アカヤジオウ根エキスとは…成分効果と毒性を解説

血行促進 抗脱毛
アカヤジオウ根エキス
[化粧品成分表示名称]
・アカヤジオウ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・ジオウエキス

ゴマノハグサ科植物アカヤジオウ(学名:Rehmannia glutinosa = Rehmannia chinensis 英名:glutinous rehmannia)の根からエタノールで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

アカヤジオウ(赤矢地黄)は、中国を原産とし、日本でも古くは栽培されていましたが、現在では主に北海道、長野県、奈良県などでわずかに栽培されているのみとなっています(文献1:2011)

生薬としての地黄は、加工方法によって日干しあるいは加熱して乾燥させた「乾地黄」と新鮮な根を酒などで蒸した後で乾燥させた「熟地黄」に大別され、これらは成分組成および効能が異なることから中国では区別して用いられていますが、日本漢方ではあまり熟地黄を用いてこなかった経緯から区別されておらず、一般に地黄といえば乾地黄を指し日本薬局方ではジオウとのみ規定されています(文献1:2011)

化粧品におけるジオウは、化粧品成分表示名称として「アカヤジオウ根エキス」と「ジオウ根エキス」が登録されており、これらにおいても明確に区別されているわけではありませんが、実際の配合目的などを調べるかぎりでは「アカヤジオウ根エキス」は血流促進系としての成分組成および効果目的で用いられ、「ジオウ根エキス」は保湿系の成分組成および効果目的で用いられていると推測されます。

ただし、「ジオウ根エキス」の場合は血流促進効果を目的に用いられている場合があり、この場合は「アカヤジオウ根エキス」と同様の成分組成であると考えられます。

アカヤジオウ根エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド イリドイド カタルポール(主要成分)、レーマニオシドA,B,C,D
糖質 少糖 スタキオース

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献2:2011;文献3:2013;文献4:1995;文献5:1996)、主成分のカタルポール(catalpol)には血流促進作用、血流促進作用に基づく利尿作用などが知られています(文献4:1996;文献6:2016)

アカヤジオウ根(生薬名:地黄)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において津液(∗1)と血を補い清熱することから津液不足による発熱や炎症、糖尿病、吐血、鼻出血、月経不順などに用いられています(文献1:2011;文献6:2016)

∗1 津液(しんえき)とは、体内における活性のある正常な水分や正常な体液のことをいい、唾液、涙、鼻水、汗、尿などもこれに含まれます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、頭皮ケア製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シート&マスク製品、まつ毛美容液などに使用されています。

血管拡張による血行促進作用

血管拡張による血行促進作用に関しては、2005年に一丸ファルコスによって報告された皮膚温度に対するアカヤジオウ根エキスの影響検証によると、

健康な男女2人の被検者(40代男性1人、20代女性1人)に恒温恒湿室(室温25±1,湿度50±5%)にて30分間馴化した後にサーモグラフィにて温度を測定した。

次に被検者の手に25℃に保った25%アカヤジオウ根エキス水溶液および比較として50%エタノール水溶液を手首まで5分間浸し、十分に拭き取った後、手の甲の温度を測定したところ、以下のグラフのように、

アカヤジオウ根エキスの皮膚表面温度回復作用

アカヤジオウ根エキスを塗布した手の温度は、50%エタノール水溶液と比較してより速やかに回復した。

この結果よりアカヤジオウ根エキスには皮膚温の回復を促進させる作用、すなわち皮膚の血流を改善する作用が期待される。

このような試験結果が明らかにされており(文献7:2005)、アカヤジオウ根エキスに血管拡張による血行促進作用が認められています。

5α-リダクターゼ阻害による抗脱毛作用

5α-リダクターゼ阻害による抗脱毛作用に関しては、まず前提知識として毛髪の成長メカニズムと脱毛症における男性ホルモンの働きおよび5α-リダクターゼについて解説します。

毛髪の成長メカニズムに関しては、以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

毛髪は、毛細血管が蜜に分布し毛の栄養や発育を司る毛乳頭細胞から毛母細胞に栄養が供給され、栄養を受けた毛母細胞が細胞分裂を行い、分裂した片方が毛母にとどまり次の分裂に備え、残りの片方が毛の細胞(毛幹)となって角化していき、次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献8:2002;文献9:2002)

また、毛髪には周期があり、以下の毛周期図を見てもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

成長期に入ると約2-6年の期間、毛幹(∗2)が伸び続け、その後に短い退行期が訪れることにより毛根が退縮し、やがて休止期となり毛髪が脱落、数ヶ月の休止期間の後に再度成長期に入って毛幹が伸びていくというサイクルを一生繰り返します(文献10:2009)

∗2 毛幹とは、毛の皮膚から外に露出している部分のことであり、一般に毛と認識されている部位です。

休止期には毛乳頭も縮小しますが消失することはなく、その後の休止期から成長期への移行により再び増大し、休止期毛包の一部が再び毛乳頭細胞と接触して分裂・増殖をはじめ、毛乳頭細胞を取り囲んで新しい毛球部を形成することによって次の毛周期がはじまるため、通常は毛髪量は一定に保たれています(文献11:2016;文献12:1999)

一方で、なんらかの理由で生理的な範囲以上に脱毛が起こり毛髪量が減少する脱毛症が知られており(文献13:2009)、一般に広く知られている脱毛症として男性型脱毛症と女性型脱毛症があります。

男性型脱毛症とは、前頭部から頭頂部を主体に頭髪が次第に粗となる状態のことであり、これは毛周期における成長期が短縮し、成長期毛包が次第に小さくなり軟毛化する結果生じることが知られているのに対して、中年以降の女性において頭頂部を中心に薄毛化が起こる状態を女性型脱毛症と呼び、男性型脱毛症とは別の原因による脱毛症であると考えられていました(文献13:2009;文献14:2003)

ただし、最近では女性型脱毛症も体内の性ホルモンバランスの崩れなどにより男性ホルモンの働きが強くなった結果として生じると考えられてきており、男性型脱毛症と女性型脱毛症をまとめて壮年性脱毛症と呼ぶことが提唱されています(文献14:2003)

脱毛症における男性ホルモンの働きについては、以下の毛乳頭におけるテストステロン(男性ホルモン)の作用メカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛乳頭におけるテストステロンの作用メカニズム

毛乳頭に分布する毛細血管から男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)が毛乳頭に取り込まれ、取り込まれたテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(Dihydrotestosterone:ジヒドロテストステロン)に変化し、さらにDHTが組織内の男性ホルモン受容体と結合して男性ホルモン作用を発現しTGF-βやDKK-1などの脱毛因子を誘導することが毛成長抑制(脱毛)への最初のステップとして知られています(文献13:2009;文献14:2003;文献15:2013)

このような背景から、5α-リダクターゼを阻害することは脱毛抑制アプローチにおいて重要であると考えられます。

2005年に一丸ファルコスによって報告されたアカヤジオウ根エキスの5α-リダクターゼおよびヒト毛髪への影響検証によると、

男性ホルモンの一種であるテストステロン緩衝液に各濃度のアカヤジオウ根エキス、5α-リダクターゼおよびNADPHを加えて37℃で反応させ、処理後に5α-リダクターゼ阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

アカヤジオウ根エキスの5α-リダクターゼ阻害作用

アカヤジオウ根エキスは濃度依存的に5α-リダクターゼを阻害する作用が確認された。

次に、男性型脱毛と思われる男性被検者の頭部に25%アカヤジオウ根エキス(50%エタノール抽出)溶液を1日2回2ヶ月間塗布し、塗布開始前と塗布開始2ヶ月後に頭部を撮影し判定したところ、毛髪量が増加しており、被検者からは抜け毛が減ったという評価が得られた。

このような試験結果が明らかにされており(文献7:2005)、アカヤジオウ根エキスに5α-リダクターゼ阻害による抗脱毛作用が認められています。

また、毛髪量の増加に関しては、抗脱毛作用だけでなく頭皮の血流増加も関与していることが可能性として考えられます。

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アカヤジオウ根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

アカヤジオウ根エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

池田回生病院皮膚科の安全性試験データ(文献16:1996)によると、

  • [ヒト試験] 30人の女性被検者(20-58歳)の腕に注射針で#型に乱切を加え、2%アカヤジオウ根エキス(50%エタノール抽出)を含む水溶液を20分間閉塞パッチ適用し、パッチ除去10分後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

光毒性および光感作性について

池田回生病院皮膚科の安全性試験データ(文献16:1996)によると、

  • [ヒト試験] 30人の女性被検者(20-58歳)の腕に注射針で#型に乱切を加え、2%アカヤジオウ根エキス(50%エタノール抽出)を含む水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に適用部位の左半側をアルミ箔を入れた黒色テープで覆い、UVAライト(3J/c㎡)を12.5cmの距離で5分間照射した。照射30分および72時間後に光毒性および光感作性を評価したところ、いずれの被検者も光毒性および光感作を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

アカヤジオウ根エキスは血行促進成分、抗脱毛成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:血行促進成分 抗脱毛成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「地黄(じおう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,190.
  2. 竹田 忠紘, 他(2011)「ジオウ」天然医薬資源学 第5版,96-97.
  3. 御影 雅幸(2013)「ジオウ」伝統医薬学・生薬学,119.
  4. 北川 勲, 他(1995)「生薬修治の化学的解明(第10報)地黄(Rehmanniae Radix)の含有成分その4. : 中国, 韓国及び日本産各種地黄の成分比較」YAKUGAKU ZASSHI(115)(12),992-1003.
  5. 久保 道徳, 他(1996)「地黄の研究(第3報)地黄の修治法の違いによる成分変化と血液レオロジー改善作用との関連性」YAKUGAKU ZASSHI(116)(2),158-168.
  6. 根本 幸夫(2016)「地黄(ジオウ)/乾地黄(カンジオウ)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで,90-93.
  7. 伴野 規博, 他(2005)「血流促進と抗男性ホルモン作用を併せ持つジオウエキスの育毛効果」Fragrance Journal(33)(12),73-78.
  8. 朝田 康夫(2002)「毛髪の構造と働きは」美容皮膚科学事典,346-347.
  9. 朝田 康夫(2002)「毛髪をつくる細胞は」美容皮膚科学事典,347-349.
  10. 中村 元信(2009)「毛周期と毛包幹細胞, 毛乳頭細胞」美容皮膚科学 改定2版,78-81.
  11. 日光ケミカルズ(2016)「育毛剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,551-572.
  12. 板見 智(1999)「毛の発育制御機構解明における最近の進歩と育毛剤」日本化粧品技術者会誌(33)(3),220-228.
  13. 斎藤 典充, 他(2009)「脱毛症」美容皮膚科学 改定2版,642-647.
  14. 松崎 貴(2003)「脱毛症の生物学」最新の毛髪科学,47-53.
  15. S. Inui, et al(2013)「Androgen actions on the human hair follicle: perspectives」Experimental Dermatology(22)(3),168-171.
  16. 須貝 哲郎(1996)「頭皮用製品の低刺激性低アレルギー性評価」皮膚(38)(4),448-456.

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