シルクとは…成分効果と毒性を解説

ベース 感触改良 表面処理
シルク
[化粧品成分表示名称]
・シルク

[医薬部外品表示名称]
・シルク末

[慣用名]
・シルクパウダー

カイコガ科カイコガ(学名:Bombyx mori 英名:Silkworm)の繭から得られる絹繊維の粉末(シルク系顔料)です。

シルク(絹繊維)は、以下の断面図を以下の断面図をみるとわかりやすいと思いますが、

シルクの断面図

中心部のコアに相当するフィブロイン繊維(約70%)とそのまわりを取り囲んで一本の繭糸となすセリシン(約30%)で構成されており、この繭糸を処理しセリシン部分を溶解・除去することで残ったフィブロイン繊維のみを裁断・粉砕もしくは再結晶処理したものがシルク(シルクパウダー)です。

フィブロインのアミノ酸組成は、以下の表のように、

アミノ酸 割合
グリシン 約43%
アラニン 約30%
セリン 約10%
チロシン 約5%

グリシン、アラニン、セリンと側鎖の小さなアミノ酸で約90%が占められており(文献2:2000)、また酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸が少ないのが他のタンパク質ではみられない特徴です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディケア製品、洗浄製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:2015)

感触改良・粉体基剤

感触改良・粉体基剤に関しては、シルクは皮膚と同じく動物性タンパクであり、組成や構造も似ていることから皮膚との親和性・密着性が高く、シルク特有の柔らかい肌触りを有しており、またフィブロインの特性でもある適度な吸湿性・放湿性を備えているため皮脂や汗を抑えて化粧持ちを向上させることから、メイクアップ化粧品に幅広く使用されています(文献3:2000)

またシルク特有の柔らかい肌触りおよび光沢による感触改良目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品などにも使用されています。

表面処理

表面処理に関しては、顔料粒子の表面をシルクで被膜し、シルクのもつ保湿性、皮膚親和性、染色性を備えることで肌へのストレスを抑えながらも、顔料本来の特性を失わず効果を持続的に発揮することから、顔料の表面処理剤として使用されています(文献3:2000)

顔料については、酸化チタン酸化亜鉛などの白色顔料、炭酸Caタルクなどの体質顔料などが代表的です。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

シルクの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

シルクパウダーの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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シルクの安全性(刺激性・アレルギー)について

シルクの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:非刺激-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者にシルクパウダー0.05gを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間五に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激の兆候はなかった(Anonymous,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚にシルク0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、24および72時間後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激の兆候はなく、シルクは非刺激性に分類された(Applied Biological Sciences Laboratory,1980)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷または擦過した皮膚にシルクパウダー0.5gを4時間適用し、24時間で皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激の兆候はなかった(Anonymous,1978)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼にシルク0.1gを点眼し、点滴直後に3匹のウサギの眼をすすぎ、24,48および72時間後にそれぞれの眼を検査したところ、眼をすすいでいない6匹のうち5匹に一過性の結膜の赤みが観察されたが、角膜または虹彩への影響は観察されなかった。眼をすすいだ3匹のウサギでの眼の刺激は観察されなかった。これらの結果からシルクは非刺激剤として分類された(Applied Biological Sciences Laboratory,1980)
  • [動物試験] 4匹のウサギの片眼に10%シルクパウダー食塩水0.1mLを点眼し、眼はすすぎ、168時間まで眼刺激性を評価したところ、わずかな眼刺激性に分類された(Anonymous,1978)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、非刺激性-わずかな眼刺激性の範囲で報告されているため、眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] モルモットにシルクパウダー0.1gを週5回13週間にわたって適用したところ、皮膚刺激および皮膚感作反応はなかった(Anonymous,1978)
  • [動物試験] 20匹のモルモットに5%シルクパウダー水溶液0.5mLを週1回各6時間3週間にわたって閉塞パッチ適用し、2週間の休息期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Springborn Institute for Bioresearch Inc,1985)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

補足として、絹繊維は、最初に記載したように主に繊維状タンパク質であるフィブロインとセリシンで構成されていますが、化粧品で使用されるシルク(シルクパウダー)は、セリシンを除去したフィブロインのみで構成されており、十分に精錬した絹フィブロイン繊維はアレルギー反応や炎症反応を起こさないことが報告されています(文献4:2003)

セリシンについては、まれに家蚕飼育者や絹繊維業者の中には主にセリシンが吸入性アレルゲンとなり、Ⅰ型アレルギーを起こすことが報告されていますが(文献5:1971;文献6:1972;文献7:1986)、皮膚接触による重大な感作反応はみあたらないため、一般的に皮膚接触においては皮膚感作はほとんどないと考えられます。

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シルクはベース成分、表面処理剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 表面処理剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 大海 須恵子, 他(2000)「シルク加水分解物類およびそれらの誘導体について」Fragrance Journal(28)(4),22-27.
  3. 字根 俊夫, 他(2000)「シルク系顔料の特長と化粧品への応用」Fragrance Journal(28)(4),15-21.
  4. Gregory HAltman, et al(2003)「Silk-based biomaterials」Biomaterials(24)(3),401-416.
  5. 小林 節雄(1971)「養蚕に関係した喘息」アレルギー(20)(8),616.
  6. 吉田 俊士(1972)「養蚕に関係した気管支喘息の抗原物質に関する研究(第3報)」アレルギー(21)(10),660-664.
  7. 松村 高幸, 他(1986)「気管支喘息患者におけるキヌアレルゲンのRASTによる検討」アレルギー(35)(8),828.

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