テオブロマグランジフロルム種子脂とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
テオブロマグランジフロルム種子脂
[化粧品成分表示名称]
・テオブロマグランジフロルム種子脂

[慣用名]
・クプアスバター

アオギリ科植物クプアス(学名:Theobroma grandiflorum)の種子から得られる植物油脂です。

クプアスは、ブラジルを原産とし、ブラジル北部をはじめコロンビア、ボリビアおよびペルーで栽培されており、ブラジル北部のパラー州で最大の生産量をほこります。

クプアスはカカオと同じ種類に属しており、その果実はトロピカルフルーツ独特のさわやかで強い芳香があり、地元住民の貴重な食料源として長年用いられてきています。

クプアスの種子油であるクプアスバターは、滑らかでしっとりした感触を皮膚や毛髪に与えるカカオ脂に似たクリーミーな固体脂で、地元住民の食料としてだけでなく、チョコレートなどの食品原料として広く用いられています。

テオブロマグランジフロルム種子脂の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 0.1
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 43.9
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 4.6
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 7.2
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 30.8
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 11

このような種類と比率で構成されています(文献1:2017)

全体の約70%をオレイン酸約40%とステアリン酸約30%が占めており、不飽和脂肪酸のほとんどは二重結合が1つのオレイン酸のみであるため、総合的に酸化安定性は高いと考えられます。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
43.5 不乾性油 26.9

一例としてこのように記載されていますが(文献2:2005)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は26.9℃であり、日本においては冬など26.9℃以下の気温では半固体ですが、夏など26.9℃を超えてくると液体化し始めます。

カカオ脂と同様にステアリン酸およびオレイン酸が主成分で、カカオ脂は融点が32-39℃であるため体温でシャープに溶解しますが、テオブロマグランジフロルム種子脂は低融点のオレイン酸の割合が高く、融点が26.9℃とやや低いため、体温で溶解はするもののカカオ脂のようにシャープな溶解性は示さないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップ製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ヘアケア製品、日焼け止め製品などに使用されます(文献1:2017;文献2:2005)

皮膚柔軟化および皮表水分量増加によるエモリエント作用

皮膚柔軟化および皮表水分量増加によるエモリエント作用に関しては、しっとりした感触で柔軟性を保ちながら厚さをもって伸びる性質があり、この性質もてつだって他の植物油脂にはみられない高い抱水性を有しており、皮膚や毛髪に滑らかな柔軟性のある感触を与えるとともに自然な保水効果を持続させます(文献2:2005)

効果・作用についての補足

テオブロマグランジフロルム種子脂には、紫外線に対するバリアー効果があり、陽射しから皮膚や髪を守るという記載が確認されていますが(文献2:2005)、作用メカニズムおよびその効果の度合いが不明瞭であるため、現時点では紫外線防御作用について記載していません。

作用メカニズムおよび/または効果の度合いが確認でき次第、あらためて記載を検討します。

またオレイン酸およびステアリン酸を主成分とすることから、ブラジルなど地元では石ケン原料としても使用されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

テオブロマグランジフロルム種子脂の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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テオブロマグランジフロルム種子脂の安全性(刺激性・アレルギー)について

テオブロマグランジフロルム種子脂の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に5%テオブロマグランジフロルム種子脂を含むリップバーム150μLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Product Investigations Inc,2008)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度以下において共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に5%濃度以下において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

テオブロマグランジフロルム種子脂はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 香栄興業株式会社(2005)「精製クプアスバター」Fragrance Journal(33)(2),116-117.

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