モクロウの基本情報・配合目的・安全性

モクロウ

化粧品表示名称 モクロウ
医薬部外品表示名称 モクロウ
化粧品国際的表示名称(INCI名) Rhus Succedanea Fruit Wax
配合目的 基剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ウルシ科植物ハゼノキ(学名:Rhus Succedanea, syn. Toxicodendron succedaneum 英名:Japanese wax tree)の果皮から得られる常温でロウ様固体の油脂植物油脂です(∗1)[1][2a]

∗1 「syn」は同義語を意味する「synonym(シノニム)」の略称です。

「モクロウ(木蝋)」は融点(∗2)が高くロウ様の固体であるため、古くから「ロウ」の名称を冠してよばれていますが、化学構造の上では脂肪酸のトリグリセリドを主成分とする「脂肪」であり、分類としては「ロウ」ではなく「油脂」になります[3]

∗2 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

1.2. 物性・性状

モクロウの物性・性状は(∗3)

∗3 ヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。

状態 融点(℃) ヨウ素価
固体 49-56 3-51(不乾性油)

このように報告されています[4]

1.3. 脂肪酸組成

モクロウの脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 77
ステアリン酸 C18:0 5
日本酸(∗4) C20:0 6
C22:0
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 12

∗4 二塩基酸であるエイコサン二酸(C20:0)とドコサン二酸(C22:0)を合わせて「日本酸」といいます[5a][6]

このような種類と比率で構成されていることが報告されています[2b]

モクロウは、パルミチン酸を主成分とし80%以上が飽和脂肪酸で構成されていることから、自動酸化に対する安定性に優れるといった特徴を有していると考えられます。

また、モクロウ固有の特徴として日本酸の存在があり、モクロウの組織が緻密で粘靱性(∗5)をもつのは日本酸によるところであると考えられています[5b][7a]

∗5 粘靱性とは、粘り強さのことをいい、モクロウにおいてはいわゆる”ねばり”があるということです。

1.4. 分布と歴史

ハゼノキ(櫨の木)は、原産は諸説あるものの日本、台湾、中国、マレーシア、インドシアなどアジアの広い地域に分布しており、日本においては和ろうそく、びんづけ、膏薬などの需要が増加した17世紀後半-18世紀前半に西日本各地で様々な栽培品種が栽培され、明治時代に最盛期を迎えましたが、昭和に入ると戦争を通じて乱伐やハゼ採取人の減少から生産量が減り、現在は本州、九州、四国、沖縄および小笠原諸島などに分布しています[7b][8]

1.5. 化粧品以外の主な用途

モクロウの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
日用品 モクロウ特有の粘靱性からクレヨンや鉛筆に賞用されるほか、和ろうそく、家具などの艶出し剤などに用いられています[7c]
医薬品 潤沢、基剤、コーティング、賦形、分散目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤に、溶剤目的の医薬品添加剤として内痔核注射に用いられています[9]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤

主にこれらの目的で、ペンシル系メイクアップ製品、スティック系メイクアップ製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、モクロウは融点が高く常温で固体を呈し、特有の粘靱性(ねばり)をもつことから[5c][7d]、ロウ様油性基剤としてペンシル系メイクアップ製品、スティック系メイクアップ製品などに汎用されています。

3. 混合原料としての配合目的

モクロウは、混合原料が開発されており、モクロウと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Natural LIP
構成成分 ポウテリアサポタ種子脂、シア脂モクロウカルナウバロウトコフェロール
特徴 保護作用をもち皮脂膜を強化するリップスティック用基剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

モクロウの配合製品数と配合量の比較調査結果(1984年および2002-2003年)

5. 安全性評価

モクロウの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 56名の女性被検者に50%モクロウを含む軟膏と36%までのモクロウを含む3つの製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(University of Carifornia at Los Angels,1979)
  • [ヒト試験] 53名の女性被検者に2.5%モクロウを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(University of Carifornia at Los Angels,1980)
  • [ヒト試験] 56被検者に36%モクロウを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(University of Carifornia at Los Angels,1979;1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に35%モクロウを含む製品0.1gを点眼し、3匹の眼を水ですすぎ、残りの6匹の眼はすすがず、点眼後24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、1つの製品は眼の洗浄の有無にかかわらず刺激がなく非刺激剤とみなされた。2つ目の製品は洗浄していない眼において刺激スコア0.3の最小限の刺激を生じ、洗浄した眼では刺激は認められなかった。この製品は最初の製品同様に非刺激剤と考えられた(ABSL,1979)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼にモクロウ0.1mLを点眼し、1,2,3,4および7日後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(LL,1982)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「モクロウ」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,999.
  2. ab広田 博(1997)「植物脂」化粧品用油脂の科学,26-31.
  3. 広田 博(1970)「植物脂」化粧品のための油脂・界面活性剤,13-14.
  4. 鈴木 修, 他(1990)「油脂およびろうの性状と組成」油脂化学便覧 改訂3版,99-137.
  5. abc水沼 仁宏(1966)「ヒマシ油・木蝋系の物性論的考察」日本化粧品技術者連合会会報(3),10-19. DOI:10.5107/sccj1963.3.10.
  6. 岩田 直大, 他(2013)「櫨蝋に合有される脂肪酸の分析」第二回 朝倉・櫨フォーラム.
  7. abcd大石 孔(1983)「木ろう」ワックスの性質と応用,24-29.
  8. 平岡 裕一郎(2019)「シリーズ日本の森林樹木の地理的遺伝構造(24)ハゼノキ(ウルシ科ウルシ属)」森林遺伝育種(8)(3),138-145. DOI:10.32135/fgtb.8.3_138.
  9. 日本医薬品添加剤協会(2021)「モクロウ」医薬品添加物事典2021,671.
  10. abR.L. Elder(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Candelilla Wax, Carnauba Wax, Japan Wax, and Beeswax」International Journal of Toxicology(3)(3),1-41. DOI:10.3109/10915818409010515.

TOPへ