サリチル酸メチルの基本情報・配合目的・安全性

サリチル酸メチル

化粧品表示名 サリチル酸メチル
医薬部外品表示名 サリチル酸メチル
INCI名 Methyl Salicylate
配合目的 冷感香料 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるサリチル酸のカルボキシ基(-COOH)にメチル基(-CH3が結合したエステルです[1]

サリチル酸メチル

1.2. 物性・性状

サリチル酸メチルの物性・性状は(∗1)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

状態 液体
融点(℃) -8.6
溶解性 エタノール、プロピレングリコールに易溶、水に難溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 分布

サリチル酸メチルは、自然界において主にツツジ科植物シラタマノキ(学名:Gaultheria pyroloides)の果実に含まれる冬緑油やスイートバーチ(学名:Betula lenta)の主成分として多量に存在しています[2b][3b][4a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

サリチル酸メチルの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 ウィンターグリーン様の香気を有することから、ウィンターグリーンなどのフレーバーとして用いられています[5]
医薬品 炎症による痛みに対する外用消炎鎮痛薬としてパップ剤や外用剤に用いられています[6][7][8]。また、清涼化、芳香、着香、香料、矯味目的の医薬品添加剤として外用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられます[9]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品およびに配合される場合は、

  • 清涼感付与効果
  • ウィンターグリーン様香気の賦香

主にこれらの目的で、ボディケア製品、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 清涼感付与効果

清涼感付与効果に関しては、サリチル酸メチルは清涼感を有していることから[10a][11]、主にボディケア製品、スキンケア製品などに使用されています。

2.2. ウィンターグリーン様香気の賦香

ウィンターグリーン様香気の賦香(∗2)に関しては、サリチル酸メチルはグリーンで多少フローラル感のある甘いアロマティックなウィンターグリーン様ハーブ香調(∗3)香気を有していることから、ハーブ系調合香料として使用されています[3c][4b][10b][12a]

∗2 賦香(ふこう)とは、香りを付けるという意味です。

∗3 香調とは、香料分野においてはノート(note)とも呼ばれ、香りのタイプを意味します。サリチル酸メチルはウィンターグリーンの香りを有していることからハーバルノート(herbal note:ハーブ香調)に分類されます。

また、調合香料はそれらの揮発性から、

揮発性 分類 解説 保留時間 香調

トップ
ノート
最初に感じ、そのものを印象づける香気 約30分 シトラス
グリーン
フルーティ-
ハーバル
ミドル
ノート
香りの中心となる中盤に感じる香気 数時間 フローラル
ラスト
ノート
最後まで残る重量感のある香気 数日-数週間 ウッディ
アンバー
ムスク
バルサム

これら3つのステージに分類して表現されることが多く[12b][13]、サリチル酸メチルは揮発性の高いトップノートであることから、香気の保留性(持続性)は低いですが、まず最初に鼻につき清涼感のある印象を与えるウィンターグリーン様香気が特徴です。

3. 配合製品数および配合量範囲

サリチル酸メチルは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けんシャンプーリンス等除毛剤 0.10 すべてのサリチル酸、その塩及びその誘導体をサリチル酸に換算して、サリチル酸として合計。
紫外線吸収剤の合計は10以下とする。
育毛剤 0.10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.10
薬用口唇類 0.10
薬用歯みがき類 0.10
浴用剤 0.10
染毛剤 0.1
パーマネント・ウェーブ用剤 0.1

また、サリチル酸メチルは医薬品成分であり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 5.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 5.0
粘膜に使用されることがある化粧品 0.10

実際の化粧品における配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-2000年および2018-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

サリチル酸メチルの配合製品数と配合量の調査結果(1998-2000年および2018-2019年)

4. 安全性評価

サリチル酸メチルの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:強い結膜刺激を引き起こす
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および目元以外の使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14a]によると、

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 湿疹または接触性皮膚炎を有する20名の患者に3.75-67%サリチル酸メチルを含むオイルまたは軟膏を閉塞パッチ適用したところ、67%のオイルで8名に、40%のオイルで2名に皮膚刺激が生じた。38%,15%および3.75%サリチル酸メチルを含むオイルおよび軟膏はいずれも皮膚刺激を生じなかった(Lee and Lam,1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり化粧品配合上限である濃度5%以下において皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[15a]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1.25%サリチル酸メチルを含む変性アルコール0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて点眼7日目まで眼刺激性を評価したところ、3匹すべてのウサギに結膜浮腫と流涙をともなう重度の結膜刺激がみられ、これらの眼刺激反応は7日目には消失した(A Lapczynski,2007)

このように記載されており、試験データをみるかぎり重度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は強い結膜刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[14b][15b]によると、

  • [ヒト試験] 27名の被検者に8%サリチル酸メチルを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も感作反応を示さなかった(Opdyke,1978)
  • [ヒト試験] 39名の被検者に1.25%サリチル酸メチルを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応はみられなかった(A. Lapczynski et al,2007)

このように記載されており、試験データをみるかぎり化粧品配合上限である濃度5%以下において皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「サリチル酸メチル」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,447.
  2. ab有機合成化学協会(1985)「サリチル酸メチル」有機化合物辞典,338.
  3. abc合成香料編集委員会(2016)「サリチル酸メチル」増補新版 合成香料 化学と商品知識,664.
  4. ab堀内哲嗣郎(2010)「植物性香料素材」香り創りをデザインする,211-238.
  5. 樋口 彰, 他(2019)「サリチル酸メチル」食品添加物事典 新訂第二版,154-155.
  6. 井澤 美苗(2021)「外用消炎鎮痛薬」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,278-299.
  7. 新倉 卓(2021)「虫さされ, 痒み止め用薬」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,352-361.
  8. 新倉 卓(2021)「しもやけ, ひび, あかぎれ用薬」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,362-371.
  9. 日本医薬品添加剤協会(2021)「サリチル酸メチル」医薬品添加物事典2021,262-263.
  10. ab鈴木 一成(2012)「サリチル酸メチル」化粧品成分用語事典2012,411-412.
  11. 宇山 侊男, 他(2020)「サリチル酸メチル」化粧品成分ガイド 第7版,115.
  12. ab長谷川香料株式会社(2013)「フレグランスの分類と原料」香料の科学,124-127.
  13. 兼井 典子(2003)「香りの化学」化学と教育(51)(2),86-88. DOI:10.20665/kakyoshi.51.2_86.
  14. abF.A. Andersen(2003)「Safety Assessment of Salicylic Acid, Butyloctyl Salicylate, Calcium Salicylate, C12–15 Alkyl Salicylate, Capryloyl Salicylic Acid, Hexyldodecyl Salicylate, Isocetyl Salicylate, Isodecyl Salicylate, Magnesium Salicylate, MEA-Salicylate, Ethylhexyl Salicylate, Potassium Salicylate, Methyl Salicylate, Myristyl Salicylate, Sodium Salicylate, TEA-Salicylate, and Tridecyl Salicylate」International Journal of Toxicology(22)(3_suppl),1-108. DOI:10.1177/1091581803022S303.
  15. abW.F. Bergfeld, et al(2019)「Amended Safety Assessment of Salicylic Acid and Salicylates as Used in Cosmetics(∗5)」, 2022年8月5日アクセス.
    ∗5 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。

TOPへ