炭酸Caの基本情報・配合目的・安全性

炭酸Ca

化粧品表示名 炭酸Ca
医薬部外品表示名 炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム
部外品表示別名 沈降炭酸カルシウム
部外品表示簡略名 重質炭酸Ca、軽質炭酸Ca、沈降炭酸Ca
INCI名 Calcium Carbonate
配合目的 増量・希釈・賦形 など

医薬部外品表示名「重質炭酸カルシウム」の簡略名が「重質炭酸Ca」であり、医薬部外品表示名「軽質炭酸カルシウム」の別名が「沈降炭酸カルシウム」、簡略名が「軽質炭酸Ca、沈降炭酸Ca」となります。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される炭酸のカルシウム塩体質顔料です[1]

炭酸Ca

医薬部外品表示名については、

医薬部外品表示名 本質
炭酸カルシウム 乾燥したものは定量するとき、炭酸カルシウム(CaCO3)98.5%以上含む
重質炭酸カルシウム 炭酸カルシウムの原石を粉砕して製したものであり、乾燥したものは定量するとき、炭酸カルシウム(CaCO3)97.0%以上含む
形質炭酸カルシウム 化学的方法により製した炭酸カルシウムであり、乾燥したものは定量するとき、炭酸カルシウム(CaCO3)96.0%以上含む

このように区別され、化粧品表示名としてはいずれも「炭酸Ca」と表示されます。

1.2. 物性・性状

炭酸Caの物性・性状は、

状態 白色の粉末または結晶
溶解性 水、エタノールに不溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 分布

炭酸Caは、自然界において主に石灰岩として大規模に産するほか、卵殻、貝殻、サンゴなどの主要な構成成分としても存在しています[4][5a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

炭酸Caの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 一般に合成品ではなく、食品添加物の規格に合う炭酸カルシウムを含有する石灰石を清浄化した粉末がカルシウムの補填や強化目的で様々な食品に用いられているほか、天然系のガム質や合成系のガム用樹脂類の改質目的にも用いられています[5b]
医薬品 基剤、結合、コーティング、賦形目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤に用いられます[3b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 増量・希釈・賦形

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ネイル製品、化粧下地製品、日焼け止め製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 増量・希釈・賦形

増量・希釈・賦形に関しては、まず前提知識としてパウダー化粧品における着色剤の役割について解説します。

パウダー化粧品において着色剤は、美肌に見せるために肌の色を好ましい色に調整し、肌のムラやくすみ、シミなどの欠点を隠す役割を担っていますが、着色顔料だけでは肌の色は好みどおりでかつ肌の欠点も隠れたとしても人工的で不自然な仕上がりになり、とても美肌とはよべない状態となり、また肌への伸びや滑り性も悪いものとなってしまうことが知られています[6a]

そこで、着色剤の色を薄め、かつ塗りやすく均一で適切な仕上がりにするために体質顔料を混合することが、パウダー化粧品には不可欠となっています[6b]

炭酸Caは、多孔質(∗1)の白色粉末であり、吸水量および吸油量に優れ、また滑りがよくサラサラした質感を付与することから、着色剤の希釈剤や増量剤としてメイクアップ製品、化粧下地製品、ネイル製品、コンシーラー製品などに汎用されています[7a][8]

∗1 多孔質とは、細かい穴(孔)がたくさん空いた構造になっている性質のことです。

また、炭酸Caの配合により粉体の成形性が向上することから、賦形目的でプレストパウダーなどに使用されています[7b]

3. 混合原料としての配合目的

炭酸Caは、混合原料が開発されており、炭酸Caと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 かるまる SCS-M5
構成成分 炭酸Caメタリン酸Na
特徴 高いソフトフォーカス効果とプレス成型性を兼備した球状粉末

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

炭酸Caの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

5. 安全性評価

炭酸Caの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
    (重質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウム)
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2b]によると、

  • [in vitro試験] 3次元ヒト表皮モデルに炭酸CaをCDS(腐食性化学物質が細胞バリアを通過すると色変化を誘発する液体化学検出システム)処理したところ、炭酸Caは非腐食性に分類された(National Toxicology Program,1999)
  • [動物試験] ウサギの無傷の皮膚に炭酸Caを適用し、適用3分後ならびに1および4時間後に腐食性を評価したところ、この試験物質は非腐食性に分類された(National Toxicology Program,1999)
  • [in vitro試験] 4匹のウサギ3群それぞれの外耳に5%,10%および15%炭酸Ca水溶液25μLを3日間毎日適用し、OECD429テストガイドラインに基づいて皮膚感作性を評価したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(European Chenmicals Agency,2016)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2c]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に炭酸Ca0.1mLを点眼し、点眼後にDraize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、点眼1時間後ですべての処置眼で最小限の結膜刺激およびイリジウム炎症がみられた。結膜刺激は点眼24および48時間までみられ、すべての反応は72時間後には消失した。この試験物質はウサギの眼に非刺激剤であると結論付けられた(European Chenmicals Agency,2016)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「炭酸Ca」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,637.
  2. abcW. Johnson, et al(2016)「Safety Assessment of Carbonate Salts as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(41)(1_suppl),80S-105S. DOI:10.1177/10915818221087202.
  3. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「炭酸カルシウム」医薬品添加物事典2021,375-376.
  4. 大木 道則, 他(1989)「炭酸カルシウム」化学大辞典,1368.
  5. ab樋口 彰, 他(2019)「炭酸カルシウム」食品添加物事典 新訂第二版,218.
  6. ab柴田 雅史(2021)「無色の光の美しさと感触調整 – 体質顔料」美しさをつくる色材工学,180-199.
  7. abSensient Cosmetic Technologies(2011)「Carbomat」Technical Data Sheet.
  8. 宇山 侊男, 他(2020)「炭酸Ca」化粧品成分ガイド 第7版,225.

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