タルクとは…成分効果と毒性を解説

ベース 感触改良 抗炎症成分
タルク
[化粧品成分表示名称]
・タルク

[医薬部外品表示名称]
・タルク

滑石(学名:Talcum depuratum 英名:talc)を粉砕して得られる含水ケイ酸マグネシウムから成る板状の粘度鉱物(体質顔料)です。

滑石は最も柔らかい鉱物のひとつであり、タルクの最大の特徴に他の体質顔料では得られない滑らかな使用感触と自然な光沢があります(文献8:2003)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、日焼け止め製品などに使用されています(文献1:2015)

感触改良・粉体基剤

感触改良・粉体基剤に関しては、吸着力がよく、また滑りを向上させて肌への伸びや広がりを良くする目的で白粉(おしろい)、ファンデーション、ボディパウダー、ベビーパウダーなどの粉体基剤に汎用されています(文献9:2016;文献10:2015)

ウロキナーゼ吸着による抗炎症作用

ウロキナーゼ吸着による抗炎症作用に関しては、2002年に資生堂が第22回IFSCCエジンバラ大会において最優秀賞を受賞した研究成果で、その報告によると、

肌荒れ時の角層表面にはウロキナーゼが存在し、これが活性化因子としてプラスミンを活性化し、初期段階の肌荒れに重要な働きをしていることを見出した。

そこで、本来は表皮内部で活性化されると考えられていたウロキナーゼが角層表面で活性化されることに着目し、肌表面でその活性を取り除くことで肌荒れが防止できるのではと考え、様々な粉体を探索したところ、酸化亜鉛にウロキナーゼ活性抑制作用が、またシリカおよびタルクにウロキナーゼ吸着作用が明らかになった。

これら2種類の粉体をナノレベルで複合化し、パウダーファンデーションに配合して4,039人の女性に3週間連続使用してもらったところ、70%に肌荒れ改善効果が認められた。

このような研究結果が明らかになっており(文献11:2002)、タルクにウロキナーゼ吸着による肌荒れ防止・抗炎症作用が認められています。

ヒト試験は、ナノ化されたタルクを使用していることもあって効果が顕著ですが、ウロキナーゼ吸着作用はタルクの特性であるため、一般的なタルクでも効果を有していると考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2010-2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

タルクの配合状況の調査結果(2010-2013年)

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タルクの安全性(刺激性・アレルギー)について

タルクの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 発がん性:動物における限定的な証拠はあるが、ヒトにおける十分な証拠なし
  • 発がん性(会陰部に使用する場合):ボディパウダーの会陰での使用で限定的な証拠あり

このような結果となっており、タルクの顔や体(会陰部除く)への使用について、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、会陰部へのタルクパウダーの使用に関しては、ヒトに対して証拠は不十分であるものの、発がん性の可能性が疑われており、さらなる検証結果および因果関係の解明が求められています。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] モルモット(数不明)に前処理として滅菌生理食塩水0.5mLのエマルション中の英国薬局グレード滅菌タルク10mgおよび完全フロイントアジュバントエマルション溶液0.5mLを皮内注射し、11匹の対照モルモットにはエマルションのみを注射した。皮膚試験は、様々な期間で片耳にデンプン粉末懸濁液を、もう片方にタルクを適用し、両耳にチャレンジパッチを適用してから24時間後に皮膚反応を評価したところ、すべての対照群においてわずかな皮膚の肥厚が観察され、その皮膚反応はタルク試験群におけるタルクのチャレンジに対する皮膚反応にみられたものと同様であった。この結果からタルクは皮膚感作剤ではなかった(G G Hawley et al,2007)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、皮膚感作物質ではないと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

発がん性について

世界保健機関(WHO)の一機関であるIARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)は、ヒトに対する発がん性に関する様々な物質・要因を評価し、以下の表のように5段階に分類しており(文献2:2017;文献3:2019)

グループ グループ内容 分類理由
グループ1 ヒトに対する発がん性がある ・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合
・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3 ヒトに対する発がん性について分類できない ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
・他のグループに分類できない場合
グループ4 ヒトに対する発がん性がない ・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

2010年に公開されたIARCの評価によると、タルクの発がん性は、

  • 実験動物においてアスベストまたはアスベスト繊維を含まないタルクの発がん性について限定的な証拠がある
  • ヒトにおいてアスベストまたはアスベスト繊維を含まない吸入タルクの発がん性について十分な証拠がない

このように結論づけられており、「グループ3」に分類されています(文献4:2010)

ただし、タルクをベースとしたボディパウダーの会陰(∗1)への使用に関しては、

∗1 会陰(えいん)とは、解剖学において狭義では外陰部と肛門の間を指し、広義では左右の大腿(だいたい)と臀部(でんぶ)で囲まれる骨盤の出口全体を指します。

  • ヒトにおいてタルクベースのボディパウダーの会陰での使用の発がん性について限定的な証拠がある

このように結論づけられており、「グループ2B」に分類されています(文献4:2010)

アスベストの混入に関しては、国内においては2006年にアスベストを含むタルクの製造、輸入、譲渡、提供または使用が禁止されており、また同年に厚生労働省によってタルクの製造を行っている33事業場に対する調査も行われた背景があり(文献5:2006)、現在は安全で高純度のものが供給されていると報告されています(文献8:2003)

次に、アメリカでは股ずれ(∗2)の対策として、習慣的にタルクパウダーを使用する女性が多く、このような背景からタルクを主成分としたボディパウダーの会陰への使用に関する研究が多数行われており、研究者たちが2万人の女性が対象となった研究結果を収集したところ、タルクパウダーを会陰へ使用した場合、卵巣がんリスクが24%増加することが報告されています(文献6:2016;文献7:2010)

∗2 股ずれとは、主に大腿部の内側同士が歩行するたびにこすれ合う身体現象のことです。

タルクと卵巣がんの因果関係については、タルクの結晶が尿生殖器から卵巣のある腹腔に達することを明らかにした研究があり、また別の研究ではタルクの粒子が炎症を引き起こし、この炎症が卵巣がん発生に大きく関与していると考えられていますが、2016年時点では明らかになっていません(文献6:2016)

またアメリカ政府は、1994年と2008年にFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)に対してタルクの警告表示義務を求めており、それに対してFDAは2014年に因果関係を示す「決定的な証拠」は見つからないという理由で警告表示義務を却下していますが、タルクは「異物型反応と、一部の女性に対して上皮がんに進行する懸念のある炎症反応を起こす可能性がある」としています(文献6:2016)

∗∗∗

タルクはベース成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 抗炎症成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Talc as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(34)(1),66S-129S.
  2. 農林水産省(2017)「国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について」, <http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html> 2019年7月19日アクセス.
  3. International Agency for Research on Cancer(2019)「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–123」, <https://monographs.iarc.fr/agents-classified-by-the-iarc/> 2019年7月19日アクセス.
  4. International Agency for Research on Cancer(2010)「Talc Not Containing Asbestiform Fibres」IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans(93),277-413.
  5. 厚生労働省(2006)「タルクへの石綿含有可能性調査結果について」, <https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1016-3.html> 2019年7月19日アクセス.
  6. “東洋経済ONLINE”(2016)「ベビーパウダーに「発がん性物質」は本当か」, <https://toyokeizai.net/articles/-/122693> 2019年7月19日アクセス.
  7. 堀内 晶子, 他(2010)「卵巣癌発生の自然史と早期診断」信州医学雑誌(58)(4),143-151.
  8. 黒岩 昭郎, 他(2003)「タルクの化粧品への新しい展開」Fragrance Journal(31)(12),131-139.
  9. 日光ケミカルズ(2016)「無機粉体」パーソナルケアハンドブック,290-293.
  10. 宇山 光男, 他(2015)「タルク」化粧品成分ガイド 第6版,162.
  11. 株式会社資生堂(2002)「新規肌あれ抑制成分スキンケアパウダーの開発」, <https://www.shiseidogroup.jp/newsimg/archive/00000000000275/275_w5m24_jp.pdf> 2018年8月15日アクセス.

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