方が汎用されています。

∗3 セラミド、コレステロール、脂肪酸の単独塗布では荒れ肌のバリア機能は回復しないことが報告されています(文献17:1996)。

∗4 両親媒性とは、親水性と親油性の両方を有している性質のことです。

セラミドとコレステロールが併用される場合は、さらに高級脂肪酸を加えてこれらを適当な比率で併用した細胞間脂質モデルやラメラ形成能を有する乳化剤を加えた処方が汎用されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

コレステロールの配合製品数と配合量の調査(1984年および2002-2004年)

スポンサーリンク

コレステロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

コレステロールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 23人の被検者に1.4%コレステロールを含む保湿基剤0.3gを72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去直後および24時間後に皮膚刺激性を0-4のスケールで評価したところ、平均刺激スコアは除去直後で0.31、24時間で0.22であり、この試験製剤の皮膚刺激性は最小限-軽度であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に1.4%コレストロールを含む保湿基剤0.3gを72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去直後および24時間後に皮膚刺激性を0-4のスケールで評価したところ、平均刺激スコアは除去直後で0.24、24時間で0.28であり、この試験製剤の皮膚刺激性は軽度であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 26人の被検者に1.4%コレステロールを含む保湿基剤0.3gを72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去直後および24時間後に皮膚刺激性を0-4のスケールで評価したところ、平均刺激スコアは除去直後で0.17、24時間で0.23であり、この試験製剤の皮膚刺激性は最小限-軽度であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 8人の被検者3グループ(合計24人)にそれぞれ1.4%コレステロールを含む製剤0.3gを3週間にわたって合計15回、24時間閉塞パッチ適用し、CII(Cumulative Irritation Index:皮膚累積刺激性指数)を0-60のスケールで評価したところ、それぞれ1.4,1.1および1.0であり、この製剤は最小限の累積刺激であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 87人の被検者に1.7%コレステロールを含む保湿クリーム0.1mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、誘導期間の1回目において3人の被検者に、3回目において1人の被検者にほとんど知覚できない紅斑反応がみられた。チャレンジパッチにおいてはいずれの被検者も反応を示さず、この試験製剤はこれらの試験条件下では最小限の皮膚刺激剤であったが皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 25人の被検者4グループ(合計100人)に1.4%コレステロールを含む保湿製剤0.3mLを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さず、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979;1980;1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性は共通して非刺激-軽度の範囲が報告されており、また皮膚感作性はなしと報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性が考えられますが、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に5%コレステロールを含むコーン油0.1mLを点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、点眼1日後で眼刺激スコアは0であり、この試験製剤は非刺激剤であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に5%コレステロールを含むコーン油0.1mLを点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、点眼1および2日後で眼刺激スコアはそれぞれ1および0であり、この試験製剤は最小限の眼刺激剤であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に6%コレステロールを含むフェイスクリーム0.1mLを点眼し、3匹は点眼30秒後に眼をすすぎ、残りの6匹は眼をすすがず、点眼1,2,3,4および7日後に眼刺激性を評価したところ、非洗眼群のうち2匹にわずかな角膜紅斑がみられ、5匹に結膜の赤みが観察された。3-7日後には刺激は消失した。洗眼群のうち2匹は1日後に結膜の赤みが観察された。このフェイスクリームはわずかな眼刺激剤であると結論付けられた(Toxicological Resources,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激-最小限の範囲で眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者3グループ(合計30人)に1.4%コレステロールを含む保湿基剤を6時間閉塞パッチ適用した。パッチ除去後にUVAライトで試験部位を照射し、照射24および48時間後に光毒性を評価したところ、いずれの部位においても皮膚反応はなく、この試験製剤はこれらの試験条件下では光毒性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979;1983)
  • [ヒト試験] 45人の被検者に6%コレステロールを含むフェイスクリームを対象に皮膚感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、この試験製剤はいずれの被検者においても光感作剤ではなかった(Research Testing Laboratories,1974)
  • [ヒト試験] 25人の被検者2グループ(合計50人)に1.4%コレステロールを含む保湿剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験製剤はいずれの被検者においても光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979;1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

コレステロールはエモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Cholesterol」International Journal of Toxicology(5)(5),491-516.
  2. 広田 博(1997)「環状アルコール」化粧品用油脂の科学,82-87.
  3. 畑 宗平, 他(2009)「脂質の分子構造による分類と機能」化学と教育(57)(8),386-389.
  4. 木村 徳次(1981)「コレステロールと生体膜」膜(6)(1),2-12.
  5. G Imokawa, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  6. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.
  7. 内田 良一(2011)「セラミドと皮膚バリア機能」セラミド-基礎と応用 ここまできたセラミド研究最前線,140-147.
  8. 藤堂 信義(1978)「コレステロール及び植物ステロールの生産と利用」油化学(27)(10),667-674.
  9. AD. Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.
  10. 内藤 昇, 他(2005)「化粧品とリポソーム」リポソーム応用の新展開,644-650.
  11. 紺野 義一(2011)「リン脂質の化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(45)(2),83-91.
  12. 田村 健夫, 他(1990)「リポソーム」香粧品科学 理論と実際 第4版,281-283.
  13. 炭田 康史, 他(1996)「角質細胞間脂質を用いたリポソームの温度感受性に与える脂質組成の影響」膜(21)(5),326-333.
  14. Di Nardo, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis」Acta Dermato-Venereologica(78),27-30.
  15. I. Angelova‐Fischer, et al(2011)「Distinct barrier integrity phenotypes in filaggrin‐related atopic eczema following sequential tape stripping and lipid profiling」Experimental Dermatology(20)(4),351-356.
  16. 石田 賢哉(2004)「光学活性セラミドの開発と機能」オレオサイエンス(4)(3),105-116.
  17. M. Mao-Qiang, et al(1996)「Optimization of Physiological Lipid Mixtures for Barrier Repair」Journal of Investigate Dermatology(106)(5),1096-1101.

スポンサーリンク

TOPへ