カキタンニンの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | カキタンニン |
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医薬部外品表示名 | カキタンニン |
部外品表示簡略名 | 柿タンニン |
配合目的 | 消臭 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
カキノキ科植物カキノキ(学名:Diospyros kaki Thunb 英名:Persimmon)の果実から得られるタンニン(有機酸)であり、以下の化学式で表されるエピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートが1:1:2:2の比率で30分子程度縮合した高分子化合物です[1][2]。
1.2. 物性・性状
カキタンニンの物性・性状は、
状態 | 液体 |
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溶解性 | 水に易溶 |
このように報告されています[3]。
1.3. 分布
カキタンニンは、自然界においてカキノキ(学名:Diospyros kaki Thunb)の果実に含まれている柿渋の主成分として存在しています[4]。
2. 化粧品としての配合目的
- ノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用
主にこれらの目的で、ボディソープ製品、ボディ石鹸、頭皮ケア製品、デオドラント製品、ボディケア製品、アウトバストリートメント製品、ハンドケア製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. ノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用
ノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用に関しては、まず前提知識として加齢臭とノネナールの関係について解説します。
中高年者に特有のにおいである加齢臭は、体幹部とくに胸や背中部分から臭ってくる脂臭くて少し青臭い、梅雨時の黴びた古本や古いポマードを連想させる嫌なにおいとして知られており、40代以降になると揮発性アルデヒドの一種である2-ノネナールの検出頻度や検出量が増加する傾向がみられることから、2-ノネナールの増加が加齢臭の主な原因であると考えられています[5][6]。
このような背景から、ノネナールを減少させることは、加齢臭の抑制に非常に重要であると考えられます。
2001年に日本メナード化粧品によって報告されたノネナールに対するカキタンニンの影響およびヒト加齢臭に対する有用性検証によると、
– in vitro:ノネナール消臭作用 –
各濃度のカキタンニン1gをバイエル瓶に採取し、そこにノネナールの気体を入れ、10分放置した後にその気体1mLを採取し、ガスクロマトグラフィにてノネナールのピーク面積をカキタンニン未添加のものと比較し、消臭率を求めたところ、以下の表のように、
濃度(%) | ノネナール消臭率(%) | 評価 |
---|---|---|
0 | 0 | ☓ |
0.0001 | 80 | ○ |
0.001 | 95 | ○ |
0.01 | 100 | ◎ |
1 | 100 | ◎ |
3 | 100 | ◎ |
5 | 100 | ◎ |
カキタンニンは、濃度0.01%以上でノネナールを100%消臭することが示された。
– ヒト使用試験 –
加齢臭に悩む10名の被検者の症状が気になる部位に各濃度のカキタンニン配合製剤または対照として未配合製剤を2週間連用した上で、連用後に5段階評価(5:著効、4:有効、3:わずかな効果、2:ほとんど効果なし、1:効果なし)してもらい、その平均点を算出したところ、以下の表のように、
製品 | 濃度(%) | 官能評価 |
---|---|---|
ミスト | 0 | 2.6 |
0.05 | 4.8 | |
ジェル | 0 | 2.2 |
0.10 | 5.0 | |
化粧水 | 0 | 2.8 |
0.5 | 5.0 | |
エアゾール | 0 | 2.0 |
0.05 | 4.6 | |
乳液 | 0 | 1.4 |
0.001 | 4.1 |
カキタンニン配合製品は未配合製品と比較して優れたノネナール消臭効果を示した。
このような検証結果が明らかにされており[7]、カキタンニンにノネナール産生抑制による加齢臭抑制作用が認められています。
3. 混合原料としての配合目的
カキタンニンは混合原料が開発されており、カキタンニンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | Pancil COS-17 |
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構成成分 | カキタンニン、グリシン、グリセリン |
特徴 | 幅広い悪臭に対して消臭効果を発揮する水溶性カキタンニン |
原料名 | Pancil BA210-1 |
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構成成分 | カキタンニン、BG、乳酸Na |
特徴 | 幅広い悪臭に対して消臭効果を発揮する水溶性およびアルコールに可溶なカキタンニン |
4. 安全性評価
- 食品添加物の既存添加物リストに収載
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
食品添加物の指定添加物リストおよび医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
5. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2013)「カキタンニン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,291.
- ⌃米谷 俊・竹森 久美子(2016)「柿ポリフェノールの機能性」日本食品科学工学会誌(63)(7),331-337. DOI:10.3136/nskkk.63.331.
- ⌃リリース化学工業株式会社(2015)「化粧品用消臭剤」カタログ.
- ⌃島本 整(2016)「日本文化に根付いた柿渋の化学」化学と教育(64)(7),348-349. DOI:10.20665/kakyoshi.64.7_348.
- ⌃土師 信一郎・合津 陽子(1999)「中高年齢層のための体臭ケア製品の開発」Fragrance Journal(27)(9),42-46.
- ⌃S. Haze, et al(2001)「2-Nonenal Newly Found in Human Body Odor Tends to Increase with Aging」Journal of Investigative Dermatology(116)(4),520-524. DOI:10.1046/j.0022-202x.2001.01287.x.
- ⌃日本メナード化粧品株式会社(2001)「体臭消臭剤」特開2001-302483.