ニンニク根エキスとは…成分効果と毒性を解説






・ニンニク根エキス
[医薬部外品表示名称]
・ニンニクエキス
ユリ科植物ニンニク(学名:Allium sativum 英名:Garlic)の鱗茎から水、エタノール、BG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。
ニンニク根エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
などで構成されています(文献1:2006)。
ニンニクは、エジプト、中国、インドでは有史以前から栽培されており、紀元前2500年ごろのエジプトではピラミッドの建設に従事させられた奴隷にスタミナ源としてニンニクが供給されたことが記録に残されています。
その後ニンニクは、古代ギリシア・ローマ時代を経てヨーロッパ全土へ広がり、またイスラムから中国、インドへと東方にも伝えられ、アーユルヴェーダや「神農本草経」にもニンニクの記述がみられます(文献2:2016)。
またニンニクは数千年にわたって魔女や悪霊などの恐ろしい闇の力から守ってくれる魔除けとして使われ、日本でも無病息災を願い、邪気を払うため門口に掲げる風習がありました(文献3:2018)。
ニンニクの効能は、循環器の病気の予防とその強力な抗菌作用や抗酸化作用にまとめることができます。
ニンニクはそのままでは無臭で、砕くと特有の刺激臭を発しますが、これは組織中の含硫アミノ酸であるアリインが酵素のアリナーゼの作用を受けて刺激臭のあるアリシンに変化するためです(文献2:2016)。
1990年にNCI(米国国立がん研究所)が実施したデザイナーフードプログラムでは、がん予防効果が期待される食物のひとつにニンニクが選ばれています。
化粧品に配合される場合は、
- 細胞賦活作用
- 抗菌作用
- 角質水分量増加による保湿作用
- 血行促進作用
- アトピー性皮膚炎改善による抗アレルギー作用
これらの目的で、スキンケア化粧品、頭皮ケア製品、ヘアケア製品、アイメイクアップ製品、シート&マスク製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006)。
角質水分量増加による保湿作用および血行促進作用
角質水分量増加による保湿作用および血行促進作用に関しては、1990年に徳島市医療法人清和会協立病院によって報告されたニンニクB1エキス配合浴用剤のアトピー性皮膚炎に及ぼす影響の検証によると、
健常者と比較してアトピー性皮膚炎を有する小児患者の皮膚保水能は有意な低下が明らかにされています。
次に、ニンニクB₁エキスの影響を評価するために、ニンニクB₁エキスが溶解した温浴にアトピー性皮膚炎を有する小児患者を4週間にわたって毎日入浴してもらった後、ニンニクB₁エキスを溶解させていない単純な温浴に2週間入浴してもらったところ、この治療はアトピー性皮膚炎で低下した保水能力および臨床所見の改善を誘導した。
この結果は、皮膚表面の水和能力および抹消血循環の改善によってアトピー性皮膚炎患者の治療におけるこのアプローチの有用性を裏付けた。
このような検証結果が明らかにされており(文献4:1990)、ニンニクエキスには皮膚表面の保水機能および抹消血循環の改善作用が示唆され、結果的にアトピー性皮膚炎の改善による抗アレルギー作用が示唆されています。
アトピー性皮膚炎改善による抗アレルギー作用
アトピー性皮膚炎改善による抗アレルギー作用に関しては、上記の保湿作用および血行促進作用でも示唆されていますが、さらに1994年に大阪医科大学皮膚科によって報告されたアトピー性皮膚炎におけるニンニクB₁エキス含有石けんの使用試験によると、
アトピー性皮膚炎を有する83人の患者にニンニクB₁エキス含有石けんを入浴時の皮膚洗浄で2週間以上使用してもらい、病変に与える影響を評価したところ、有効性の判定は著効8.4%、有効42.2%、やや有効43.4%、無効6.0%であった。
この結果は、入浴・洗浄による皮膚の清潔とニンニクB₁エキスの薬理作用がアトピー性皮膚炎の増悪因子を軽減して病変の改善をもたらしたものと考えられた。
このような検証結果が明らかにされており(文献5:1994)、ニンニクエキスにはアトピー性皮膚炎による抗アレルギー作用が示唆されています。
複合植物エキスとしてのニンニク根エキス
ファルコレックスBX32という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、
- ニンニク根エキス
- ローマカミツレ花エキス
- ゴボウ根エキス
- アルニカ花エキス
- セイヨウキズタ葉/茎エキス
- オドリコソウ花/葉/茎エキス
- オランダガラシ葉/茎エキス
- セイヨウアカマツ球果エキス
- ローズマリー葉エキス
効果および配合目的は、
- 抗菌(フケ菌)
- 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)
とされており、植物エキスの相乗効果によって頭皮を多角的に健やかにするもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX32であると推測することができます。
ニンニク根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
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ニンニク根エキスは細胞賦活成分、抗菌成分、保湿成分、血行促進成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:細胞賦活成分 抗菌成分 保湿成分 血行促進成分 抗炎症成分
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文献一覧:
- 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,379.
- 林真一郎(2016)「ガーリック」メディカルハーブの事典 改定新版,38-39.
- ジャパンハーブソサエティー(2018)「ニンニク」ハーブのすべてがわかる事典,24.
- 菊池 誠(1990)「ニンニクB₁エキスの浴用剤としての有用性研究—アトピー性皮膚炎への臨床応用—」日本香粧品学会誌(14)(4),217.
- 長谷川 義博, 他(1994)「アトピー性皮膚炎におけるニンニクB₁エキス含有石鹸の使用経験」皮膚(36)(3),379-383.
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