エチドロン酸の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | エチドロン酸 |
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医薬部外品表示名 | ヒドロキシエタンジホスホン酸液 |
INCI名 | Etidronic Acid |
配合目的 | 金属イオン封鎖(キレート) |
1. 基本情報
1.1. 定義
2. 化粧品としての配合目的
- 金属イオン封鎖作用(キレート作用)
主にこれらの目的で、洗顔石鹸、洗顔料、ボディ石鹸、ボディソープ製品、ヘアカラー製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、クレンジング製品、スキンケア製品、ボディケア製品など様々な製品に汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 金属イオン封鎖作用(キレート作用)
金属イオン封鎖作用(キレート作用)に関しては、まず前提知識として化粧品における金属イオンの働きおよび金属イオン封鎖作用について解説します。
化粧品や洗髪に使用する水の中に金属イオンが含まれていると、
対象 | 金属イオンによる影響 |
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化粧品 | 酸化促進による油脂類の変臭や変色、機能性成分の阻害 |
透明系化粧品 | 濁り、沈殿 |
シャンプーをすすぐ水 | 泡立ちの悪化、金属セッケンの生成による毛髪のきしみ |
このような品質劣化や機能の低下などを引き起こすことが知られていることから、化粧品や洗髪における水による金属イオンの働きを抑制(封鎖)する目的で金属イオン封鎖剤(キレート剤)が用いられています[3][4]。
エチドロン酸は、優れた金属イオン封鎖能を有しており、主に金属イオンを含む硬水の軟化や化粧品の安定化目的で様々な化粧品に汎用されています[1b][5]。
3. 配合製品数および配合量範囲
ヒドロキシエタンジホスホン酸液は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。
種類 | 配合量 | その他 |
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薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 | 2.0 | ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩類として合計 |
育毛剤 | 0.20 | |
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 | 0.10 | |
薬用口唇類 | 配合不可 | |
薬用歯みがき類 | 配合不可 | |
浴用剤 | 配合不可 | |
染毛剤 | ヒドロキシエタンジホスホン酸及びヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウムの合計として2.0 | |
パーマネント・ウェーブ用剤 |
また、化粧品としての配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)。
∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:1%濃度以下においてほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
- 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
- 光感作性:ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、化粧品配合量範囲における詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
4.2. 眼刺激性
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ[6a]によると、
- [動物試験] ウサギの眼に1%および10%エチドロン酸溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験溶液は1%濃度において刺激を示さず、10%濃度において刺激剤であった(European Chemicals Agency,2016)
このように記載されており、試験データをみるかぎり1%濃度において眼刺激なしと報告されているため、一般に1%濃度以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。
4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性
エチドロン酸およびその塩は、化学構造的に紫外線を吸収しないと予期されるため、光毒性(光刺激性)および光感作性試験データがないことに安全性の懸念はないと報告されています[6b]。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「エチドロン酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,220-221.
- ⌃“ChemSpider”(-)「Etidronic acid」,2021年6月7日アクセス.
- ⌃日光ケミカルズ株式会社(2006)「金属イオン封鎖剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,476-480.
- ⌃神田 吉弘(2010)「金属イオン封鎖剤」化粧品科学ガイド 第2版,258.
- ⌃宇山 侊男, 他(2020)「エチドロン酸塩類」化粧品成分ガイド 第7版,204.
- ⌃abCosmetic Ingredient Review Expert Panel(2017)「Safety Assessment of Etidronic Acid and Salts of Etidronic Acid as Used in Cosmetics(∗2)」,2021年6月7日アクセス.
∗2 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。