PEG(ポリエチレングリコール)とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿 増粘
PEG(ポリエチレングリコール)
化粧品成分表示名称 医薬部外品表示名称
PEG-4 ポリエチレングリコール200
PEG-6 ポリエチレングリコール300
PEG-8 ポリエチレングリコール400
PEG-12 ポリエチレングリコール600
PEG-20 ポリエチレングリコール1000
PEG-6,PEG-32 ポリエチレングリコール1500
PEG-32 ポリエチレングリコール1540
PEG-40 ポリエチレングリコール2000
PEG-75 ポリエチレングリコール4000
PEG-150 ポリエチレングリコール6000
PEG-240 ポリエチレングリコール11000
PEG-400 ポリエチレングリコール20000
PEG-45M 高重合ポリエチレングリコール
PEG-90M 高重合ポリエチレングリコール

化学構造的にまたは多価アルコール(∗1)の一種であるエチレングリコールに酸化エチレン(エチレンオキシド:ethylene oxide)を付加重合して得られる水溶性の酸化エチレン重合体(∗2)であり、均一な単体化合物ではなく、重合度の異なる分子の混合物です。

∗1 多価アルコールとは、2個以上のヒドロキシ基(水酸基:-OH)をもつアルコールを指し、ヒドロキシ基の影響で非常に高い吸湿性と保水性をもっていることから化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は1個の水酸基をもつ一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール)は別の化合物です。

∗2 重合とは、複数の単量体(モノマー)が結合して鎖状や網状になる反応のことをいい、単量体(モノマー)が結合して鎖状または網状になった化合物を重合体(ポリマー)といいます。

PEG(polyethylene glycol:ポリエチレングリコール)そのものである「PEG-数字」と、PEG-60水添ヒマシ油ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルに代表される「PEG-数字●●」は全く別の成分であり、「PEG-数字●●」は「●●」にあたる疎水性成分(∗3)に水溶性高分子であるPEGを結合することによって合成される非イオン界面活性剤です。

∗3 疎水性とは、水との親和性が低い、水に溶解しにくい、水と混ざりにくい性質のことです。

PEGは、医薬部外品表示名称の数値がそのまま平均分子量となっており(∗4)、数字の違いによる性質は、以下の表にように、

∗4 「ポリエチレングリコール1500」は単一化合物ではなく、PEG-6とPEG-32の併用であることから、平均分子量とは異なっています。

PEG(∗5) 外観 平均分子量 水酸基価(∗6) 粘度(mm²/s) 吸湿性
300 透明液体 285 – 315 356 – 393 5.0 – 6.2


4000以上はほとんどなし

400 透明液体 380 – 420 267 – 295 6.0 – 8.0
600 透明液体 570 – 630 178 – 196 10 – 12
1000 ロウ状個体 950 – 1050 107 – 118 17 – 20
1500 ワセリン様 500 – 600 187 – 224 13 – 18
1540 ロウ状個体 1300 – 1600 70.0 – 86.2 25 – 32
2000 ロウ状個体 1800 – 2200 51.0 – 62.0 36 – 46
4000 フレーク 2700 – 3400 33.0 – 41.0 75 – 85
6000 フレーク 7400 – 9000 12.5 – 15.2 700 – 900
20000 フレーク 18000 – 25000 5.2 – 6.2 11500 – 15000

∗5 表の「PEG」における数字は、性質を反映してわかりやすいことから医薬部外品表示名称の数字部分を記載しています。

∗6 水酸基価とは、試料中の水酸基(ヒドロキシル基:-OH)の含有量を表す指標であり、分子中に水酸基の占める割合いが多いほど水酸基価は大きくなります(文献2:-)。ポリエチレングリコールにおいては水酸基価が大きくなるにつれて保湿性・吸湿性および水への溶解性が高くなり、一方で水酸基価が小さいほど保湿性・吸湿性および水への溶解性は低くなります(文献3:2001)。

外観としては、ポリエチレングリコールの数字(平均分子量)が600以下では液体、1,000以上では数字が大きくなるにつれて半個体(ペースト)から固体となり、性質としてはポリエチレングリコールの数字が大きくなるほど水酸基価は小さくなり、粘度は大きくなります(文献4:2016)

PEG(医薬品・医薬品添加物記載名称:マクロゴール)の化粧品以外の主な用途としては、医薬品分野において毒性が低く様々な性状があり汎用性が高いことから主に軟膏基剤、座薬基剤、錠剤のコーティング剤や結合剤(バインダー)として広く用いられています(文献5:2019)

また、口腔衛生分野においてはタバコのヤニ除去有効成分であることから薬用歯磨剤として用いられています(文献6:2015)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、ヘアスタイリング製品など様々な製品に汎用されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献7:2002;文献8:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献9:1989;文献10:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

1969年に資生堂によって報告されたPEGの保湿性・吸湿性およびヒト皮膚に対する影響検証によると、

化粧品に用いられる保湿剤として非常に重要である多価アルコールのうち代表的な保湿剤の吸湿性を、気温21-27℃および湿度50%の環境下で各保湿剤の重量を100%としてそれぞれの重量増加率を評価したところ、以下のグラフのように、

多価アルコールの吸湿平衡 [湿度50%,気温21-27℃]

PEG-12以下ではおよそBGと同等の吸湿性を示し、PEGの平均分子量が大きくなるほど吸湿性が低下することが確認された。

次に、水を54-79%含む多価アルコール配合クリームを湿度10-20%および60-70%環境下で30日放置した後のクリーム残存水分量を、水の全量を100として測定したところ、以下の表のように、

多価アルコール 濃度(%) 湿度10-20%の場合
0% 5% 10% 15% 20% 25%
PEG-8 51.6 38.3 62.5 62.5 65.5 66.2
多価アルコール 濃度(%) 湿度60-70%の場合
0% 5% 10% 15% 20% 25%
PEG-8 58.6 65.9 69.4 71.4 74.7 79.9

PEG-8配合クリームは、湿度10-20%環境下において10%濃度以上で保湿効果が認められるが、一方で5%濃度の添加では保湿剤を添加しない場合よりも水分蒸散量が多くなった。

また、湿度60-70%環境下においては、いずれの濃度においても保湿剤を添加しない場合よりも保湿効果が認められた。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:1969)、PEG-8に皮表柔軟化による保湿作用が認められています。

保湿剤としては比較的さっぱりした感触を付与します(文献12:1989)

PEGは化粧品の保湿剤として使用されてきた古い歴史がありますが、ヒト使用試験データがみつけられていないため、みつかりしだい追補します。

増粘

増粘に関しては、PEGは平均分子量が大きくなるにつれて粘度が増加する性質を有しており(文献4:2016)、さっぱりした水溶性高分子として水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)エマルションを増粘させる目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています(文献13:1990)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2008-2009年の調査結果ですが、以下のように報告されています。

PEG-6の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

PEG-8の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

PEG-32の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

PEG-75の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

PEG-150の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

PEG-400の配合製品数と配合量の調査結果(2008-2009年)

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PEGの安全性(刺激性・アレルギー)について

PEGの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:PEG-8以下およびPEG-32でほとんどなし-軽度、PEG-75以上でほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):PEG-8以下およびPEG-32でまれに皮膚感作を引き起こす可能性あり

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合においてはPEG-8以下でまれに軽度の皮膚感作を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [ヒト試験] 10人のボランティアに3%PEG-8を含む製剤0.3mLを1日1回3週間にわたって23時間閉塞パッチ適用する累積皮膚刺激性試験を実施したところ、この試験物質は軽度の累積皮膚刺激を引き起こす可能性が中程度あると結論付けられた(Hill Top Research Inc,1979)
  • [ヒト試験] 84人の被検者に1%PEG-8を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において17人に少なくとも1回は軽度の紅斑がみられ、チャレンジ期間において24時間時点で1人の被検者にほとんど知覚できない紅斑がみられたが、48時間時点で皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 84人の被検者に1%PEG-8を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において25人に少なくとも1回は最小限-軽度の皮膚刺激が観察され、チャレンジ期間において24時間時点で1人の被検者に最小限の紅斑が観察されたが、48時間で皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 98人の被検者に1%PEG-8を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において3人の被検者に最小限-軽度の刺激が観察されたが、チャレンジ期間において皮膚反応は誘発されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に1%PEG-8を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において4人の被検者にほとんど知覚できない紅斑が観察されたが、皮膚感作反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 23人の被検者の背中にPEG-6およびPEG-8を適用したところ、それぞれ2人および1人に軽度の皮膚感作反応が生じた(Smyth et al,1945)
  • [ヒト試験] 200人の被検者にPEG-8およびPEG-75をパッチテストしたところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さなかった(Smyth et al,1950)
  • [動物試験] 6匹のウサギの剃毛した腹部に未希釈のPEG-6およびPEG-8を4時間適用したところ、24時間で皮膚刺激は観察されなかった(Smyth et al,1945)
  • [動物試験] ウサギに2つの異なるメーカーのPEG-8を閉塞パッチ適用したところ、皮膚刺激スコアは0.04および0だったため、PEG-8は皮膚刺激剤ではなかった。また6週間にわたってウサギを用いた皮膚研究を行っている間も刺激スコアは両方とも0.67で非刺激性であった(Guillot et al,1982)
  • [動物試験] 10匹のモルモットの剃毛した腹部に4日間にわたってPEG-6-32を3gまたは50%PEG-75をそれぞれ6mL適用したところ、PEG類は皮膚を刺激しなかった(Smyth et al,1942)
  • [動物試験] 6匹のウサギにPEG-32を4時間閉塞パッチ適用し、7日間観察したところ、観察中に皮膚刺激は認められなかった(Bushy Run Research Center,1987)
  • [動物試験] 20匹のモルモットに0.1%PEG-75を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作を示さなかった(Carpenter et al,1971)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、PEG-8以下に複数の軽度の皮膚刺激の報告があるため、一般に健常な皮膚においてPEG-8以下のPEGは、まれに軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられる一方で皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、PEG-32はPEG-6を含む構造であるため、PEG-8以下と同様の結論であると考えられます。

一方で、PEG-75以上は分子量が非常に大きく、また皮膚刺激および皮膚感作の報告もほとんどないため、一般に健常な皮膚においてPEG-75以上のPEGは、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹を有する556人の患者にPEG-8を20-24時間チャンバー適用し、1,2および4日後に処置部位の皮膚反応を評価したところ、5人(0.3%)の患者に陽性反応がみられた(Hannuksela et al,1975)
  • [ヒト試験] 92人の皮膚患者にPEG-6を適用したところ、4人(4%)が陽性反応を示した。また、12人の感作された患者のうち5人がPEG-8に反応し、1人がPEG-6-32およびPEG-150に反応したため、PEG類の感作反応は同様の分子量のポリマーのみで起こったと結論づけた(Braun,1969)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、PEG-8以下の場合においてまれに皮膚感作が報告されているため、一般に皮膚炎を有する場合においてPEG-8以下のPEGは、まれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの結膜嚢にPEG-32水溶液0.1mLを点眼したところ、すべての眼で軽度の結膜刺激が観察され、3匹のウサギで虹彩炎が観察されたが、眼刺激兆候は48時間ですべて消失した(Bushy Run Research Center,1987)
  • [動物試験] 希釈していない0.5mLのPEG-6,PEG-8,PEG-32,およびPEG-75はウサギの眼に角膜損傷を引き起こさなかった(Carpenter and Smyth,1946)
  • [動物試験] 4匹のウサギの結膜嚢に35%PEG-8溶液の0.1mLを適用し、2,4,7,26および50時間に観察したところ、PEG-8は眼刺激をほとんど引き起こさなかった(Laillier et al,1975)
  • [動物試験] ウサギに2つの異なるメーカーのPEG-8を点眼し、点眼から1および24時間後および2,3,4,および7日後に評価したところ、眼刺激スコアは8.50および9.83であり、角膜の不透明度は観察されなかった。PEG-8は眼刺激剤ではなかった(Guillot et al,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激がほぼなしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

PEGはベース成分、保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1993)「Final Report on the Safety Assessmentof Polyethylene Glycols (PEGS)-6, -8,-32, -75, -150, -14M, -20M」Journal of the American College of Toxicology(12)(5),429-457.
  2. 日本化粧品技術者会(-)「水酸基価」, <https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/837> 2021年2月5日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(2001)「保湿剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,130-133.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「多価アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,96-101.
  5. 堀江 誠司(2019)「医薬品用ポリエチレングリコール」三洋化成ニュース(512).
  6. 厚生労働省医薬食品局(2015)「薬用歯みがき類製造販売承認基準について」薬食発0325第37号.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  9. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  10. M Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  11. 尾沢 達也(1969)「保湿剤(Humectant)」ファルマシア(5)(10),685-690.
  12. 西山 聖二, 他(1989)「基礎化粧品と皮膚(Ⅱ)」色材協会誌(62)(8),487-496.
  13. 田中 宗男, 他(1990)「美を演出する高分子(化粧品)」高分子(39)(11),802-805.

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