含水シリカとは…成分効果と毒性を解説

ベース 感触改良 光沢 表面処理 スクラブ
含水シリカ
[化粧品成分表示名称]
・含水シリカ

[医薬部外品表示名称]
・含水ケイ酸

化学構造的にケイ素の酸化物である二酸化ケイ素に可変量の水(水和水)を結合した二酸化ケイ素水和物(体質顔料)です。

地殻を形成する物質の一つであり、天然には主に石英、メノウ、玉髄、ケイ藻土として産出されますが、現在は工業的に湿式法によって合成されています(文献4:2019)

含水シリカは、シリカと比較して化学構造的に表面シラノール基が多いため、充填剤としての補強性や吸着性が優れていますが(文献5:2001)、基本的には同様の性質および特性であり、以下の表のように(∗1)(∗2)

∗1 この表はシリカの特性を記載したものですが、含水シリカの特性も同様であると考えられます。
∗2 粒子径の「μm」はマイクロメートル(1μm = 0.001mm)、「nm」はナノメートル(1nm = 0.001μm)のことです。

粒子径 形態(乾燥状態) 特性・機能 凝集 白色度
~1nm オリゴマー
(ゲル)
薄膜形成、高反応性、高透明性



100nm以上で沈降性(∗5)が生じる

1~100nm コロイド(∗3)
(ゲル)
ハードコート、結合力、研磨効果
100nm~1μm スラリー
(ゲルまたは微細な粉末)
ベアリング性(∗4)、光散乱、回折散乱
1~20μm サスペンション
(微細な粉末)
ベアリング性、表面修飾
20μm~ サスペンション
(粉末)
高流動性、スクラブ効果

∗3 コロイド(コロイド分散体)とは、一方が微小な液滴あるいは微粒子を形成し(分散相)、他方に分散した2組の相から構成された物質状態であり、例えば牛乳は水溶液中に脂肪が分散したコロイド分散体です。
∗4 ベアリング性とは、転がり(回転性)のことです。
∗5 沈降性とは、均一に分散したコロイド粒子などが、重力や遠心分離作用などによってブラウン運動による粒子の拡散作用との均衡が破れて沈殿したり不均一になる性質のことです。

粒子径によって形状および特性・機能が変わります(文献2:2000)

粒子径100nmが特性を分ける目安となっており、100nm以下のシリカは「微粒子シリカ」と呼ばれ、コロイド状であり、粒子径が小さいほど比表面積が高くなり、化学構造的にヒドロキシ基(水酸基:-OH)の数が増えるため、結合力・凝集力が高まります。

一方で、粒子径100nm以上のシリカは「沈降シリカ」と呼ばれ、100nm以上では重力で沈降が生じ、粒子径が大きくなるほど紫外線の散乱が起こり、白濁した外観となります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、ネイル製品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品、ボディケア製品、パック製品などに使用されています(文献1:2009;文献3:2016;文献4:2019)

ベアリング効果およびチキソトロピー性による感触改良・粉体基剤

ベアリング効果およびチキソトロピー性による感触改良・粉体基剤に関しては、まず前提知識としてベアリング効果およびチキソトロピー性について解説します。

まずベアリング効果とは、球体の回転のスムーズさ(滑らかさ)のことであり、たとえばマイカなどの体質顔料と一緒に配合する場合、シリカが体質顔料粒子の間に挟まれてスムーズに回転することで体質顔料粒子の滑りが向上し、非常に滑らかな使用感につながります。

次にチキソトロピー性とは、混ぜたり振ったり、力を加えることで粘度が下がり、また時間の経過とともに元の粘度に戻る現象のことです。

チキソトロピー性の理解のためによく例に挙げられるのはペンキの性質で、ペンキは塗る前によくかき混ぜると粘度が下がるため、はけなどで塗りやすくなり、塗られた直後には粘度が上がっていき(元に戻っていき)、垂れることなく乾燥するため塗料として汎用されています。

粒子径100nm以上のシリカはベアリング性(潤滑性)を有しており、また5-10μmの球状のものは展延性(∗6)の向上、マットな仕上がり感を付与することから、メイクアップ化粧品などの粉体基剤として汎用されています(文献3:2016)

∗6 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

また、微粒子のシリカは、粘度の調整、チキソトロピー性付与などの目的で泥パックに使用されています(文献4:2016)

さらに粒子径1μm以上の球状シリカは、皮脂吸収剤としてパウダーファンデーションなどに使用されています(文献2:2000)

ソフトフォーカス効果による光沢付与

ソフトフォーカス効果による光沢付与に関しては、まず前提知識としてソフトフォーカス効果について解説します。

ソフトフォーカス効果とは、以下の図のように、

ソフトフォーカス効果

粉体で肌を均一にし、その結果として光を均一に反射することでシワや毛穴を目立たなくする(ぼかす)効果のことです。

光の散乱能は屈折率以外に粒子径に依存することが知られており、平均粒子径100nm-1μmのシリカは、ソフトフォーカス効果に最適であることが明らかにされていることから、ソフトフォーカス効果目的でメイクアップ化粧品に使用されています(文献2:2000)

表面処理

表面処理に関しては、含水シリカは化学的安定性が非常に高く、無機酸化物の中で最も光屈折率が低く、ほかの顔料に被覆することで使用感の向上、持続性の向上などの相乗効果が得られ、また光触媒活性や化学的活性のある顔料を被覆することで、それらの活性を抑制し、使用感や持続性を向上させることから、体質顔料や着色顔料の被膜剤として汎用されています(文献2:2000)

顔料によるシリカの皮膜効果の違いは、

顔料の種類 効果
体質顔料
着色顔料
表面反射力を抑えて、高い透明性をによる肌の自然感を演出
着色顔料 濡れくすみの抑制によるロングラスティング性(∗7)
微粒子酸化チタン
微粒子酸化亜鉛
酸化チタンおよび酸化亜鉛の化学的活性や光触媒活性を抑制することで光による劣化および変色を防止し、塗布時の白さと伸びの重さを改良

∗7 ロングラスティング性とは長持ちするという意味です。

このように報告されています(文献2:2000)

スクラブ

スクラブに関しては、粒子径100μm以上の不定形または球状の含水シリカは、大きさによる物理的な研磨作用を利用してスクラブ目的で使用されています(文献2:2000)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2008-2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

含水シリカの配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年および2018-2019年)

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含水シリカの安全性(刺激性・アレルギー)について

含水シリカの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2009)によると、

  • [ヒト試験] 300人の患者に微粒子含水シリカゲルを含む散布剤の皮膚試験を実施したところ、含水シリカ粉末は非刺激および無毒であり、感作性はほとんどまたはまったくなく、乳児、小児および成人に安全に適用できると結論づけられた(W R Grace & Co,1981)
  • [ヒト試験] 27人の被検者(男性18人、女性9人)に17%含水シリカ0.05mLを含むフェイシャルマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚感作性は認められなかった(KGL Inc,2003)
  • [ヒト試験] 27人の被検者(男性18人、女性9人)に21.7436%含水シリカを含むフェイシャルパウダーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚感作性は認められなかった(KGL Inc,2004)
  • [ヒト試験] 20人の被検者(男性10人、女性10人)に45%含水シリカを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中に皮膚反応は観察されなかった(UNEP,2004)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2009)によると、

  • [動物試験] 8匹のウサギの眼に含水シリカ0.1gを含むオリーブオイルを点眼し、5分後に5匹のウサギの眼をすすぎ、24時間後に残りの3匹のウサギの眼をすすいだ。点眼から1,24,48および72時間後に眼を検査したところ、5分後に眼をすすいだウサギは1および24時間後で結膜にわずかな発赤が観察され、24時間後に眼をすすいだウサギは1,24および48時間後でわずかな結膜発赤が観察された。臨床的な刺激の兆候はなく、わずかな眼刺激性と結論付けられた。ただし、含水シリカの水溶性が大きかったり、オリーブオイル中の不純物の除去が不完全であることが差異を生じさせるかどうかは明らかではない(Lewinson et al,1994)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、わずかな眼刺激性が報告されているため、わずかな眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

含水シリカはベース成分、表面処理剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 表面処理剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2009)「Safety Assessment of Silica and Related Cosmetic Ingredients」Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel.
  2. 田中 博和, 他(2000)「シリカの特性と化粧品への応用」Fragrance Jpurnal(28)(11),64-70.
  3. 日光ケミカルズ(2016)「無機粉体」パーソナルケアハンドブック,290-293.
  4. Cosmetic Ingredient Review(2019)「Amended Safety Assessment of Amorphous Silica and Synthetically-Manufactured Amorphous Silicates as Used in Cosmetics」Tentative Amended Report for Public Comment.
  5. 赤崎 忠行, 他(2001)「ゲル法シリカの特徴と応用」東ソー研究・技術報告(45),65-69.

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