化粧品に使用される両性界面活性剤
両性界面活性剤の解説
両性界面活性剤(Amphoteric Surfactant)とは、以下の構造図をみるとわかるように、
その分子中の親水基にアニオン基とカチオン基の両方をもっている界面活性剤のことです(∗1)。
∗1 アニオンは陰イオン、カチオンは陽イオンのことですが、陰イオンおよび陽イオンという名称は、厳密には液体中にそれらが存在しているときのものであり(気体中では陰イオン、陽イオンとはいわず、アニオン、カチオンのみになります)、一般に構造そのものを指すときはアニオンおよびカチオンということから、陰イオン基・陽イオン基とはいわず、アニオン基・カチオン基といいます。
両性界面活性剤は、一般的には酸性溶液中で陽イオン界面活性剤、アルカリ溶液中で陰イオン界面活性剤、中性溶液中で両性界面活性剤の性質を示すものが代表的ですが、化粧品成分としては、以下の表のように、
アミノ酸型 | ベタイン型 | ||
---|---|---|---|
アミノ酢酸ベタイン型 | スルホベタイン型 | ||
酸性領域(等電点以下)(∗2) | 陽イオン界面活性剤 | 陽イオン界面活性剤 | 両性界面活性剤 |
塩基性領域(等電点以上) | 陰イオン界面活性剤 | 両性界面活性剤 | 両性界面活性剤 |
中性領域(等電点付近) | 両性界面活性剤 | 両性界面活性剤 | 両性界面活性剤 |
∗2 等電点とは、両性界面活性剤のようなアニオンになる官能基とカチオンになる官能基の両方を持つ化合物において、ちょうどアニオン性とカチオン性とがバランスする点であり、電離後の化合物全体の電荷平均が0となるpHのことです。
塩基性(アルカリ性)領域および/または酸性領域でも両性界面活性剤の性質を示すものも広く使用されています。
化粧品に使用される両性界面活性剤の種類とその構造
化粧品において主に使用される両性界面活性剤は、以下の表のように、
分類 | 分類(詳細) | 化粧品成分名称 |
---|---|---|
アミノ酸型 | グリシン型 | ココアンホ酢酸Na ラウロアンホ酢酸Na |
ベタイン型 | アミノ酢酸ベタイン型 | コカミドプロピルベタイン ラウラミドプロピルベタイン ラウリルベタイン ココベタイン |
スルホベタイン型 | ラウリルヒドロキシスルタイン ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン |
|
天然系 | レシチン | レシチン リゾレシチン 水添レシチン |
一般的にはアミノ酸型または/およびベタイン型が汎用されており、また天然のものとしてはレシチンが古くから使用されています。
また、各両性界面活性剤の構造は、以下の表のような違いがあり、
分類 | アニオン部分 | カチオン部分 |
---|---|---|
アミノ酸型 | カルボン酸塩型 | アミン塩型 |
ベタイン型 | 第四級アンモニウム塩型 | |
レシチン | リン酸エステル塩型 |
アミノ酸型は等電点で沈殿する傾向がありますが、ベタイン型は等電点でも比較的よく溶け、また浸透性、洗浄性および帯電防止性などもアミノ酸型と比較してベタイン型のほうが一般的に優れています。
化粧品に使用される両性界面活性剤の作用・効果
両性界面活性剤は、一般的に酸性溶液中で陽イオン界面活性剤、アルカリ溶液中で陰イオン界面活性剤、中性溶液中で両性界面活性剤の性質を示すため、それらに関連する機能を発現しますが、化粧品においては、
- 陰イオン界面活性剤の洗浄力増大
- 陰イオン界面活性剤の起泡力および泡持続性向上
- 陰イオン界面活性剤の増粘
- 陽イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤の可溶化
- 陰イオン界面活性剤の刺激性緩和
- 乳化
- 殺菌・抗菌
- 陰イオン界面活性剤およびカチオン化高分子との併用によるヘアコンディショニング作用
など、基本的に主剤として使用されることはほとんどなく、陰イオン界面活性剤の機能向上や他の界面活性剤との相乗効果を目的とする助剤として汎用されています。
化粧品に使用される両性界面活性剤一覧
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