酸化鉄の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 酸化鉄 |
---|---|
医薬部外品表示名 | 黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、三二酸化鉄 |
部外品表示簡略名 | 黄酸化Fe、黒酸化Fe |
INCI名 | Iron Oxides |
配合目的 | 着色 |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式のいずれかからなる鉄の酸化物(無機顔料)です[1a][2a]。
医薬部外品表示名については、それぞれ、
医薬部外品表示名 | 本質 |
---|---|
黄酸化鉄 | 主としてオキシ水酸化鉄(FeO(OH))および水酸化第二鉄(Fe2(OH)6)からなる |
黒酸化鉄 | 主として四三酸化鉄(Fe3O4)からなる |
ベンガラ(∗1) | 主として三二酸化鉄(Fe2O3)からなる |
∗1 赤酸化鉄のみ「ベンガラ」という表示名ですが、これは最初インドのベンガル地方から輸入されたため、ベンガラの名がついたと記されています。
このように区別されますが、化粧品表示名としてはいずれも「酸化鉄」と表示されます。
1.2. 性状
酸化鉄の性状は、
状態 | 黒酸化鉄 | 黒色粉末 |
---|---|---|
黄酸化鉄 | 黄-橙黄色粉末 | |
ベンガラ | 暗赤-赤褐色粉末 |
このように報告されています[2b]。
2. 化粧品としての配合目的
- 黄-赤-黒色の着色
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、ネイル製品、洗顔石鹸、入浴剤、スキンケア製品などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 黄-赤-黒色の着色
黄-赤-黒色の着色に関しては、酸化鉄は焙焼条件(温度、時間、空気吹込量など)の差により黄色-赤色-黒色の粉末となり、黄-赤-黒色の着色目的で主にメイクアップ製品やネイル製品に汎用されています[1b][3]。
3. 混合原料としての配合目的
酸化鉄は混合原料が開発されており、酸化鉄と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
構成成分 | マイカ、酸化鉄 |
---|---|
特徴 | 様々な色調の酸化鉄を被覆したパール顔料 |
構成成分 | 合成フルオロフロゴパイト、酸化鉄 |
---|---|
特徴 | 合成マイカを基剤とした様々な色調のパール顔料 |
構成成分 | ホウケイ酸(Ca/Na)、酸化鉄 |
---|---|
特徴 | ホウケイ酸(Ca/Na)を基材とした様々な色調のパール顔料 |
構成成分 | アルミナ、酸化鉄 |
---|---|
特徴 | アルミナを基材とした様々な色調のパール顔料 |
構成成分 | マイカ、酸化チタン、酸化鉄 |
---|---|
特徴 | 様々な色調の酸化鉄を被覆した着色パール顔料 |
原料名 | Colorona Imperial Citrine or Colorona Imperial Topaz |
---|---|
構成成分 | マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄 |
特徴 | イエロー色またはブラウン色のなめらかな光沢を持つパール顔料 |
原料名 | Colorona Emerald |
---|---|
構成成分 | マイカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム |
特徴 | 民族カラー“エジプトのエメラルド”をイメージした深緑色の着色パール顔料 |
原料名 | Colorona Purple |
---|---|
構成成分 | マイカ、酸化チタン、酸化鉄、コンジョウ |
特徴 | 民族カラー“パタゴニアの紫”をイメージした紫色の着色パール顔料 |
原料名 | Colorona Precious Gold |
---|---|
構成成分 | マイカ、酸化チタン、酸化鉄、シリカ、酸化スズ |
特徴 | 酸化チタン・ベンガラ被覆のメタリック調のゴールドパール顔料 |
原料名 | NIKKOL フレッシュカラーベース |
---|---|
構成成分 | 酸化チタン、シクロペンタシロキサン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、酸化鉄、メチコン、酢酸トコフェロール |
特徴 | ワンステップで肌色ベースが調製できる混合原料 |
原料名 | NIKKOL フレッシュカラーベース AQUA |
---|---|
構成成分 | 酸化チタン、BG、酸化鉄、水、アルミナ、シリカ、ポリクオタニウム-7 |
特徴 | ワンステップでO/W肌色ベースが調製できる混合原料 |
原料名 | UNISPHERES NT-2202 |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、酸化鉄、酢酸トコフェロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース |
特徴 | 着色剤や活性成分を坦持する目に見える大きさの薄黄色の天然球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES F00M-508L |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、マイカ、酸化チタン、酸化鉄、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース |
特徴 | 着色剤や活性成分を坦持する目に見える大きさの薄黄色の天然球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES NT-2403 |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、酸化鉄、酢酸トコフェロール、酸化チタン、パルミチン酸レチノール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース |
特徴 | 着色剤や活性成分を坦持する目に見える大きさの薄黄色の天然球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES NT-2206 |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、酸化鉄、トコフェロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ユビキノン |
特徴 | 着色剤や活性成分を坦持する目に見える大きさの薄黄色の天然球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES GOLD |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、ホウケイ酸(Ca/Na)、酸化鉄、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、金、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、銅 |
特徴 | 24金を配合したゴールドの球状キャリア |
原料名 | CAVIAR UNISPHERES NTL-3613C |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、酸化鉄、酢酸トコフェロール、(アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、パルミチン酸レチノール、タルク、クエン酸トリエチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、マイカ、酸化チタン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース |
特徴 | 光沢のある黒色の球状キャリア |
原料名 | COSMOPOLITAN UNISPHERES NTL-3821C |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、マイカ、酸化鉄、クエン酸トリエチル、(アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルミナ |
特徴 | 光沢のあるオレンジブラウンの球状キャリア |
原料名 | GOLD TREASURE UNISPHERES NTL-3212C |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、酢酸トコフェロール、酸化鉄、クエン酸トリエチル、マイカ、酸化チタン、(アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース |
特徴 | 光沢のある金色の球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES NATURAL M0-811S |
---|---|
構成成分 | セルロース、キシリトール、タピオカデンプン、結晶セルロース、水添ヒマシ油、ホホバ種子油、酸化鉄、デシルグルコシド、シリカ、グンジョウ、カオリン、アルギン酸Na |
特徴 | 竹色の球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES NATURAL M0-812L |
---|---|
構成成分 | セルロース、キシリトール、タピオカデンプン、結晶セルロース、水添ヒマシ油、デシルグルコシド、ホホバ種子油、酸化鉄、グンジョウ、シリカ、カオリン、アルギン酸Na |
特徴 | 竹色の球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES NATURAL T0-809S |
---|---|
構成成分 | セルロース、キシリトール、タピオカデンプン、結晶セルロース、水添ヒマシ油、ホホバ種子油、酸化鉄、アルギン酸Na |
特徴 | テラコッタ色の球状キャリア |
原料名 | UNISPHERES SAPPHIRE M |
---|---|
構成成分 | マンニトール、結晶セルロース、タルク、ポリブチレンテレフタレート、グンジョウ、カオリン、シリカ、アクリレーツコポリマー、(エチレン/VA)コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サファイア末、酸化鉄、シメチコン |
特徴 | サファイア末を配合したきらめく青色の球状キャリア |
原料名 | BioGenic Magicolor Series |
---|---|
構成成分 | 酸化鉄、酸化チタン、マイカ、ポリエステル-1、ジメチルシリル化シリカ |
特徴 | 外見は白色で塗り込むことで色が出てくる、ポリマーと酸化鉄(有色顔料)を酸化チタン(白色顔料)に内包したカプセル |
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。