PCA-Naとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿成分
PCA-Na
[化粧品成分表示名称]
・PCA-Na

[医薬部外品表示名称]
・DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液

[慣用名]
・ピロリドンカルボン酸ナトリウム、PCAソーダ

角層に多量に含まれている有機酸であり、通常はグルタミン酸を化学的に合成してつくる白色の結晶または結晶性の粉末で、天然保湿因子の12%を占めます。

高温や低温でも安定しており、水によく溶け、角層に浸透して強力な保湿効果を有しているため、乾燥から肌を守る化粧水、乳液、美容液などのスキンケア化粧品に幅広く使用されています。

毛髪に対しても保湿性が高く、吸湿性があり、つっぱり感を軽減する効果があるので、ヘアケア製品にも配合されます。

他の保湿成分との組み合わせで相乗的に保湿効果が高まるので、効果的な処方が研究されています。

実際にどのような製品にどれくらい配合されているのかというと、海外の調査結果によると以下のように報告されています。

PCA-Naの配合製品数と配合量の調査(1995/1996)

1995年~1996年と古い調査結果ですが、シャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品とスキンケア製品に配合されているのがわかります。

また、以下の調査結果は1995~1996年と2014年の比較になります。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

PCA-Naの配合状況の調査

2014年にはリーブオン製品、リンスオフ製品ともに2~3倍近い製品数に増えているのがわかります。

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PCA-Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

PCA-Naの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、重大なアレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 13人のボランティアの額、頬、首および背中に6.25,12.5,25および50%PCA-Na水溶液を解放パッチ適用し、試験部位を5分間隔で40分間観察したところ、被検者の3人は12.5%以上の濃度で背中に紅斑を生じ、2人の被検者は6.25%に反応したが、これらは最初の5分以内に観察され、30分までには消失しており、額、頬、の皮膚には刺激が認められなかった
  • [ヒト試験] 46人のボランティアの左上腕に30%PCA-Naを1日1回14日間にわたって適用し、6日目と14日目に採点したところ、試験期間中に刺激の兆候は観察されなかった(味の素,1972)
  • [ヒト試験] 46人の男性ボランティアの背中の左側に4,8,16および32%PCA-Na水溶液を閉塞パッチ下で適用し、一方で陰性対照部位に蒸留水、5%ポリエチレングリコールおよび5%グリセリンで処理した。パッチ除去3時間後に採点したところ、平均刺激スコアは陰性対照部位と有意に異ならなかった。被検者の1人はすべての濃度で紅斑を有し、別の被検者は4および8%の濃度で紅斑を示したが、16および32%では部分的な紅斑のみであった(味の素,1972)
  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎患者47人の背中に0.2%PCA-Naを閉塞パッチ下で48時間適用し、パッチ除去24および48時間後に採点したところ、有意な刺激の証拠は認められなかった(味の素,1972)
  • [ヒト試験] 18人のボランティアに2%PCA-Naを含む製剤を用いて4日間の累積刺激試験を実施したところ、陰性だった(CTFA,1990)
  • [動物試験] 10匹のモルモットの剃毛した胴に2,4,8,16,32および50%PCA-Na水溶液を1日1回14日間適用し、適用期間の14日間とさらに適用後14日間観察したところ、いずれの濃度においても刺激は観察されなかった(味の素,1994)
  • [動物試験] 30匹のモルモットの擦り剥いた皮膚に5%PCA-Naを1日1回3日間適用したところ、非刺激性であった(味の素,1994)

と記載されています。

試験結果では一時的にわずか紅斑を有する被検者もみられますが、共通して皮膚刺激はなしとなっているため、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」(文献1:1999)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの右結膜嚢に50%PCA-Na水溶液0.1mLを点眼し、3匹のウサギは点眼2~4秒後にすすぎ、残りの3匹はすすがずそのままにし、24,48,72,96および168時間後にそれぞれの眼を採点したところ、処置群および対照群のいずれのウサギにおいても非常に軽度の炎症が観察されたが、これらの兆候は72または96時間の観察では沈静化していたため、非刺激性と分類された(味の素,1994)
  • [動物試験] 軽度の結膜炎が点眼1時間後に観察されたが24時間後には消失した(UCIB,1990)

と記載されています。

試験結果によると、一過性の最小の炎症や結膜炎が起こる例もみられますが、共通して眼刺激性はなしと結論付けられているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 25人のボランティアに誘導期間として2%PCA-Naを含む製剤0.1gを閉塞パッチ下で48時間適用を5回繰り返し、10日間の無処置期間を経て48時間のチャレンジパッチを適用し、パッチ除去1および24時間後に部位を採点したところ、誘導期間およびチャレンジ期間に刺激は観察されず、感作の証拠も示さなかった(Ivy Laboratories,1991)
  • [ヒト試験] 39人の被検者の背中の3箇所に4,8,16および32%PCA-Naを閉塞パッチ下で適用し、1つは24時間後に採点し、残りの2つは48時間後に採点したところ、皮膚感作の有意な証拠は観察されなかった(味の素,1972)
  • [動物試験] 2,4,8,16,32および50%PCA-Na水溶液を14日間連続で適用した2週間後に10匹のモルモットの右乳房領域に5%PCA-Na水溶液を適用し、48および72時間後に採点したところ、感作の兆候は観察されなかった(味の素,1994)

と記載されています。

試験結果では、共通して皮膚感作性は観察されておらず、国内でも重大なアレルギーの報告はないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」(文献1:1999)によると、

  • [ヒト試験] 感作試験の24時間チャレンジパッチの24時間後にUVライトを50秒間照射し、一方で48時間チャレンジパッチを終えた被検者にも同様にUVライトを照射し、照射24時間後に採点したところ、両方においてUV照射後の刺激の増加は観察されず、むしろ刺激は消散していたため、PCA-Naは光毒性も光感作性も認められないと結論づけた(味の素,1991)
  • [動物試験] 10匹のモルモットの剃毛した背中に1%PCA-Na水溶液を1,4,および7日目に適用し、それぞれのモルモットにUVライトを1日から10日目まで照射し、適用部位を4日目および10日目に採点したところ、光毒性の兆候は認められなかった(味の素,1994)

と記載されています。

試験結果では、共通して光毒性や光感作性なしと結論付けられているため、光毒性や光感作性はほとんどないと考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」(文献1:1999)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの右耳に50%PCA-Na溶液を週に5日2週間にわたって適用し、左耳は対照として放置したところ、毛嚢脂腺の数に有意差は認められなかった(UCIB,1987)

と記載されています。

試験結果はひとつで根拠としては弱いですが、ニキビの原因となる毛嚢脂腺の数に影響がみられないため、ノンコメドジェニック(∗2)であると考えられます。

∗2 ノンコメドジェニックというのは、ニキビの原因となるアクネ菌を増殖させる成分を含んでいないことを意味します。

安全性についての捕捉

以前、PC A-NaにはPCAを肌に塗布するとやがてその部分が赤くなり2時間以内に元に戻るという反応が起こることがあり、危惧されていました。

危惧という認識なのは、一般的には肌が赤くなるというと炎症や皮膚刺激、アレルギー反応と捉えがちですが、血行促進で肌が赤くなることもあるからです。

この問題については、2003年に味の素株式会社アミノサイエンス研究所応用研究部の研究により、PCAを塗って肌が赤くなる現象は2時間続くがPCAの効果は血行促進であることが判明されています(文献2:2003)

実際の研究報告文を以下に要約しておきます。

血行促進や炎症など皮膚の血流の調節や血管の拡張には一酸化窒素(NO)が関与しており、このNOは生体内では「cNOS」という酵素と「iNOS」という酵素から作られます。

結構促進では「cNOS」という酵素だけが働くので赤くなってもすぐに治ります。

炎症の場合は長期間の血流促進が起こるため「iNOS」という酵素が関わってきます。

つまり、

  • cNOSだけ働く=血行促進
  • iNOSが働く=炎症

と判断できます。

PCAを塗って肌が赤くなる現象ではcNOSしか働いていないのでPCAの効果は血行促進という結果になりました。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
PCA-Na

参考までに化粧品毒性判定事典によると、PCA-Naは△(∗3)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

PCA-Naはベース成分、保湿成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1999)「Final Safety Assessment for PCA and Sodium PCA」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/109158189901800206> 2017年10月17日アクセス.
  2. 味の素アミノサイエンス研究所(2003)「天然保湿成分であるL-ピロリドンカルボン酸のNO産生調節による血流促進効果」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj1979/37/4/37_4_287/_pdf> 2017年10月17日アクセス.

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