酸化チタンの基本情報・配合目的・安全性

酸化チタン

化粧品表示名 酸化チタン
医薬部外品表示名 酸化チタン、微粒子酸化チタン
部外品表示簡略名 酸化Ti、微粒子酸化Ti
慣用名 二酸化チタン
INCI名 Titanium Dioxide
配合目的 着色紫外線防御

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるチタン(元素記号:Ti)の酸化物(無機化合物:白色顔料)です[1]

酸化チタン

1.2. 物性・性状

酸化チタンは、結晶構造の違いによってアナタース(anatase)、ルチル(rutile)、ブルカイト(brookite)の3種類が存在しますが、顔料として工業的に用いられるものとしては、以下の図のように、

酸化チタンの結晶構造

ルチルとアナタースのみであり、ルチルはアナタースよりも結晶のユニット・セルの原子の配列が緻密で、この違いにより物性に差異があります[2]

酸化チタンの物性・性状は(∗1)(∗2)

∗1 極大吸収波長とは、人体に影響を及ぼす紫外線波長であるUVB-UVAの波長領域(290-400nm)の中で最も吸収する波長のことをいいます。

∗2 屈折とは光の速度が変化して進行方向が変わる現象のことで、屈折率は「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表されます。光の伝播速度は物質により異なり、また同一の物質でも波長により異なるため屈折率も異なります(屈折率の例としては1.33、エタノールは1.36、無機粉体で紫外線散乱剤として使用されている酸化亜鉛は2.02)。

種類 状態 極大吸収波長(nm) 屈折率 相対隠蔽力
ルチル 白色
粉体
280-350
(UVB-UVA領域)
2.71 125
アナタース 2.52 100

このように報告されています[3][4a]

無機顔料における光学的性質の第一因子は屈折率であり、屈折率が大きいほど表面反射(紫外線遮断効果)が大きくなりますが、一方で隠蔽性も高くなります[5a]

隠蔽性が高いということは、言い換えれば透明性が低いということであり、酸化チタンの場合は使用時に肌に白く残る「白浮き」やきしみ感が生じる原因にもなるため、白さが必要ない場合は、酸化チタンを微粒子化(ナノ化)することにより透明性および使用感を高めた微粒子酸化チタン(ナノ化酸化チタン)が用いられています[5b]

また、酸化チタンは光触媒活性を有しており、光を照射すると表面で強力な酸化力を発揮し、共存するオイルや有機色素を酸化分解して異臭や変色を引き起こしたり、皮膚表面に対する安全性を著しく損なうことから、化粧品に使用される場合は必ず水酸化Alシリカなどで表面を処理し、光触媒活性を抑えた上で配合されています[6a][7]

結晶型としては、ルチル型のほうが屈折率や紫外線吸収効果が高く、光触媒活性が低いなど利点があるものの、製造過程において1000℃近くの高い温度で焼成することか、合成時に酸化スズを添加することが必要なこともあり、実際的にはどちらも適宜選択に応じて使用されています(∗3)[6b]

∗3 どちらの結晶型が使用されていても化粧品成分表示名称としては「酸化チタン」であり、結晶型は明示されませんが、製品においては配合量や成分の組み合わせで総合的な機能を設計しているため、結晶型によって製品の機能に差がでるということはありません。ただし、酸化チタンと酸化スズが成分表示に表示されている場合はルチル型の可能性が考えられます。

1.3. 分布

酸化チタンは、鉱物において主に正方晶系の鋭錐石(アナタース:anatase)や金紅石(ルチル:rutile)、斜方晶系の板チタン石(ブルカイト:brookite)の主成分として存在しています[8]

1.4. 化粧品以外の主な用途

酸化チタンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 ホワイトチョコレートの白色や各種の色に着色するための下地としての白色着色目的で用いられています[9]
医薬品 基剤、懸濁・懸濁化、光沢化、コーティング、充填、着色、糖衣、賦形、分散、流動化目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられています[10]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 白色の着色
  • UVBおよびUVA吸収および散乱による紫外線防御効果

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、ネイル製品、洗顔石鹸、入浴剤などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 白色の着色

白色の着色に関しては、酸化チタンは可視光領域の波長の光をすべて反射する性質をもつ白色顔料であり、屈折率が高く隠蔽性が高いため、白色の着色や他の顔料に添加して目的の色をつくる目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、ネイル製品、コンシーラー製品、洗顔石鹸、入浴剤などに汎用されています[6c][11]

2.2. UVBおよびUVA吸収および散乱による紫外線防御効果

UVBおよびUVA吸収および散乱による紫外線防御効果に関しては、まず前提知識として紫外線(ultraviolet:UV)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

紫外線とは、以下の図表のように、

紫外線の分類

紫外線の分類 略称 波長領域(nm)
長波長紫外線 UVA 320-400
中波長紫外線 UVB 290-320
短波長紫外線 UVC 190-290

太陽による光の波長のうち可視光線よりも波長の短いものを指し、生物学的な作用によって3種類に分類されていますが、以下の図が示すように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

300nm以下の波長のものは成層圏のオゾン層に吸収されるため、地上に到達するのは波長領域300-400nm、つまりUVBの一部(300-320nm)とUVAのみであり、人体に作用するのはUVBおよびUVAであることが知られています[12a][13][14a]

UVBおよびUVAによるヒト皮膚に対する障害は、以下の表のように、

  UVB UVA
皮膚到達度 表皮まで 真皮まで
皮膚
外観
変化
単回
曝露
一過性の炎症(紅斑)
遅延黒化(紅斑消退後)
一過性の即時黒化
UVBによる紅斑の増強
一過性の紅斑(大量曝露時)
反復
曝露
持続型黒化の増強 光老化皮膚の形成
皮膚
内部
変化
単回
曝露
表皮細胞の損傷
DNAの損傷
メラニン産生の促進
活性酸素(・O2)の生成
活性酸素(NO)の促進
活性酸素(1O2)の生成
反復
曝露
メラノサイトの増殖 真皮細胞外マトリックスの変性

皮膚外観および皮膚内部のそれぞれで、主にこれらの変化が報告されています[12b][14b][15a][16a]

UVBは、単回曝露時の即時的な皮膚反応としていわゆる「日焼け」とよばれる紅斑や浮腫のような炎症反応を引き起こすことが知られており、この炎症が紫外線曝露24時間をピークとして消退したあとに(紫外線曝露から3日後に)各メラノサイト活性化因子の分泌が亢進し、メラノサイトがそれらを受け取ることでメラノサイト内でメラニン産生が促進され、遅延型黒化を引き起こします(∗4)[12c][14c][16b]

∗4 紫外線曝露による、炎症のメカニズムについては抗炎症成分カテゴリで、メラニン産生促進による黒化のメカニズムについては美白成分カテゴリでそれぞれ解説しているので併せて参照してください。

また、反復曝露(長期間の曝露)による主な皮膚反応としてメラノサイトの増殖によってメラニン量が増加することによる皮膚の持続的な黒化や部分的な色素沈着があります[14d][15b]

一方で、UVAは単回曝露時の即時的な皮膚反応として、曝露した直後に皮膚が黒化する即時黒化を引き起こしますが、この即時黒化反応は2-3時間で消失する一時的な皮膚の外観変化であり、メラニンの生成促進によって引き起こされたものではなく、皮膚にすでに存在している淡色のメラニン(還元メラニン)の光酸化によるものであると考えられています[15c][16c]

また、反復曝露(長期間の曝露)による主な皮膚反応として真皮に存在する細胞外マトリックスの変性による皮膚の老化(ハリや弾力の低下)が促進されることが知られています(∗5)[12d][14e]

∗5 皮膚の老化(光老化)のメカニズムについては、抗老化成分カテゴリで解説しているので、併せて参照してください。

このような背景から、過剰なUVBおよびUVAの曝露から皮膚を保護することは、健常な皮膚の維持や光老化の予防という点で重要であると考えられています。

酸化チタンは、以下の紫外線吸収スペクトル図をみてもらうとわかりやすいと思いますが(∗6)

∗6 吸光度(absorbance:abs)とは、溶液に吸収される光の量のことを指し、Lambert-Beerの法則を用いた場合、光透過率100%の吸光度0.0、31.6%の吸光度0.5、10%の吸光度1.0、1%の吸光度2.0となり、吸光度が大きいほど光透過率は低くなります。ただし、濃度依存的に吸光度は高くなるため、吸光度はあくまでもスペクトルを示すための参考値です。

酸化チタンの紫外線吸収スペクトル

UVB領域である290nmからUVA領域である350nmまでの幅広いUV吸収能を有しており[4b]、UVBおよびUVA吸収による紫外線防御目的で日焼け止め製品、化粧下地製品、メイクアップ製品などに汎用されています。

また、屈折率の高さから紫外線の散乱効果が大きく、散乱効果は粒径200-300nm付近が最大と考えられていることから、この大きさの酸化チタンが多く使用される一方で、皮膚に対して塗布した場合に透明性が重要視される製品の場合は粒径100nm以下の微粒子酸化チタンが使用されます[17a]

微粒子酸化チタンはUVBとUVAのいずれの防御機能も有していますが、高い透明性を目的とする場合は粒径10-35nmの微粒子酸化チタンが適しており、この粒径はUVBの防御に適していることから、一般に微粒子酸化チタンは高い透明性とともにUVB防御目的で使用されています(∗7)[17b]

∗7 微粒子酸化チタンを使用した場合、UVA領域は微粒子酸化亜鉛や紫外線吸収剤で補完するのが一般的です。

3. 混合原料としての配合目的

酸化チタンは、混合原料が開発されており、酸化チタンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 STR-100W(G)
構成成分 酸化チタン含水シリカ
特徴 平均粒径15nmの超微粒子酸化チタン
原料名 STR-40-OTS
構成成分 酸化チタントリエトキシカプリリルシラン
特徴 平均粒径35nmの超微粒子酸化チタン
原料名 STR-100C-LF
構成成分 酸化チタン水酸化Alステアリン酸
特徴 平均粒径15nmの超微粒子酸化チタン
原料名 チタン DN-SH(2)
構成成分 酸化チタン水酸化Alハイドロゲンジメチコン
特徴 ハイドロゲンジメチコン処理酸化チタン
原料名 PARSOL TX
構成成分 酸化チタンシリカジメチコン
特徴 シリカ処理酸化チタン
原料名 STR-100W-LP
構成成分 酸化チタン含水シリカハイドロゲンジメチコン
特徴 平均粒径15nmの超微粒子酸化チタン
原料名 STR-100W-OTS
構成成分 酸化チタン含水シリカトリエトキシカプリリルシラン
特徴 平均粒径15nmの超微粒子酸化チタン
原料名 STR-100A-LP
構成成分 酸化チタン含水シリカ水酸化Alハイドロゲンジメチコン
特徴 平均粒径15nmの超微粒子酸化チタン
原料名 SPD-T5
構成成分 シクロペンタシロキサン酸化チタン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、水酸化Alステアリン酸
特徴 微粒子チタンのシクロペンタシロキサン分散物
原料名 SSQP40TIJ
構成成分 スクワラン酸化チタン水酸化Alイソステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸
特徴 水酸化アルミニウム・イソステアリン酸処理微粒子酸化チタンのスクワラン分散物
原料名 コスメサーブ WP-40W
構成成分 酸化チタンシリカBGステアリン酸ポリグリセリル-10フェノキシエタノール
特徴 微粒子酸化チタンの水分散体
原料名 コスメサーブ WP-60SP
構成成分 水酸化Alシリカスクワランステアリン酸パルミチン酸デキストリン酸化チタン
特徴 微粒子酸化チタンを植物性スクワランに高濃度で分散させたペースト

4. 安全性評価

酸化チタンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性(非ナノ粒子):ほとんどなし
  • 皮膚刺激性(ナノ粒子):ほとんどなし
  • 眼刺激性(非ナノ粒子):ほとんどなし
  • 眼刺激性(ナノ粒子):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(非ナノ粒子):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(ナノ粒子):ほとんどなし
  • 発がん性:動物における十分な証拠はあるが、ヒトにおける十分な証拠なし

このような結果となっており、ナノ化の有無にかかわらず、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

厚生労働省 化学物質のリスク評価検討会の安全性データ[18a][19a]によると、

– 非ナノ粒子 –

  • [ヒト試験] 50名の被検者に50%酸化チタンを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、この試験製剤は皮膚刺激を示さなかった
  • [動物試験] 3匹のウサギの剃毛した背部に酸化チタン0.5gを含む脱イオン水0.25mLを半閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいてパッチ除去1,24,48および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質はいずれの観察時間においても皮膚刺激を示さなかった
  • [動物試験] 6匹のウサギの剃毛した背部に酸化チタン0.5gを含む脱イオン水を4時間半閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいてパッチ除去1,24,48および72時間後に皮膚刺激性を評価したところ、1時間後で2匹に軽度の紅斑と1匹に中程度の紅斑が、24時間後で3匹に軽度の紅斑が、48および72時間後で1匹に軽度の紅斑がみられたが、これらの影響には回復性がみられ、いずれの観察時間においても浮腫はみられなかった。この試験物質は皮膚刺激剤ではないと考えられた

– ナノ粒子 –

  • [動物試験] ウサギの皮膚に粒径140±44nmの微粒子酸化チタンを含む蒸留水0.5gを4時間適用し、Draize法に基づいて72時間後まで皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Warheit et al,2007)
  • [動物試験] ラットの剃毛した皮膚に微粒子酸化チタン(1次粒子径26.7nm、2次粒子径391.6nm)を単回適用したところ、この試験物質は毛包間表皮の剥離層および毛漏斗角質化層に局在していたが、生細胞領域には認められず、細胞の変化もみられなかった(Adachi et al,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎりナノ化の有無に関わらず共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

厚生労働省 化学物質のリスク評価検討会の安全性データ[18b][19b]によると、

– 非ナノ粒子 –

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に酸化チタン約57mgを適用し、Draize法に基づいて適用1,24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、1および24時間後で3匹に結膜の発赤がみられたが、24あるいは48時間後で正常な状態に回復した。フルオレセイン(蛍光)染色検査において角膜の傷害はみられなかった。この試験物質は眼刺激剤ではなかった

– ナノ粒子 –

  • [動物試験] ウサギの片眼に粒径140±44nmの微粒子酸化チタン57mgを適用し、適用72時間後まで眼刺激性を評価したところ、適用後すぐに結膜の発赤が認められたが、可逆的であり、24および48時間後で正常に戻った。この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Warheit et al,2007)

このように記載されており、試験データをみるかぎりナノ化の有無にかかわらず共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

厚生労働省 化学物質のリスク評価検討会の安全性データ[18c][19c]によると、

– 非ナノ粒子 –

  • [ヒト試験] 290名の皮膚疾患患者に5%酸化チタンを含むワセリンをパッチテストしたところ、この試験製剤はいずれの患者においても接触性皮膚炎を示さなかった
  • [動物試験] 20匹のモルモットに酸化チタンを対象に皮膚感作性試験(Buehler法)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった
  • [動物試験] マウスを用いたLLNA(マウス局所リンパ節増殖試験)において濃度0,5,25,50および100%の酸化チタン25μLをマウスの耳介に3日間にわたって塗布した後5日目にRI標識物質(3H-チミジン)20μCiを静脈内投与し、投与5時間後に耳介リンパ節を採取した。RI標識物質の取込量を測定したところ、SI(Stimulation index)は3.0(陽性と判断される基準)以下であり、酸化チタンは皮膚感作物質ではないと考えられた(SIDS(2013))

– ナノ粒子 –

  • [動物試験] 粒径140±44nmの微粒子酸化チタンを含む蒸留水をLLNA(局所リンパ節試験法)で評価した。ウサギの両耳に試験物質を3日間連続塗布し、耳介リンパ節における³H-Thymidineの取り込みを測定したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.4. 発がん性

IARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)は、WHO(World Health Organization:世界保健機関)の一機関であり、人に対する発がん性に関する様々な物質・要因を評価し、以下の表のように4段階に分類しています[20][21]

グループ グループ内容 分類理由
グループ1 ヒトに対して発がん性がある ヒトにおいて発がん性の十分な証拠がある
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある 以下のうち少なくとも2つを含み、その中に暴露を受けたヒトまたはヒトの細胞もしくは組織のいずれかに係るものを少なくとも1つ含む場合。
・ヒトにおいて発がん性の限定的な証拠がある
・実験動物において発がん性の十分な証拠がある
・作用因子が発がん性物質の主要な特性を示す有力な証拠がある
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある 以下のうちいずれか1のみを含む場合場合。
・ヒトにおいて発がん性の限定的な証拠がある
・実験動物において発がん性の十分な証拠がある
・作用因子が発がん性物質の重要な特性を示す有力な証拠がある
グループ3 ヒトに対する発がん性について分類できない 作用因子が他のグループに分類できない場合。
また「実験動物における発がん性の作用機序がヒトでは作用しないという有力な証拠」が1つ以上の腫瘍部位について存在し、残りの腫瘍部位が「実験動物における十分な証拠」とは評価されず、かつヒトにおける研究や作用機序の研究に由来するデータから他のカテゴリーに分類することが適当でない場合も含む

2010年に公開されたIARCの評価によると、酸化チタンの発がん性は、

  • 実験動物において酸化チタンの発がん性について十分な証拠がある
  • ヒトにおいて酸化チタンの発がん性について十分な証拠がない

このように結論づけられており、「グループ2B」に分類されています[22]

また、IARCだけでなく世界の主要な発がん性分類によると(∗8)

∗8 赤字が酸化チタンの該当区分です。

GHS区分 IARC EU 産衛学会 ACGIH NTP
1A 1 1A 1 A1 K
1B 2A 1B 2A A2 R
2 2B 2 2B A3
分類できない 3 A4
区分外 4 A5

このように区分されています[23a]

GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)とは、化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類し、その結果をラベルやSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)に反映させ、災害防止及び人の健康や環境の保護に役立てようとするものであり、現在はIARCの区分である「2B」を元に「区分2」に分類されています。

ただし、GHSの「区分2」はヒトに対する発がん性が疑われることを意味するものであるため、2012年に日本酸化チタン工業会は、発がん性に関する情報が複層化することによる混乱を避けるために、ヒトにおける酸化チタンの発がん性を分類するには十分な情報が得られていないと判断し、GHSの分類を「区分2」(ヒトに対する発がん性が疑われる)から「分類できない」(分類判断を行うのに十分な情報がない)に変更することを推奨しています[23b]

このように酸化チタンの発がん性の分類に関しては、まだ分類過程段階であるといえますが、
現時点では酸化チタンのヒトに対する発がん性の根拠はみあたりません。

また、ナノ化酸化チタンの発がん性への懸念については、ナノ化酸化チタンを生産している工場などで働いている方が長期にわたって日々微粒子酸化チタンを吸引することによる肺への影響としての発がん性などの懸念であり、化粧品ユーザーが通常使用下で皮膚に塗布する分量においては問題ないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「酸化チタン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,450-452.
  2. 清野 学・酸化チタン研究会(2017)「酸化チタンの基本的性質」第2版 酸化チタン ―物性と応用技術,47-74.
  3. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「無機色材」パーソナルケアハンドブックⅠ,347-351.
  4. abS. Daly, et al(2016)「Chemistry of Sunscreens」Principles and Practice of Photoprotection,159-178. DOI:10.1007/978-3-319-29382-0_10.
  5. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「無機系紫外線防御剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,456-459.
  6. abc柴田 雅史(2021)「白色の顔料-酸化チタン」美しさをつくる色材工学 -化粧品の開発からもっときれいになる使い方まで-,172-175.
  7. 坂井 章人(2011)「微粒子粉体:紫外線防止と粉体」色材協会誌(84)(9),329-334. DOI:10.4011/shikizai.84.329.
  8. 大木 道則, 他(1989)「酸化チタン(Ⅳ)」化学大辞典,875.
  9. 樋口 彰, 他(2019)「二酸化チタン」食品添加物事典 新訂第二版,259.
  10. 日本医薬品添加剤協会(2021)「酸化チタン」医薬品添加物事典2021,265-266.
  11. 藤井 徹也(1995)「石けんの常識 Q&A」洗う―その文化と石けん・洗剤,42-50.
  12. abcd正木 仁(2003)「紫外線」化粧品事典,500-502.
  13. 磯貝 理恵子・山田 秀和(2021)「太陽光線と皮膚:マクロの変化」臨床光皮膚科学,16-22.
  14. abcde錦織 千佳子(2009)「紫外線と光防御」美容皮膚科学 改定2版,31-39.
  15. abc日光ケミカルズ株式会社(2016)「紫外線障害予防剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,586-594.
  16. abc富田 靖(2009)「メラニンと色素異常」美容皮膚科学 改定2版,22-30.
  17. ab本間 茂継(2014)「化粧品開発に用いられる紫外線防御素材」日本化粧品技術者会誌(48)(1),2-10. DOI:10.5107/sccj.48.2.
  18. abc厚生労働省 化学物質のリスク評価検討会(2013)「No.70(初期)酸化チタン(ナノ粒子)」初期リスク評価書.
  19. abc厚生労働省 化学物質のリスク評価検討会(2016)「No.52(詳細)酸化チタン(Ⅳ)(ナノ粒子を除く)」リスク評価書.
  20. 農林水産省(2022)「国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について」, 2022年4月17日アクセス.
  21. International Agency for Research on Cancer(2022)「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–131」, 2022年4月17日アクセス.
  22. International Agency for Research on Cancer(2010)「Titanium Dioxide」IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans(93),193-276.
  23. ab日本酸化チタン工業会(2012)「酸化チタンの発がん性に関するGHS分類区分の変更について(詳細)」, 2022年4月17日アクセス.

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