酸化スズの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 酸化スズ |
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慣用名 | 二酸化スズ |
INCI名 | Tin Oxide |
配合目的 | 増量 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるスズ(元素記号:Sn)の酸化物(無機化合物)です[1]。
2. 化粧品としての配合目的
- 増量
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品、ネイル製品、洗顔石鹸、入浴剤などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 増量
増量に関しては、酸化スズはルチル型酸化チタンの製造過程において添加することが必要な白色顔料であり[2]、肌に有害な影響があるわけではないため、コストをかけて無理に取り除かずにそのまま原料の中に残っていることが多く、このような製造過程を経た酸化チタンが配合された製品には全成分一覧に酸化スズも表示されます[3]。
このような背景から、化粧品においてはとくに目的をもって配合される成分ではありませんが、分類の都合上増量剤に分類しています。
3. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)。
∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
4. 安全性評価
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4a]によると、
- [ヒト試験] 111名の被検者に0.3%酸化スズを含むアイシャドー粉末0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚反応は観察されず、この製品は皮膚刺激剤およびアレルギー性接触感作剤ではなかった(Consumer Product Testing Co,2012)
- [ヒト試験] 103名の患者に0.5%酸化スズを含む口紅を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの患者においても皮膚反応は認められず、この製品は皮膚刺激またはアレルギー接触感作を誘発しないと結論づけられた(Consumer Product Testing Co,2012)
- [ヒト試験] 108名の患者に0.35%酸化スズを含むリップグロスを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの患者においても皮膚反応は認められず、この製品は皮膚刺激またはアレルギー接触感作を引き起こす臨床的に有意な可能性を示さなかった(Clinical Research laboratories,2012)
- [ヒト試験] 209名の患者に1.3%酸化スズを含むアイシャドーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験製剤は皮膚一次刺激、皮膚累積刺激およびアレルギー接触感作の可能性を示唆していないと結論付けられた(Consumer Product Testing Co,2012)
このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
4.2. 眼刺激性
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[4b]によると、
- [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて、1.11%酸化スズを含むアイシャドーを処理したところ(HET-CAM法)、この試験物質は眼刺激を示さなかった(MB Research Laboratories,2012)
このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。
5. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2013)「酸化スズ」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,450.
- ⌃柴田 雅史(2021)「白色の顔料-酸化チタン」美しさをつくる色材工学 -化粧品の開発からもっときれいになる使い方まで-,172-175.
- ⌃宇山 侊男, 他(2020)「酸化スズ」化粧品成分ガイド 第7版,237.
- ⌃abW. Johnson(2015)「Safety Assessment of Tin(IV) Oxide as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(33)(4_Suppl),40S-46S. DOI:10.1177/1091581814559309.