炭酸Mgの基本情報・配合目的・安全性

炭酸Mg

化粧品表示名 炭酸Mg
医薬部外品表示名 重質炭酸マグネシウム、軽質炭酸マグネシウム
部外品表示簡略名 重質炭酸Mg、軽質炭酸Mg
INCI名 Magnesium Carbonate
配合目的 増量・希釈・賦形 など

医薬部外品表示名「重質炭酸マグネシウム」の簡略名が「重質炭酸Mg」であり、医薬部外品表示名「軽質炭酸マグネシウム」の簡略名が「軽質炭酸Mg」となります。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される塩基性炭酸マグネシウム脱水物または正炭酸マグネシウム含水物体質顔料です[1]

炭酸Mg

医薬部外品表示名については、

医薬部外品表示名 本質
重質炭酸マグネシウム 含水塩基性炭酸マグネシウムまたは含水正炭酸マグネシウムからなり、酸化マグネシウム(MgO)40.0-43.5%を含む
形質炭酸マグネシウム 含水塩基性炭酸マグネシウムまたは含水正炭酸マグネシウムからなり、定量するとき、酸化マグネシウム(MgO)40.0-44.0%を含む

このように区別され、化粧品表示名としてはいずれも「炭酸Mg」と表示されます。

1.2. 物性・性状

炭酸Mgの物性・性状は、

状態 白色の粉末
溶解性 水、エタノールに不溶

このように報告されています[2a]

1.3. 分布

炭酸Mgは、自然界において主に菱苦土鉱(りょうくどこう:magnesite)や苦灰石(くかいせき:dolomite)の主要構成成分として存在しています[3][4a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

炭酸Mgの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 必須ミネラルであるマグネシウムの補填や強化目的で様々な食品に用いられているほか、白色の嵩高い粉末であることから膨張剤として製造過程に用いられています[4b]
医薬品 安定・安定化、潤沢、吸着、コーティング、賦形、崩壊目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤に用いられます[2b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 増量・希釈・賦形

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、コンシーラー製品、マスク製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 増量・希釈・賦形

増量・希釈・賦形に関しては、まず前提知識としてパウダー化粧品における着色剤の役割について解説します。

パウダー化粧品において着色剤は、美肌に見せるために肌の色を好ましい色に調整し、肌のムラやくすみ、シミなどの欠点を隠す役割を担っていますが、着色顔料だけでは肌の色は好みどおりでかつ肌の欠点も隠れたとしても人工的で不自然な仕上がりになり、とても美肌とはよべない状態となり、また肌への伸びや滑り性も悪いものとなってしまうことが知られています[5a]

そこで、着色剤の色を薄め、かつ塗りやすく均一で適切な仕上がりにするために体質顔料を混合することが、パウダー化粧品には不可欠となっています[5b]

炭酸Mgは、多孔質(∗1)の白色粉末であり、吸油力が炭酸Caよりも高く、かつなめらかな質感を有することから、皮脂などによる化粧崩れ防止による化粧持続性を高めた着色剤の希釈剤や増量剤としてメイクアップ製品、化粧下地製品、コンシーラー製品、マスク製品などに使用されています[6][7]

∗1 多孔質とは、細かい穴(孔)がたくさん空いた構造になっている性質のことです。

3. 混合原料としての配合目的

炭酸Mgは、混合原料が開発されており、炭酸Mgと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Natrasorb HFB
構成成分 オクテニルコハク酸デンプンAlアクリレーツコポリマー炭酸Mg
特徴 吸油性を有する天然および合成粉末の混合により吸油性を高めた疎水性デンプン粉末

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

炭酸Mgの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

5. 安全性評価

炭酸Mgの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物の指定添加物リスト、日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8]によると、

  • [動物試験] 2匹のウサギの片眼に10%炭酸Mg水溶液(pH9.9)10mLを点眼し、眼はすすがず、点眼後に眼刺激性を評価したところ、点眼1時間後で中程度の結膜刺激、24および48時間後で最小の結膜刺激がみられたが、点眼72時間後ではすべて消失し、角膜や虹彩には反応はみられず、この試験物質はウサギの眼に非刺激剤であると結論付けられた(European Chenmicals Agency,2016)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「炭酸Mg」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,638.
  2. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「炭酸マグネシウム」医薬品添加物事典2021,380.
  3. 大木 道則, 他(1989)「炭酸マグネシウム」化学大辞典,1372.
  4. ab樋口 彰, 他(2019)「炭酸マグネシウム」食品添加物事典 新訂第二版,220.
  5. ab柴田 雅史(2021)「無色の光の美しさと感触調整 – 体質顔料」美しさをつくる色材工学,180-199.
  6. Disruptive Materials AB(2021)「Upsalite」Technical Data Sheet.
  7. 鈴木 一成(2012)「軽質炭酸マグネシウム」化粧品成分用語事典2012,540.
  8. W. Johnson, et al(2016)「Safety Assessment of Carbonate Salts as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(41)(1_suppl),80S-105S. DOI:10.1177/10915818221087202.

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