アセチルグルコサミンの基本情報・配合目的・安全性

アセチルグルコサミン

化粧品表示名 アセチルグルコサミン
医薬部外品表示名 N-アセチルグルコサミン、N-アセチルキトサミン
部外品表示簡略名 アセチルグルコサミン、酢酸グルコサミン、アセチルキトサミン、酢酸キトサミン
INCI名 Acetyl Glucosamine
配合目的 細胞賦活 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるグルコースの2位のヒドロキシ基(-OH)がアセトアミド基(CH3C(=O)NH-)(∗1)に置換された構造をもつN-アセチル化アミノ糖です[1]

∗1 アセトアミド基(acetoamido group)はアセチルアミノ基ともよばれます。

アセチルグルコサミン

1.2. 物性・性状

アセチルグルコサミンの物性・性状は、

状態 結晶
溶解性 水に可溶

このように報告されています[2a]

1.3. 分布

アセチルグルコサミンは、動植物や微生物の複合糖質として、とくにキチン、ムコ多糖、糖タンパク質、糖脂質の構成成分として広く存在しています[2b][3]

1.4. 皮膚における働き

皮膚におけるアセチルグルコサミンの働きに関しては、以下の皮膚構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、皮膚上層部は、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

直接外界に接する皮膚最外層である角質層を含む表皮と、表皮を支える真皮から構成されていることが知られています。

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス成分)に二分され、以下の表のように、

分類 構成成分
間質成分 膠原線維 コラーゲン
弾性繊維 エラスチン
基質 糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン
細胞成分 線維芽細胞

主成分である間質成分は、大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞成分としてはこれらを産生する線維芽細胞がその間に散在しています[4a][5a]

細胞間を満たす無定形成分である基質は、親水性が強く水分量の調整、水溶性物質の組織への浸透・拡散に重要な役割を果たすとともにコラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより皮膚の柔軟性を保持しています[4b][5b]

この基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されており、グリコサミノグリカンとしてはヒアルロン酸とデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)が多いのが特徴です[6]

ヒアルロン酸は、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの二糖単位の繰り返しで構成されていることから、アセチルグルコサミンは主にヒアルロン酸の構成成分として存在しています[7]

また、ヒアルロン酸は表皮においても細胞間に分布しており、上層に上がるほど角化によって低分子化するとともにヒアルロン酸量が増加し、ゲル状を示し細胞を支えるとともに酸素、イオン、栄養成分、生理活性成分、代謝老廃物などの移動や拡散に寄与していると考えられています[8a][9]

さらに、角層にも表皮層(角層より下層)とほぼ同程度のヒアルロン酸量が移行することが知られており、角層の水分環境に関わることで保湿性が高まる可能性や細胞間脂質との相互作用の可能性などが考えられますが、現時点では明確な役割は明らかにされていません(みつかりしだい追補します)[8b]

1.5. 皮膚における浸透性

2006年に焼津水産化学工業によって報告されたヒト三次元培養皮膚モデルを用いたアセチルグルコサミンの皮膚浸透性検証によると、

三次元培養ヒト皮膚モデルの表面に0.1%アセチルグルコサミンのサンプル200μLを添加し、26時間後までの透過量を測定し、同様の条件でヒアルロン酸を添加した場合と比較したところ、以下のグラフのように、

アセチルグルコサミンの皮膚浸透性

アセチルグルコサミンは培養開始後から著しく速い皮膚透過速度をもち、8時間まで直線的に透過量が増加することが確認されたのに対して、ヒアルロン酸はほとんど透過量が変化せず、培養26時間後でもアセチルグルコサミンの15%程度の透過量に留まった。

このような検証結果が明らかにされており[10a]、アセチルグルコサミンに高い皮膚浸透性が認められています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品およびに配合される場合は、

  • 表皮ヒアルロン酸産生促進による細胞賦活作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、ファンデーション製品、マスク製品、化粧下地製品、リップケア製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 表皮ヒアルロン酸産生促進による細胞賦活作用

表皮ヒアルロン酸産生促進による細胞賦活作用に関しては、まず前提知識としてターンオーバーの仕組みと表皮におけるヒアルロン酸の役割について解説します。

皮膚は大きく最外層の表皮と表皮を支える真皮に分かれており、ターンオーバーについては以下の表皮の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)のメカニズム

ターンオーバー(turnover)とは、血液やリンパなどから栄養素や調節因子などの制御を受けながら、表皮最下層である基底層で生成された角化細胞(表皮細胞:ケラチノサイト)がその次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かって押し上げられるとともに分化していき、最後はケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまった後に角片(∗2)として剥がれ落ちる表皮の新陳代謝のことをいい、正常なターンオーバーによって皮膚の新鮮さおよび健常性が保持されています[11][12]

∗2 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

次に、表皮においてヒアルロン酸は、密接に隣接した細胞間に網目状に高濃度で存在することが確認されており、表皮細胞間において増殖・分化・移動・接着といった基本的な細胞機能と密接な関係があり、かつ下層細胞間の細胞外空間維持、上層の細胞への栄養供給、老廃物の排出促進などの機能が明らかにされています[13a][14]

一方で、加齢にともなう表皮ヒアルロン酸の減少は皮膚機能の低下に関与すると考えられています[13b]

このような背景から、表皮ヒアルロン酸の産生を促進することは、健常な皮膚の維持において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2006年に焼津水産化学工業によって報告されたアセチルグルコサミンの表皮ヒアルロン酸への影響検証によると、

– in vitro:ヒアルロン酸産生促進作用 –

培養正常ヒト表皮角化細胞に各濃度のアセチルグルコサミンを添加し、様々な処理後に培養上清から得られたヒアルロン酸量を測定したところ、以下のグラフのように、

アセチルグルコサミンの表皮ヒアルロン酸への影響

アセチルグルコサミン添加時のヒアルロン酸量は、0.044%(2mM)および0.11%(5mM)添加時において対照と比較して有意(p<0.05)な産生量の増加を示した。

このような検証結果が明らかにされており[10b]、アセチルグルコサミンに表皮ヒアルロン酸産生促進作用が認められています。

次に、2009年に米国のエスティローダーリサーチ研究所によって報告されたアセチルグルコサミンのヒト皮膚への有用性検証によると、

– ヒト使用試験 –

45名の女性被検者(21-65歳)の右手に1%アセチルグルコサミン配合製剤を1日2回4週間にわたって塗布し、塗布2および4週間後に落屑量を測定し、未塗布である左手と比較したところ、以下の表のように、

試料 落屑減少率(%)
2週間 4週間
アセチルグルコサミン 38.8 38.0
プラセボ 6.0 -29.9

1%アセチルグルコサミン配合製剤塗布部位は、2および4週間後で39および38%の落屑量減少を示した。

次に、同試験において角層水分量(∗3)を測定し、未塗布である左手と比較したところ、以下の表のように、

∗3 皮膚水分量と皮膚表面の静電容量は相関しており、皮膚水分量の測定は皮膚表面の静電容量を測定することで行われます。

試料 静電容量値
塗布前 2週間後 4週間後
アセチルグルコサミン 145 131 131
未塗布 159 125 116

1%アセチルグルコサミン配合製剤塗布部位は、2および4週間後で対照と比較してそれぞれ12および18%の水分量の増加を示し、4週間後において有意となったことが確認された。

このような検証結果が明らかにされており[15]、アセチルグルコサミンに落屑量の減少および皮膚水分量の増加が認められています。

アセチルグルコサミンの皮膚水分量の増加は、即時的な効果ではなく、4週間かけて有意な増加となることから、保湿成分として働くというよりは、表皮のヒアルロン酸産生促進により表皮機能を賦活したことによるものだと推測されます。

また、2および4週間後に落屑量が減少したことも表皮の機能を正常化する賦活作用によるものであるという推測を裏付けています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2020-2022年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

アセチルグルコサミンの配合製品数と配合量の調査結果(2020-2022年)

4. 安全性評価

アセチルグルコサミンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、非刺激性となるように配合されている場合かつ通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[16a]によると、

  • [ヒト試験] 12名の被検者に2%アセチルグルコサミンを含むアイクリームを対象に21日間皮膚累積刺激性試験を実施したところ、皮膚累積刺激スコアは0-4のスケールで0.34であり、この試験製剤は軽度の皮膚累積刺激剤であった(Anonymous,2006)
  • [ヒト試験] 108名の被検者に0.005%アセチルグルコサミンを含むマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった(Anonymous,2018)
  • [ヒト試験] 105名の被検者に2%アセチルグルコサミンを含むリキッドファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった(TKL Research,2011)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚刺激性については、皮膚累積刺激性試験においてわずかな刺激が報告されているため、一般に非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[16b]によると、

  • [in vitro試験] 畜牛の眼球から摘出した角膜を用いて、角膜表面に20%アセチルグルコサミンを含む生理食塩水を処理した後、角膜の濁度ならびに透過性の変化量を定量的に測定したところ(BCOP法)、この試験製剤は眼刺激剤ではないと予測された(European Chemicals Agency,2020)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「アセチルグルコサミン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,134.
  2. ab有機合成化学協会(1985)「N-アセチルグルコサミン」有機化合物辞典,27-28.
  3. 大木 道則, 他(1989)「N-アセチル-D-グルコサミン」化学大辞典,31-32.
  4. ab朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  5. ab清水 宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  6. 大塚 藤男(2011)「真皮」皮膚科学 第9版,32-44.
  7. 後藤 真(1995)「ヒアルロン酸の生理的役割と疾患」炎症(15)(2),105-113. DOI:10.2492/jsir1981.15.105.
  8. ab酒井 進吾・佐用 哲也(2000)「表皮ヒアルロン酸代謝制御研究と角層ヒアルロン酸の発見」Fragrance Journal臨時増刊(17),48-55.
  9. 井上 紳太郎(2009)「表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明」グルコサミン研究(5),4-10.
  10. ab久保村 大樹・又平 芳春(2006)「N-アセチルグルコサミンの美肌効果」Fragrance Journal(34)(6),78-81.
  11. 朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  12. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  13. ab佐用 哲也(2013)「表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明」東京薬科大学(323). DOI:10.15072/00000011.
  14. 井上 紳太郎(2009)「皮膚ヒアルロン酸の不思議」グルコサミン研究(5),4-10.
  15. T. Mammone, et al(2009)「The Effect of N-Acetyl-Glucosamine on Stratum Corneum Desquamation and Water Content in Human Skin」Journal of Cosmetic Science,423-428.
  16. abW.F. Bergfeld, et al(2022)「Safety Assessment of Glucosamine Ingredients as Used in Cosmetics(∗5)」, 2022年8月2日アクセス.
    ∗5 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。

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