炭酸Caとは…成分効果と毒性を解説




・炭酸Ca
[医薬部外品表示名称]
・軽質炭酸カルシウム
貝殻やサンゴの骨格、鶏卵の殻、石灰岩、大理石、白亜(チョーク)などの主成分で、工業的には化学合成によって得られる多孔質(∗1)のカルシウムの炭酸塩(体質顔料)です。
∗1 多孔質とは、細かい穴(孔)がたくさん空いた構造になっている性質のことです。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、メイクアップ製品、ネイル製品などに使用されています。
感触改良
感触改良に関しては、多孔質であるため、皮脂を吸収させて化粧くずれ防止・化粧持ちを改善する目的で白粉(おしろい)、ファンデーションなどに使用されています(文献2:2015)。
賦香
賦香に関しては、まず前提知識として賦香(ふこう)について解説します。
賦香とは、”香りを賦(あた)える”という意味であり、香料を含ませることをいいます。
炭酸Caは多孔質であり、香料を多く含ませることができるため、保香剤として使用されています(文献2:2015)。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
炭酸Caの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [in vitro試験] 3次元ヒト表皮モデルに炭酸CaをCDS(腐食性化学物質が細胞バリアを通過すると色変化を誘発する液体化学検出システム)処理したところ、炭酸Caは非腐食性に分類された(National Toxicology Program,1999)
- [動物試験] ウサギの無傷の皮膚に炭酸Caを適用し、適用後3分ならびに1および4時間後に腐食性を評価したところ、炭酸Caは非腐食性に分類された(National Toxicology Program,1999)
- [in vitro試験] 4匹のウサギ3群それぞれの外耳に5%,10%および15%炭酸Ca水溶液25μLを3日間毎日適用し、OECD429テストガイドラインに基づいて皮膚感作性を評価したところ、炭酸Caは皮膚感作剤ではなかった(European Chenmicals Agency,2016)
と記載されています。
試験結果をみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
- [動物試験] 3匹のウサギの片眼に炭酸Ca0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて72時間で眼刺激性を評価したところ、点眼1時間後にすべての処置眼で最小限の結膜刺激およびイリジウム炎症が観察された。結膜刺激は点眼24および48時間まで観察され、すべての反応は72時間後には消失した。炭酸Caはウサギの眼に非刺激性であると分類された(European Chenmicals Agency,2016)
と記載されています。
試験結果をみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
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炭酸Caはベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:ベース成分
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参考文献:
- Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Carbonate Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
- 宇山 侊男, 他(2015)「炭酸Ca」化粧品成分ガイド 第6版,162.