カーボンブラックとは…成分効果と毒性を解説

着色
カーボンブラック
[化粧品成分表示名称]
・カーボンブラック

[医薬部外品表示名称]
・カーボンブラック

炭化水素の不完全燃焼により得られる炭素の微粒子(無機顔料)です。

墨の原料として使用されているスス(煤)も炭素の微粒子であり、カーボンブラックの一種であると考えられます。

天然に産する鉱物を粉砕・精製して顔料として使用してきた歴史がありますが、天然品は不純物が多く、また品質を一定に保つことが困難であることから、1940年に製造方法が確立されています。

近年新しく出現したナノ素材とは違い、当時から一貫してナノサイズの粒子であり、これらは原料メーカーが異なってもほとんど共通です(文献2:2013)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、ネイル製品、ヘアカラー製品などに使用されています(文献8:2016)

黒色の着色

黒色の着色に関しては、黒色顔料であり、着色力が強いことから、アイアライナー、マスカラ、眉墨などアイ系メイクアップ化粧品に使用されています(文献8:2016)

着色力が強いため、少量添加で十分な着色効果を発揮しますが、粒径が非常に小さく皮膚への付着力も強いです(文献8:2016)

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カーボンブラックの安全性(刺激性・アレルギー)について

カーボンブラックの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギの無傷または擦過した皮膚に20%または27%カーボンブラック懸濁液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚反応は観察されなかったため、カーボンブラックは非刺激性であると考えられた(Degussa AG,1977;1978)
  • [動物試験] ウサギの無傷または擦過した皮膚に水で湿らせた未希釈のカーボンブラックを4時間単一閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に試験部位を評価したところ、いずれのウサギも皮膚刺激の兆候を示さなかったため、カーボンブラックは皮膚刺激性を有していないと結論付けられた(Degussa AG,1984)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に2%,6%および10%カーボンブラックを含むサンフラワーオイルを処理したところ、皮膚刺激性は予測されなかった(Brémond,2011)

カーボンブラック協会の安全性データ(文献2:2013)によると、

  • カーボンブラックに皮膚感作性は報告されていない。長期にわたる接触では皮膚の乾燥、刺激をともなうことがある

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に未希釈のカーボンブラックを点眼し、OECD405テストガイドラインに基づいて点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギもいずれの時間においても眼に影響は観察されず、カーボンブラックは眼刺激剤ではなかった(Degussa AG,1977)
  • [動物試験] 8匹のウサギの片眼の結膜嚢に未希釈のカーボンブラックを適用し、5匹のウサギは5分後に眼をすすぎ、3匹のウサギは24時間後に眼をすすいだ。Draize法に基づいて適用24,48,72および96時間後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギもいずれの時間においても眼に影響は観察されず、カーボンブラックは眼刺激剤ではなかった(Degussa AG,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はなしと考えられます。

安全性についての補足

カーボンブラックは、1940年の製造当初からナノサイズ(微粒子)が普及していますが、長い使用実績に基づいた安全性データが蓄積しており、規制濃度が定められ、かつ法規制がなされている現状があり、微粒子(ナノサイズ)であるからという理由で近年みられる他のナノ素材と同一視すべきではなく、安全性を強化する必要はないと報告されています(文献2:2013)

次に、カーボンブラックは発がん性が疑われていますが、これはラットにおける肺吸入による発がん性の疑いであり、1958年に報告されたマウスを用いたカーボンブラックにおける皮膚接触試験によると、

オイルに懸濁させたカーボンブラックをマウスの皮膚に塗布する試験を実施したところ、皮膚に対する発がん性への影響は認められなかった

このような試験データが報告されており(文献3:1958)、また現在では発がん性成分であるベンツピレンが混入する危険性のない製法で製造されており(文献9:2015)化粧品として通常使用する場合において安全性に問題はないと考えられます。

ラットにおける肺吸入による発がん性の疑いに関しては、2013年までの発がん性試験によると、

雌ラット、マウス、ハムスターを使用した動物実験では、吸入による肺過負荷条件下で、雌ラットのみに肺腫瘍がみられ、カーボンブラック工場労働者を対象としたコホート研究では、曝露と肺がんの発生率に因果関係は見いだせなかった

このような研究結果が報告されています(文献2:2013)

世界保健機関(WHO)の一機関であるIARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)は、以下のような人に対する発がん性に関する様々な物質・要因を評価し、以下の表のように5段階に分類しており(文献4:2017;文献5:2019)

グループ グループ内容 分類理由
グループ1 ヒトに対する発がん性がある ・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合
・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3 ヒトに対する発がん性について分類できない ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
・他のグループに分類できない場合
グループ4 ヒトに対する発がん性がない ・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

IARCの評価によると、カーボンブラックの発がん性に関しては、2010年にヒトに対して発がん性がある可能性があるとし、「グループ2B」に分類されています(文献6:2019)

また、IARCだけでなく世界の主要な発がん性分類によると(∗1)

∗1 赤字がカーボンブラックの該当区分です。

GHS区分 IARC EU 産衛学会 ACGIH
1A 1 1A 1 A1
1B 2A 1B 2A A2
2 2B 2 2B A3
分類できない 3 A4
区分外 4 A5

このように区分されており(文献7:2016)、それぞれの機関における評価の詳細は以下のように、

評価機関およびルール 評価結果
国連世界調和システム
(UN GHS)
区分外(評価機関:国際カーボンブラック協会)
根拠:動物実験で有害影響がみられたが、その機構および作用モードにおいてヒトへの関連性が十分でないため有害であると分類すべきではない
国際がん研究機関
(IARC)
総合評価:2B(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)
評価理由:発がん性に関して実験動物の研究では十分なエビデンスがあるが、ヒトにおいては十分なエビデンスがない
米国産業衛生専門家会議
(ACGIH)
A3(動物で発がん性が確認されているが、ヒトへの関連性は知られていない)
日本産業衛生学会 第2群B(疫学研究からの証拠はないが、動物実験からの証拠が十分である)

共通してヒトへの関連性のエビデンスがなく、関連性は不明としています(文献7:2016)

∗∗∗

カーボンブラックは着色剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:着色剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Scientific Committee on Consumer Safety(2015)「Carbon Black (nano-form)」OPINION ON.
  2. カーボンブラック協会(2013)「カーボンブラックのナノマテリアルとしての安全性」, <http://carbonblack.biz/nanomaterial.pdf> 2018年5月23日アクセス.
  3. Nau CA, et al.(1958)「A study of the physiological effects of carbon black. II. Skin contact」AMA Arch Ind Health(18),511-520.
  4. 農林水産省(2017)「国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について」, <http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html> 2019年7月13日アクセス.
  5. International Agency for Research on Cancer(2019)「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–123」, <https://monographs.iarc.fr/agents-classified-by-the-iarc/> 2019年7月13日アクセス.
  6. International Agency for Research on Cancer(2019)「List of classifications, Volumes 1-123」, <https://monographs.iarc.fr/list-of-classifications-volumes/> 2019年7月13日アクセス.
  7. カーボンブラック協会(2016)「カーボンブラック取扱安全指針 第七版」, <https://carbonblack.biz/pdf/guidelines7th.pdf> 2019年7月13日アクセス.
  8. 日光ケミカルズ(2016)「無機色材」パーソナルケアハンドブック,347-351.
  9. 宇山 光男, 他(2015)「カーボンブラック」化粧品成分ガイド 第6版,158.

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