ペンテト酸5Naの基本情報・配合目的・安全性

ペンテト酸5Na

化粧品成分表示名称 ペンテト酸5Na
医薬部外品表示名称 ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液
ジエチレントリアミン5酢酸5Na液(簡略名)
配合目的 金属イオン封鎖(キレート)

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるペンテト酸(∗1)の五ナトリウム塩です[1a][2][3a]

∗1 ペンテト酸(pentetic acid)は、ジエチレントリアミン五酢酸ともいいます。

ペンテト酸5Na

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 金属イオン封鎖作用(キレート作用)

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 金属イオン封鎖作用(キレート作用)

金属イオン封鎖作用(キレート作用)に関しては、まず前提知識として化粧品における金属イオンの働きおよび金属イオン封鎖作用について解説します。

化粧品や洗髪に使用する水の中に金属イオンが含まれていると、

対象 金属イオンによる影響
化粧品 酸化促進による油脂類の変臭や変色、機能性成分の阻害
透明系化粧品 濁り、沈殿
シャンプーをすすぐ水 泡立ちの悪化、金属セッケンの生成による毛髪のきしみ

このような品質劣化や機能の低下などを引き起こすことが知られていることから、化粧品や洗髪における水による金属イオンの働きを抑制(封鎖)する目的で金属イオン封鎖剤(キレート剤)が用いられています[4][5]

ペンテト酸はEDTAと類似した構造および性質をもち、ペンテト酸およびそのナトリウム塩は金属イオン封鎖能を有していることから、主に金属イオンを含む硬水の軟化や化粧品の安定化目的で様々な化粧品に汎用されています[1b][3b][6][7]

3. 配合製品数および配合量範囲

ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.20 ジエチレントリアミン五酢酸として
育毛剤 0.10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.10
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 0.10
染毛剤 ジエチレントリアミン五酢酸及びジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液をジエチレントリアミン五酢酸に換算して、ジエチレントリアミン五酢酸の合計として0.5
パーマネント・ウェーブ用剤 ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム及びジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液をジエチレントリアミン五酢酸に換算して、ジエチレントリアミン五酢酸の合計として0.5

また、化粧品としての配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ペンテト酸5Naの使用製品数と濃度

4. 安全性評価

ペンテト酸5Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ[8]によると、

  • [ヒト試験] 23人の被検者に0.21%ペンテト酸5Naを含む化粧水を単回適用したところ、試験物質と陰性対照との間に顕著な刺激性の差はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,2001)
  • [ヒト試験] 29人の被検者に0.1177%ペンテト酸5Naを含む石けん水溶液を対象に2週間累積皮膚刺激性試験を実施したところ、この試料は重要な累積皮膚刺激を示さなかった (TKL Research Inc,2002)
  • [ヒト試験] 33人の被検者に0.1177%ペンテト酸5Naを含む石けん水溶液を対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施したところ、この試料は中程度の皮膚刺激を示した (TKL Research Inc,2002)
  • [ヒト試験] 23人の被検者に0.067%ペンテト酸5Naを含む石けんを14日間家庭で使用してもらったところ、試用期間の間に紅斑や刺すような痛み、乾燥などはみられず、この製品は十分に使用に耐えうると結論づけられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,2003)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.1%ペンテト酸5Naを含むファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Ivy Laboratories,1993)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.1177%ペンテト酸5Naを含む石けん水溶液0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において69人の被検者にほとんど知覚できないレベルから中程度の皮膚刺激(乾燥、軽度の浮腫、軽度の丘疹など)が観察されたが、これらの皮膚刺激反応は臨床的に意味のある刺激とはみなされず、この試料は接触性皮膚感作を示す根拠はないと結論づけた(RCTS Inc,2002)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に0.067%ペンテト酸5Naを含む石けん0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤でも皮膚刺激剤でもないと結論付けられた(Education & Research Foundation Inc,2005)

このように記載されており、試験データをみるかぎりほぼ共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚刺激性については、一部の試験では0.1177%濃度でつけっぱなしの閉塞パッチ適用という使用条件において皮膚刺激反応が報告されています。

ただし、スキンケア化粧品やボディケア製品などリーブオン製品(皮膚につけっぱなしにする製品)の配合範囲調査データによると最大で0.06%濃度と報告されていることから、実際の製品においては皮膚刺激を引き起こさないと考えられる化粧品配合量で設計されていると考えられ、一般にリーブオン製品においても皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ペンテト酸5Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,887.
  2. “Pubchem”(2021)「Pentasodium diethylenetriaminepentaacetate」,2021年6月8日アクセス.
  3. ab大木 道則, 他(1989)「ジエチレントリアミン五酢酸」化学大辞典,931.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「金属イオン封鎖剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,476-480.
  5. 神田 吉弘(2010)「金属イオン封鎖剤」化粧品科学ガイド 第2版,258.
  6. 鈴木 一成(2012)「ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液」化粧品成分用語事典2012,631.
  7. 宇山 侊男, 他(2020)「ペンテト酸5Na」化粧品成分ガイド 第7版,214.
  8. D.M. Benes & C.L. Burnett(2008)「Final Report on the Safety Assessment of Pentasodium Pentetate and Pentetic Acid as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(27)(2_Suppl),71-92. DOI:10.1080/10915810802244546.

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