BG(1,3-ブチレングリコール)とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿 防腐 溶剤
BG
[化粧品成分表示名称]
・BG

[医薬部外品表示名称]
・1,3-ブチレングリコール

[慣用名]
・1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール

アセトアルデヒドのアルドール縮合物を水素添加して得られる多価アルコール(二価アルコール:グリコール)(∗1)で、保湿剤としてベタつきが少なくグリセリンに比べて使用感が軽いことから非常に汎用されている保湿剤です。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献5:1993;文献6:1982;文献8:2012)

皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用

皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用に関しては、1993年に資生堂によって報告された保湿剤のまとめによると、

BGをはじめとする代表的多価アルコール類の吸湿性を比較検討したところ、以下のグラフのように、

50%相対湿度21-27℃における多価アルコールの吸湿性

BGは、相対湿度50%においてPGやグリセリンほど高い吸湿性は有していないが、相対的に中程度の比較的穏やかな吸湿性が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1993)、BGに皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用が認められています。

TEWL抑制によるバリア改善作用

TEWL抑制によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識としてTEWLについて解説します。

TEWLは、Trans Epidermal Water Lossの略で、皮膚表面から空気中へ水分が蒸散される皮膚水分蒸散量(経表皮水分喪失量)を表します(文献7:2002)

アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症などにみられる種々の皮膚症状においては、皮膚からの水分消失が健常な皮膚に比べて盛んであることが知られており、TEWLの増加は表皮内の水分保持やバリア機能を担っている成分の減少が関与していると考えられています。

1982年に資生堂によって公開されたO/Wクリーム成分の皮膚水和に与える影響の検証によると、

代表的な保湿剤であるグリセリン、BGおよびDPGのクリームにおける閉塞性(水分蒸散量)におよぼす影響を検討したところ、以下のグラフのように、

閉塞性(水分蒸散量)と保湿剤の濃度の関係

閉塞性を下げる効果が最も大きいのはグリセリンであり、その次にDPG、BGの順序であった。

これは保湿剤の吸湿性の差に起因するものと考えられた。

そこで、クリーム膜中の保湿剤そのものの保水力を測定したところ、以下のグラフのように、

クリーム中における各保湿剤の保水性

保水力の大きさは、グリセリンが最も大きく、次にDPG、BGの順であった。

つまり、これらの結果から、クリームに配合した際の各保湿剤の特性は、

吸湿性・保水性:グリセリン > DPG > BG
閉塞性:BG > DPG > グリセリン

となっており、吸湿性・保水性と閉塞性は逆の相関関係にあることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2000)、BGにTEWL抑制によるバリア改善作用が認められています。

抗菌・防腐による製品安定化剤

抗菌・防腐による製品安定化剤に関しては、2012年に御木本製薬によって公開された抗菌性物質の最小発育阻止濃度の検証によると、

抗菌性原料の強さを表す最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を基準として、化粧品に汎用される8種類の抗菌性原料(メチルパラベンフェノキシエタノール、BG、ペンチレングリコールエタノールDPG1,2-ヘキサンジオールカプリリルグリコール)の抗菌性を、日本薬局方保存効力試験で推奨された下記5菌種を使用して検討した。

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:Sa)
  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:Pa)
  • 大腸菌(Escherichia coli:Ec)
  • カンジダ(candida albicans:Ca)
  • コウジカビ(aspergillus brasiliensis:Ab)

滅菌容器に20gの試料を入れ、1mLあたり10⁷-10⁸個に調整した微生物懸濁液0.2mLを接種・混合し、1週間おきに一部を取り出し、生菌数をMICを基準として測定したところ、以下の表(∗1)のように、

∗1 表のSa,Pa,Ec,CaおよびAbは菌の英語表記の略語です。またMICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さいほど抗菌力が高いことを意味します。

抗菌剤 MIC:最小発育阻止濃度(%)
Sa Pa Ec Ca Ab
メチルパラベン 0.2 0.225 0.125 0.1 0.1
フェノキシエタノール 0.75 0.75 0.5 0.5 0.4
BG 16 8 10 14 18
ペンチレングリコール 4 2 2 3 3
エタノール 9 5 5 7 5
DPG 22.5 8 12 16 22.5
1,2-ヘキサンジオール 2.5 1 1 1.5 1.5
カプリリルグリコール 0.35 >0.5 0.125 0.175 0.175

BGは他の抗菌剤ほど抗菌力は高くはないことが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2012)、BGに弱い抗菌性が認められているため、抗菌性のある基剤として製品安定化を兼ねて配合されます。

ただし、単独では十分な抗菌活性が認められないことが多く、他の抗菌剤・防腐剤と組み合わせることで抗菌力の高い抗菌剤・防腐剤の配合量を減らすことができます。

植物エキスの抽出溶媒

植物エキスの抽出溶媒に関しては、BGは水溶性成分および油溶性成分の両方の抽出が可能であるため、植物エキスの抽出溶媒として汎用されています。

BGは、基剤として使用される場合は配合量が多いため、成分一覧表示では最初のほうに記載されます。

一方で、基剤として使用していない場合かつ植物溶媒として使用している場合は、BG水溶液に漬け込まれて染み出した植物エキスとともに微量のBGのみが成分一覧に表示されるため、末尾に記載されることになります。

そのため、成分一覧表示の末尾にBGの記載がある場合は、抽出溶媒としての配合であると考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1981-1985年と2002-2003年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

BG(1,3-ブチレングリコール)の配合製品数と配合量の調査結果(1981-1985年および2002-2003年)

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BGの安全性(刺激性・アレルギー)について

BGの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:刺激が起こる可能性あり
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:1985)によると、

  • [動物試験] 希釈されていない100%ブチレングリコールをウサギの皮膚に24時間ずっと4日間にわたって閉塞パッチしたところ、最小の皮膚刺激性しか生じなかった
  • [動物試験] 5.0%~21.4%ブチレングリコールを含む製剤をウサギの皮膚に24時間閉塞パッチしたところ、刺激は生じず、皮膚刺激とブチレングリコールの濃度は関係がないと結論づけた
  • [ヒト試験] 200人(男性80人、女性120人)のボランティアに50%ブチレングリコール水溶液0.9mLを二の腕に24時間閉塞パッチを週に3回合計15回行い、2週間の休息をはさみ24時間の閉塞パッチを行ったところ、皮膚刺激性の反応はなかった
  • [ヒト試験] 希釈されていないブチレングリコールを24時間にわたって37人の被検者には閉塞下で適用し、別の39人の被検者には半閉塞下で適用したところ、半閉塞下の被検者の一人に軽度の刺激が確認されたが、他の被検者に反応は観察されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、化粧品配合範囲濃度において共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:1985)によると、

  • [動物試験] 希釈されていない100%ブチレングリコールをウサギの眼に点眼したところ、眼刺激性あり
  • [動物試験] 6匹のウサギの一方の眼に希釈されていない100%ブチレングリコール0.1mLまたは40%ブチレングリコール水溶液を点眼したところ、眼刺激性は確認されなかった
  • [動物試験] 5.0%~21.4%ブチレングリコールを含む製剤をウサギの眼に点眼したところ、刺激は生じなかった
  • [ヒト試験] ブチレングリコールを1滴ヒトの眼に点眼したところ、プロピレングリコールによって誘発されたものと同様の即時性の刺すような強い痛みを引き起こし、水で洗い流すと急速に痛みが治まった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ヒト試験で強い眼刺激性が報告されているため、強い眼刺激性が起こると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:1985)によると、

  • [動物試験] 雄モルモット12匹に天然および合成グリセリンの0.1%溶液を0.1mLを1日おきに合計10回注射し、2週間の休止後にチャレンジ段階として0.1%溶液0.05mLを注入したところ、感作はみられなかった
  • [ヒト試験] 200人(男性80人、女性120人)のボランティアに50%ブチレングリコール水溶液0.9mLを二の腕に24時間閉塞パッチを週に3回合計15回行い、2週間の休息をはさみ24時間の閉塞パッチを行ったところ、皮膚感作性の反応はなかった
  • フィッシャーによると、ブチレングリコールとプロピレングリコールの間に交差反応性(感作性)が生じるかもしれないことを報告した

名古屋大学医学部環境皮膚科によって報告された個別事例(文献3:2003)によると、

  • [個別事例] 2002年に61歳の女性が顔全体にピリピリと刺激感を認めたため、ステロイド外用を経て、化粧品による接触皮膚炎を疑われたため、患者が使用していた化粧品類、当科化粧品成分シリーズなどを用いて48時間閉塞パッチ試験を実施し、実施から72時間後に皮膚を判定したところ、患者化粧品のうち6種、当科化粧品成分シリーズのうち9種に陽性反応が認められ、該当化粧品にはすべてBGが配合されていた。PGおよびDPGは陰性であった。患者はBGを配合化粧品を避けることで再発していない

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1例接触性皮膚炎の報告がありますが、大部分で皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、PG(プロピレングリコール)に皮膚感作(アレルギー)を有している場合は、BGに交差感作(∗1)が起こる可能性が考えられると報告されています。

∗1 交差感作とは、アレルギー原因物質(ここではPGのことです)と似た化学構造を持っているために免疫細胞が誤って類似構造物質(ここではBGのことです)にも感作反応を示すことをいいます。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BG、グリセリンDPGジグリセリントレハロースグルコースソルビトールプロパンジオールキシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられ、BGは無添加と同等の増加率であるため、アクネ菌の増殖性は認められなかった。

このような検証結果が報告されており(文献4:2009)アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

BGはベース成分、保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2016)「多価アルコール」パーソナルケアハンドブック,98.
  2. Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Butylene Glycol Hexylene Glycol Ethoxydiglycol and Dipropylene Glycol」International Journal of Toxicology(4)(5),223-248.
  3. 杉浦 真理子, 他(2003)「1,3-ブチレングリコールによるアレルギー性接触皮膚炎」アレルギー(52)(2-3),336.
  4. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2018年12月30日アクセス.
  5. 西山 聖二, 他(1993)「保湿剤」色材協会誌(66)(6),371-379.
  6. 西山 聖二, 他(1982)「クリームによる皮膚水和の研究」日本化粧品技術者会誌(16)(2),136-143.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 谷口 康将, 他(2012)「最小発育阻止濃度(MIC)を基準とした予測式からの化粧品の保存効力の予測」
    日本化粧品技術者会誌(46)(4),295-300.

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