コチニールの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | コチニール |
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医薬部外品表示名 | コチニール |
INCI名 | Cochineal |
配合目的 | 着色 |
1. 基本情報
1.1. 定義
コチニールカイガラムシ科昆虫コチニールカイガラムシ(学名:Dactylopius coccus Costa 英名:Cochineal 別名:エンジムシ)の雌体から得られる天然由来色素です[1a][2a]。
1.2. 物性・性状
コチニールの物性・性状は、
状態 | 赤-暗赤褐色の液体、塊もしくは粉末 |
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溶解性 | 水、エタノール、エーテル、PGに可溶、油脂に不溶 |
このように報告されています[2b]。
1.3. 成分組成
コチニールは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、
分類 | 成分名 | |
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ポリケタイド | アントラキノン | カルミン酸(赤色色素) |
これらの成分で構成されていることが報告されています[2c]。
1.4. 化粧品以外の主な用途
コチニールの化粧品以外の主な用途としては、
分野 | 用途 |
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食品 | カルミン酸を主成分にする橙-赤紫色色素であり、ヨーロッパではイタリアのリキュールのひとつであるカンパリなどの酒類やジャムなどに橙-赤色をつけるために長年使用されており、日本では着色目的で清涼飲料水、健康志向飲料などの飲料類、氷菓、キャンディなどのあめ類、ハムやウィンナーソーセージなどの食肉加工品、かまぼこやソーセージの魚肉練り製品など幅広い食品に用いられています[3]。 |
これらの用途が報告されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 橙-赤紫色の着色
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ネイル製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 橙-赤紫色の着色
橙-赤紫色の着色に関しては、コチニールは赤-暗赤褐色の液体、塊もしくは粉末であり、天然成分の中では着色力が強く、また光やpH変化などに対する安定性が高く、その溶液の色はpHによって酸性では橙赤色、中性では赤-赤紫色、アルカリでは赤紫-紫色と可逆的に変化することから、橙から赤紫色の着色または他の着色剤と組み合わせて様々な色に着色する目的でメイクアップ製品、ネイル製品などに使用されています[1b][4][5]。
3. 安全性評価
- 食品添加物の既存添加物リストに収載
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし。ただし、非常にまれにアナフィラキシーショックを起こす可能性あり
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
3.1. 皮膚刺激性
食品添加物の既存添加物リストおよび医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
3.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
3.3. 皮膚感作性(アレルギー性)
消費者庁のコチニール(カルミン酸)に関する注意喚起[6a]によると、
- コチニール色素を含む飲料と急性アレルギー反応(アナフィラキシー)に関する国内の研究情報が消費者庁に提供された。これまで、独立行政法人国民生活センターや地方自治体の消費生活センター等には、コチニール色素を原因とするアレルギー症状の事例は寄せられてなかったが、コチニール色素を含む化粧品の使用や食品の摂取により、アナフィラキシーを引き起こしたと推定される事例が、1960年代から数にして20例ほど論文などで報告されている
このように記載されており、同日(2012年5月11日)に厚生労働省からコチニールなどを含有する医薬部外品または化粧品については、その容器または外箱などに「本製品にコチニール等が含まれている旨」「使用中に異常があった場合は使用を控える旨」を記載することが通知されています[7]。
国民生活センターや消費生活センターにはコチニール色素を原因とするアレルギー症状の事例は寄せられておらず、一般に皮膚感作はほとんど起こりらないと考えられますが、非常にまれにアナフィラキシーショックを誘発することが知られており、アナフィラキシー反応を起こした場合は重篤な症状となる可能性もあることから、2012年に消費者庁による注意喚起が行われています[6b]。
4. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「コチニール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,410-411.
- ⌃abc日光ケミカルズ株式会社(2006)「天然色素」新化粧品原料ハンドブックⅠ,333-344.
- ⌃樋口 彰, 他(2019)「コチニール色素」食品添加物事典 新訂第二版,136-137.
- ⌃滝口 照夫(2000)「天然色素」顔料の事典,561-562.
- ⌃柴田 雅史(2021)「昔の色を現代で使用する – 天然色素」美しさをつくる色材工学,264-276.
- ⌃ab消費者庁(2012)「コチニール色素に関する注意喚起」, 2022年9月14日アクセス.
- ⌃厚生労働省(2012)「コチニール等を含有する医薬品、医薬部外品及び化粧品への
成分表示等について」薬食審査発0511第1号.