トウガラシ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

血行促進成分 温感剤 美白成分 抗老化成分 育毛剤
トウガラシ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・トウガラシ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・トウガラシチンキ

ナス科植物トウガラシ(学名:Capsicum annuum 英名:chile pepper)の果実からエタノールまたはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

エタノールで抽出したものはトウガラシチンキに該当し、ネガティブリスト該当成分となります。

トウガラシ果実エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 辛味成分:カプサイシン、ジヒドロカプサイシン
  • カロテノイド:カプサンチン、クリプトキサンチン、β-カロテン、ルテイン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2017)

トウガラシは南米の原産で、世界各地で栽培されており、日本には安土桃山時代(1573~1603年)のころにポルトガルから伝来し、現在でも香辛料として広く栽培されています。

トウガラシの果実には、辛味成分のカプサイシンなどが含まれ、皮膚刺激作用や健胃作用が認められています(文献3:2011)

またカロテノイドとして赤色色素成分のカプサンチンのほかクリプトキサンチン、β-カロテン、ルテインなどが含まれています(文献3:2011)

トウガラシは漢方薬ではなくオランダ医学の流れをひく薬草であり、家庭薬では外用薬や温湿布として神経痛、筋肉痛や凍瘡などに用いられ、また発毛刺激剤としても古くから用いられています(文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ボディ&dのハンドケア製品、リップケア製品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、育毛剤、入浴剤などに使用されます(文献1:2006;文献5:1993;文献6:1998;文献8:2010;文献10:2002)

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用

メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラノサイト内におけるメラニン生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

1993年にサントリーによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてマウスのB16メラノーマ細胞を用いてトウガラシ抽出物のメラニン生成抑制効果を検証したところ、以下の表のように(∗1)

∗1 白色化度とは、++(白色化度大)、+(白色化度中)、+-(やや白色化)、-(白色化せず)の4段階のメラニン生成抑制判定基準です。

トウガラシ抽出物濃度(μg/mL) 白色化度 細胞体積
100 ++ やや減少
50 ++ 変化なし
20 + 変化なし

トウガラシ抽出物は、20~50μg/mL濃度(細胞を減少させない範囲)において優れたメラニン生成抑制作用を示した。

この結果はトウガラシ抽出物が優れたメラニン生成抑制作用と高い安全性を兼ね備えた有用な美白成分であることを示すものである。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1993)、トウガラシ果実エキスにメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

作用メカニズムはこの技術情報では解明されていませんが、細胞毒性を示さずメラニン生成を抑制することからメラノサイト内でのメラニン生合成のいずれかのステップにおいて合成反応を阻害するものと予想されます。

また2010年に酒井 規雄によって公開された技術情報によると、

トウガラシ抽出物に血行改善による育毛作用があることを知り、水またはアルコールによって抽出した0.06%~0.13%トウガラシ抽出物水溶液を頭部に塗布した。

刺激を感じることはなく、また使用感もさっぱりしていたため毎日数回塗布し続けたところ、頭部にあった老人性色素斑がいつの間にか目立たなくなっていることがわかり、美白作用を有していることがわかった。

そこで20人の薄毛・ハゲの悩みをもつ被検者(30~80歳)に0.06%~0.13%トウガラシ抽出液を含む水溶液を1日1~5回、1回あたり男性でスプレー1~2回、女性で4~6回程度、頭全体にスプレーし指先で軽く擦り込んでなじませる手順で1~3ヶ月使用し続けてもらったところ、最も高濃度の0.13%トウガラシ抽出液を使用した場合でも刺激や炎症を気にする被検者はなく、老人性色素斑を有した被検者では平均して2.5ヶ月程度でシミが薄くなっていることがわかった。

これらの結果から、極めて低濃度のトウガラシの水またはアルコール抽出液のみでも発赤などの炎症を起こすことなく色素沈着抑制作用が示された。

なお、分析のため多量のトウガラシを用いた実験ではカプサイシンは検出されているが、低濃度での効果がどの成分または割合に起因しているかは現在わかっていない。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2010)、トウガラシ果実エキスに色素沈着抑制作用が認められています。

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとSCFおよびc-kitレセプターについて解説します。

メラニン生合成のメカニズムはすでにメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用のパートで解説していますが、重ねて解説しておきます。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をてみもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

SCFは肝細胞増殖因子であり、メラニン生合成のメカニズムでは情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつとして知られており、メラノサイトに存在するSCFの受容体であるc-kitレセプターに輸送され結合されることにより、肥満細胞が遊走、分化・増殖し、アトピー性皮膚炎が引き起こされたり、メラニン合成が活性化することが明らかになっています(文献11:1996)

2002年に花王によって公開された技術情報によると、

細胞表面上のc-kitレセプターに対するSCFの結合を特異的に阻害する天然物を探索したところ、カンゾウアスパラサスリネアリス、アセンヤク、ナギイカダシコンエンメイソウ、トウガラシ、ウコン、コンフリー、ノバラユリチャチョウジ、ツバキの抽出物にSCF結合阻害活性があることを見出した。

そこでヒト培養メラノサイトを用いたin vitro試験において各植物抽出物を1%濃度で添加し、SCF/c-kitの特異的結合量を測定したところ、以下の表のように、

植物 SCF結合阻害率(%)
カンゾウ 71.0
アスパラサスリネアリス 40.4
アセンヤク 34.1
ナギイカダ 31.5
シコン 29.1
エンメイソウ 27.4
トウガラシ 25.0
ウコン 20.2
コンフリー 17.3
ノバラ 17.0
ユリ 11.0
チャ 63.0
チョウジ 49.9
ツバキ 45.0

トウガラシ抽出物は、c-kitレセプターに対するSCFの結合阻害活性を有することが認められた。

また配合量は通常0.00001%~1%が好ましく、とくに0.0001%~0.1%が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:2002)、トウガラシ果実エキスにSCF結合阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

線維芽細胞増殖促進による抗老化作用

線維芽細胞増殖促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造における線維芽細胞の役割について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

真皮において細胞外マトリックスを構成するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は同じく真皮に点在する線維芽細胞から産生されるため、線維芽細胞が活発に働くことでこれらが正常につくられていることが皮膚のハリ・弾力維持において重要です(文献7:2002)

1998年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてトウガラシ抽出物の線維芽細胞増殖率を測定したところ、0.1%濃度の線維芽細胞増殖率を100%とした場合に1.0%濃度で120%の増殖率が示された。

この結果からトウガラシ抽出物は、線維芽細胞増殖促進作用を有することが確認できた。

また配合量は一般的に0.01%以上、好ましくは0.1%以上がよく、0.01%以下の配合量では十分な効果は期待できない。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1998)、トウガラシ果実エキスに線維芽細胞増殖促進による抗老化作用が認められています。

血行促進による育毛作用

血行促進による育毛作用に関しては、2010年に酒井 規雄によって公開された技術情報によると、

水またはアルコールによって抽出した0.06%~0.13%トウガラシ抽出物水溶液を自分の毛髪の薄くなった頭部に塗布した。

刺激を感じることはなく、また使用感もさっぱりしていたため毎日数回塗布し続けたところ、20日程度で見た目の感じが変わり、1ヶ月経過時には人からも声をかけられるようになり、発毛・育毛効果を実感した。

そこで20人の薄毛・ハゲの悩みをもつ被検者(30~80歳)に0.06%~0.13%トウガラシ抽出液を含む水溶液を1日1~5回、1回あたり男性でスプレー1~2回、女性で4~6回程度、頭全体にスプレーし指先で軽く擦り込んでなじませる手順で1~3ヶ月使用し続けてもらった。

その結果、最も高濃度の0.13%トウガラシ抽出液を使用した場合でも刺激や炎症を気にする被検者はなく、20人のうち19人は1ヶ月前後でなんらかの改善実感があり、残りの1人は改善実感を得るまでに2.5ヶ月を要した。

これらの検証を通じて、極めて低濃度のトウガラシの水またはアルコール抽出液のみでも頭部に発赤などの炎症を起こすことなく高い育毛効果が示された。

なお、分析のため多量のトウガラシを用いた実験ではカプサイシンは検出されているが、低濃度での効果がどの成分または割合に起因しているかは現在わかっていない。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2010)、トウガラシ果実エキスに血行促進による育毛作用が認められています。

また、トウガラシ果実エキスに塩化Naを併用(添加)することによりトウガラシ果実エキスの効果が体調にかかわらず安定・向上することが報告されています(文献9:2012)

トウガラシ果実エキスは、抽出溶媒がエタノールの場合トウガラシチンキに該当するため、ネガティブリスト該当成分であるとされており、以下のような配合基準となっています。

すべての化粧品 マメハンミョウエキス(カンタリスチンキ)、ショウキョウエキス(ショウキョウチンキ)、トウガラシエキス(トウガラシチンキ)、トウガラシ果実エキスの合計量として1.0g/100g

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トウガラシ果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

トウガラシ果実エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、定められた配合基準量以下および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献6:1998)によると、

  • [動物試験] 3匹の除毛したラットの背部に0.5%トウガラシ抽出物水溶液を塗布し、塗布24、48および72時間後に一次刺激性を紅斑および浮腫を指標として評価したところ、すべてのウサギにおいて紅斑および浮腫を認めず、陰性と判断された
  • [動物試験] 3匹の除毛したモルモットの側腹部に0.5%トウガラシ抽出物水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週間にわたって適用し、各週の最終日の翌日に紅斑および浮腫を指標として刺激性を評価したところ、すべてのウサギにおいて塗布後2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、陰性と判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激がないため、0.5%濃度において皮膚一次刺激性および累積刺激性刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
トウガラシ果実エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、トウガラシ果実エキスは■(∗2)となっていますが、これはネガティブリストに該当し、成分の特性上、皮膚刺激をともなうおそれがあるからだと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

トウガラシ果実エキスは血行促進成分、温冷感成分、美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:血行促進成分 温冷感成分 美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,377.
  2. 原島 広至(2017)「トウガラシ」生薬単 改訂第3版,56-57.
  3. 鈴木 洋(2011)「唐辛子(トウガラシ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,334-335.
  4. 鈴木 洋(2011)「唐辛子(トウガラシ)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,116.
  5. サントリーホールディングス株式会社(1993)「美白用化粧料組成物」特開平5-163135.
  6. 一丸ファルコス株式会社(1998)「植物抽出物含有線維芽細胞増殖促進剤」特開平10-45615.
  7. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30-31.
  8. 酒井 規雄(2010)「育毛剤及び化粧水」特開2010-241716.
  9. 酒井 規雄(2012)「トウガラシ抽出組成物」特開2012-077029.
  10. 花王株式会社(2002)「SCF結合阻害剤」特開2002-302451.
  11. N W Lukacs,et al(1996)「Stem cell factor (c-kit ligand) influences eosinophil recruitment and histamine levels in allergic airway inflammation.」The Journal of Immunology(156)(10),3945-3951.

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