ショウガ根茎エキスとは…成分効果と毒性を解説

血行促進成分 美白成分 抗老化成分 冷感剤 感触改良剤 育毛剤
ショウガ根茎エキス
[化粧品成分表示名称]
・ショウガ根茎エキス

[医薬部外品表示名称]
・ショウキョウチンキ、ショウキョウエキス

ショウガ科植物ショウガ(学名:Zingiber officinale 英名:Ginger)の根茎からエタノール、またはこれらの混液で抽出して得られるエキスです。

ショウガ根茎エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 辛味成分・精油:ショウガオール、ジンゲロール
  • 芳香成分・精油:ジンゲロン、ジンギベレン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2017)

ショウガは熱帯アジア原産で、日本にも古くに渡来し、食料(薬味)や香辛料として広く用いられています。

成分には辛味成分のジンゲロールやショウガオールなどが含まれ、解熱・鎮痛・鎮咳作用などが認められており、一般的にショウガオール類はジンゲロール類よりも解熱・鎮痛・鎮咳作用が強く、またジンゲロンは健胃作用が知られています(文献2:2017;文献3:2011)

民間療法としては、風邪をひいたときにショウガ湯などで現在でも使用され続けています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ボディ&dのハンドケア製品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、育毛剤、リップケア製品、洗顔料、スキンケア化粧品などに使用されます(文献1:2006;文献4:1982;文献5:1988;文献6:2015;文献7:2000;文献10:2010;文献12:2012)

血行促進作用

血行促進作用に間しては、1982年に大阪薬品研究所によって公開された技術情報によると、水、含水アルコールまたはアルコールで抽出したショウキョウエキスを外用すると皮膚の毛細血管拡張により血行は著しく促進されると報告されています(文献4:1982)

また、2004年にバスクリン(旧称:ツムラライフサイエンスセンター)によって0.00005%~0.1%ショウガ根茎エキスとボタンエキスを併用することで、非常に高い血行促進効果が得られると報告されています。(文献9:2004)

チロシナーゼ活性低下による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性低下による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラノサイト内におけるメラニン生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をてみもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

2010年にポーラ化成によって公開されたショウガ抽出エキスのメラノサイト内pH酸性化によるメラニン生成抑制検証によると、

酵素は細胞内の環境(温度やpH)によって活性度合いが変わるため、チロシナーゼにこの理論を応用しました。

色素沈着はメラノサイト内のチロシナーゼが活発化し、メラニン過剰に生成することででき、またチロシナーゼは中性領域(pH7付近)で最も活発に働きます。

そこで培養ヒトメラノサイトを用いてショウガ抽出エキスをメラノサイトに添加すると、メラニンの生成が抑制されるのを発見し、作用メカニズムを検証したところ、メラノサイト内部(メラノソーム)のpHを酸性化することでチロシナーゼの活性を濃度依存的に低下させ、濃度依存的にメラニン生成を抑制することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:2010)、ショウガ根茎エキスにチロシナーゼ活性低下による色素沈着抑制作用が認められています。

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスターゼを解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献8:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

2000年にノエビアによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてエタノール抽出したワレモコウ根イタドリ根メリッサ葉ローズマリー葉ベニバナ花、ショウガ根茎それぞれ100μg/mLのエラスターゼ活性阻害率を測定したところ、以下の表のように、

試料 エラスターゼ阻害率(%)
ワレモコウ根 68.7
イタドリ根 20.2
メリッサ葉 23.4
ローズマリー葉 20.3
ベニバナ花 20.2
ショウガ根茎 22.1

ショウガ根茎エキスは100μg/mLで20%以上の有意なエラスターゼ阻害率を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2000)、ショウガ根茎エキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

メントールとの併用による冷感増強作用

メントールとの併用による冷感増強作用に関しては、まずメントールについて解説します。

メントールは、ハッカに含まれる主成分でハッカ臭のある芳香と強い清涼感が特徴で、約26℃で冷たいという信号を発する冷刺激受容体に作用して、より高い温度でも冷たく感じさせる成分です。

2015年に小川香料によって公開された技術資料によると、

ヒトの手の甲に0.4%ショウキョウエキス配合メントール入り洗浄剤水溶液とショウキョウエキスのみ未配合の同水溶液を塗布し、塗布10分後に各手の甲を5段階評価したところ、以下のグラフのように、

ショウキョウエキスのメントール増強作用

0.4%ショウキョウエキス配合した場合冷感の増強効果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2015)、ショウガ根茎エキスにメントールの冷感増強作用が認められています。

メントールの作用を増強するのであり、ショウガ根茎エキスそのものに冷感作用はありません。

ベタつき軽減による感触改善作用

ベタつき軽減による感触改善作用に関しては、加水分解コメエキスと併用することで加水分解コメエキスに起因するベタつきを抑制することが報告されています(文献12:2012)

育毛作用

育毛作用に関しては、1988年に三井化学によって公開された技術情報によると、

除毛したモルモットの背部にエタノール抽出したショウガ根茎エキス1%を含む試料を週3回4週間にわたって塗布した。

また対照としてショウガ根茎エキスのみを除去した試料も同じように塗布した。

除毛後1週間から4週間の間の毛の長さ、1週間で伸びる毛の長さを20本測定し平均値を求めたところ、以下の表のように、

試料 1週目(mm) 2週目(mm) 3週目(mm) 4週目(mm)
1%ショウガ根茎エキス配合試料 6.0 13.8 21.5 28.1
対照試料 6.5 11.5 16.7 19.7

1%ショウガ根茎エキスを配合した場合は、極めて顕著にモルモットの毛の成長速度を速めた。

また同様の試験を複数行ったが、結果は同様のものであったため、1%ショウガ根茎エキスは養毛・育毛効果を有することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1988)、ショウガ根茎エキスに育毛作用が認められています。

また、2004年にバスクリン(旧称:ツムラライフサイエンスセンター)によって0.00005%~0.1%ショウガ根茎エキスとボタンエキスを併用することで、非常に高い育毛効果が得られると報告されています。(文献9:2004)

複合植物エキスとしてのショウガ根茎エキス

混合植物エキスOG-D1という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミンを中和・分解する消臭作用
  2. タバコ臭を中和・分解する消臭作用

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって4大悪臭およびタバコ臭を多角的に消臭するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合は混合植物エキスOG-D1であると推測することができます(文献11:2015)

ショウガ根茎エキスは、抽出溶媒がエタノールの場合ショウキョウチンキ(ショウキョウエキス)に該当するため、ネガティブリスト該当成分であるとされており、以下のような配合基準となっています。

すべての化粧品 マメハンミョウエキス(カンタリスチンキ)、ショウキョウエキス(ショウキョウチンキ)、トウガラシエキス(トウガラシチンキ)、トウガラシ果実エキスの合計量として1.0g/100g

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ショウガ根茎エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ショウガ根茎エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、ショウガ根茎エキスの血行促進作用は皮膚への局所刺激によって作用するため、わずかな皮膚刺激を感じる可能性が考えられます。

詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

エタノール抽出の場合は皮膚刺激があるため、配合量は1%以下に規定されており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激はほとんどないと考えられます。

ただし、皮膚炎やバリア機能が低下した皮膚を有する場合は1%以下の配合量でも皮膚刺激を起こす可能性が考えられます。

詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ショウガ根茎エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ショウガ根茎エキスは■(∗1)となっていますが、これはネガティブリストに該当し、成分の特性上、皮膚刺激をともなうおそれがあるからだと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ショウガ根茎エキスは血行促進成分、美白成分、抗老化成分、温冷感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:血行促進成分 美白成分 抗老化成分 温冷感成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,372-373.
  2. 原島 広至(2017)「ショウキョウ」生薬単 改訂第3版,296-297.
  3. 鈴木 洋(2011)「生姜(ショウキョウ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,220-221.
  4. 大阪薬品研究所(1982)「外用消炎血行促進剤」特開昭57-095915.
  5. 三井化学株式会社(1988)「養毛・育毛剤」特開昭63-033319.
  6. 小川香料株式会社(2015)技術資料
  7. 株式会社 ノエビア(2000)「エラスターゼ阻害剤、及びこれを含有して成る老化防止用皮膚外用剤」特開2000-319189.
  8. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  9. 株式会社バスクリン(2004)「育毛剤組成」特開2004-339148.
  10. “ポーラ化成工業株式会社”(2010)「ショウガ抽出エキスがメラノサイト内のpHを酸性化、メラニンの生成を抑制することを発見」, <http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_2010_1.pdf> 2018年11月27日アクセス.
  11. 小川香料株式会社(2015)化粧品用エキス剤混合植物エキスOGシリーズ
  12. 花王株式会社(2012)「化粧料」特開2012-012318.

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