アミノ酪酸とは…成分効果と毒性を解説

細胞賦活 バリア改善 保湿
アミノ酪酸
[化粧品成分表示名称]
・アミノ酪酸

[医薬部外品表示名称]
・γ-アミノ酪酸

[慣用名]
・GABA

化学構造的にカルボキシル基(-COOH)とアミノ基(-NH2をもつ化学式 H2NCH2CH2CH2COOH の双性イオン化合物(∗1)であり、分子量103.12の水溶性アミノ酸です(文献1:1994)

∗1 双性イオン化合物とは、両性イオン化合物とも呼び、一つの分子内にプラス電荷とマイナス電荷の両方を持ち、全体としては中性イオンを示す化合物を指します。

アミノ酪酸は、アミノ基(-NH2のつく位置によってα-、β-、γ-の3種類の構造異性体が存在しますが、一般的に食品(健康食品含む)や化粧品分野において用いられるアミノ酪酸は「γ-アミノ酪酸」であり、γ-アミノ酪酸は英名の「Gamma-Amino Butylic Acid」の頭文字をとって一般的に「GABA(ギャバ)」として広く知られています。

γ-アミノ酪酸(GABA)は、動植物から微生物まで自然界に幅広く存在するアミノ酸ですが、タンパク質を構成するアミノ酸ではなく、主に中枢神経系において抑制性の神経伝達物質として機能しています(文献2:1958;文献3:1967)

ヒト皮膚においては、以下の真皮の構造図をみるとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

真皮に存在するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は、細胞外マトリックスを構成し水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しており、これらは同じく真皮に点在する線維芽細胞から産生されるため、線維芽細胞が十分に点在し活発に働くことで水分保持および皮膚のハリ・弾力性が維持されています(文献4:2002)

γ-アミノ酪酸は、この真皮に点在する線維芽細胞においてグルタミン酸脱炭酸酵素であるGAD67を介して合成され(文献5:2006;文献6:2012)、細胞増殖作用を示すことが報告されています(文献7:1987)

主な用途としては、医薬品分野において脳代謝促進剤(精神神経系用薬)として、健康食品分野においては2004年に血圧を正常化させる特定保険用食品成分として承認されており、菓子類やドリンク類など様々な食品・飲料に使用されています(文献8:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、シート&マスク製品などに配合されています。

表皮ヒアルロン酸産生促進による保湿作用

表皮ヒアルロン酸産生促進による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるヒアルロン酸について解説しておきます。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

ヒアルロン酸は、結合組織の基質成分として存在する酸性ムコ多糖類の一種で、組織内では水と強く親和してゲル状をなし細胞間または組織化間を埋める接合物質として機能しています(文献9:2002)

一般的に皮膚におけるヒアルロン酸は、真皮においてコラーゲンやエラスチンで構成された細胞外マトリックスの隙間を埋めるゲルとして細胞を保持し、皮膚の柔軟性を保つ役割が大部分ですが、表皮においても表皮細胞間の隙間に存在し、細胞間隙に水を保持する水路のような役割を担っていることが知られています(文献5:2006)

2007年にクラシエホームプロダクツによって報告されたアミノ酪酸の表皮角化細胞への影響検証によると、

培養ヒト表皮角化細胞に各濃度のアミノ酪酸を添加し、3日間培養後にヒアルロン酸濃度を測定したところ、以下のグラフのように、

アミノ酪酸によるヒアルロン酸合成促進作用

アミノ酪酸の添加によってヒアルロン酸産生量は有意に促進されたことが確認された。

アミノ酪酸がヒアルロン酸産生に対して効果を示す細胞環境濃度は少なくとも0.38mg/Lであり、表皮角化細胞の水分保持にも関与していることを見出した。

そこで、10人の被検者に0.1%アミノ酪酸配合乳化製剤含浸マスクおよびアミノ酪酸未配合乳化製剤含浸マスクを3日に1回、1ヶ月にわたって全10回ハーフマスク適用し、適用終了後に水分保持量を測定したところ、以下のグラフのように、

1ヶ月連ヒト連用におけるアミノ酪酸配合化粧品の角層水分量への影響

アミノ酪酸配合製剤は、未配合製剤と比較して表皮水分量が有意に改善していることから、実際の化粧品としても有効であることを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2012;文献10:2007)、アミノ酪酸に表皮ヒアルロン酸産生促進による保湿作用が認められています。

インボルクリン産生促進作用によるバリア機能改善作用

インボルクリン産生促進作用によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識としてインボルクリンとバリア機能の関係について解説します。

以下の表皮角質層の拡大図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚における角質の構造

角質層は、角質と細胞間脂質で構成されており、角質の隙間を細胞間脂質が敷き詰めることで角質層は安定し、また外界物質の侵入を防ぐと同時に角質層の水分蒸発を防ぎ、バリア機能として働きます。

角質層を形成する角質細胞は、表皮ケラチノサイト(角化細胞)の最終産物であり、顆粒層で細胞にアポトーシス(∗2)を起こさせるタンパク質分解酵素であるカスパーゼによってアポトーシスを迎えた死細胞です。

∗2 あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

角質細胞の一番外側には細胞膜が存在し、細胞膜の内側には周辺帯(cornified cell envelope:CE)と呼ばれる極めて強靭な裏打ち構造の不溶性タンパクの膜が形成されており、角質細胞を包んでいます(文献11:2011)

インボルクリンとは、表皮の有棘層から顆粒層で発現し、最終分化の角層において細胞膜の周辺帯として架橋結合される細胞膜裏打ちタンパクのひとつであり、周辺帯形成最終段階でロリクリンが組み込まれ、完成された周辺帯と細胞間脂質の腫瘍構成成分であるセラミドが結合することによってバリア機能としての役割を果たしています。

表皮細胞の成熟にともなってつくられることから、ターンオーバーの指標としてよく用いられています。

このような表皮の構造およびメカニズムから、インボルクリンの産生量の増加は皮膚バリア機能の向上・健常化において重要であると考えられています。

2007年にクラシエホームプロダクツによって報告されたアミノ酪酸のヒト表皮細胞への影響の検証によると、

培養ヒト表皮角化細胞に各濃度のアミノ酪酸を添加し、48時間培養後に細胞表面に発現したインボルクリン産生量を定量したところ、以下のグラフのように、

アミノ酪酸(GABA)によるインボルクリン産生作用

アミノ酪酸の添加によってインボルクリンの産生は有意に促進することを確認した。

ただし、ヒアルロン酸が有意に促進される3.4mg/L濃度においてインボルクリン産生量は微増(108.7)であり、有意差は認められなかった。

そこで、10人の被検者に0.1%アミノ酪酸配合乳化製剤含浸マスクおよびアミノ酪酸未配合乳化製剤含浸マスクを3日に1回、1ヶ月にわたって全10回ハーフマスク適用し、適用終了後に水分保持量を測定したところ、以下のグラフのように、

1ヶ月ヒト連用におけるアミノ酪酸配合化粧品の角層水分蒸散量(TEWL)への影響

アミノ酪酸配合製剤は、未配合製剤と比較して表皮水分蒸散量が有意に改善していることから、実際の化粧品としても有効であることを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2012;文献10:2007)、アミノ酪酸にインボルクリン産生促進によるバリア改善作用が認められています。

表皮細胞増殖作用

表皮細胞増殖作用に関しては、2007年にクラシエホームプロダクツによって報告されたアミノ酪酸のヒト表皮角化細胞への影響の検証によると、

培養ヒト表皮角化細胞に各濃度のアミノ酪酸を添加し、培養後に表皮角化細胞量を測定したところ、以下のグラフのように、

アミノ酪酸によるヒト表皮細胞増殖作用

アミノ酪酸の添加によって表皮細胞の有意な増加が確認できた。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2012;文献10:2007)、アミノ酪酸にヒト表皮角化細胞増殖作用が認められています。

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アミノ酪酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

アミノ酪酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬品および食品にも応用されており、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全データがみあたらないため、データ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アミノ酪酸は細胞賦活成分、保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:細胞賦活成分 保湿成分 バリア改善成分

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文献一覧:

  1. 大木 道則, 他(1994)「アミノ酪酸」化学辞典,57.
  2. T. Hayashi(1958)「Inhibition and excitation due to gamma-aminobutyric acid in the central nervous system.」Nature(182)(4642),1076-1077.
  3. K. Krnjević, et al(1967)「The action of gamma-aminobutyric acid on cortical neurones.」Experimental Brain Research(3)(4),320-336.
  4. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30-31.
  5. 伊藤 賢一(2006)「GABA合成酵素(GAD)を活性化するビルベリーエキスの抗老化作用」Fregrance Journal(34)(8),48-53.
  6. クラシエホームプロダクツ株式会社(2012)「表皮角化細胞におけるヒアルロン酸及びインボルクリンの産生促進剤」特開2012-144566.
  7. A. Scutt, et al(1987)「Stimulation of human fibroblast collagen synthesis in vitro by γ-aminobutyric acid.」Biochemical Pharmacology(36)(8),1333-1335.
  8. 鈴木 洋(2011)「ギャバ」カラー版健康食品・サプリメントの事典,237.
  9. 朝田 康夫(2002)「ヒアルロン酸とは何か」美容皮膚科学事典,113-114.
  10. クラシエホームプロダクツ株式会社(2007)「GABA の表皮への作用を確認」, <http://www.kracie.co.jp/release/pdf/071029_gaba1.pdf> 2018年3月11日アクセス.
  11. 清水 宏(2011)「周辺帯」あたらしい皮膚科学第2版,9.

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