カカオ脂の基本情報・配合目的・安全性

カカオ脂

化粧品表示名称 カカオ脂
医薬部外品表示名称 カカオ脂
慣用名称 カカオバター、ココアバター
化粧品国際的表示名称(INCI名) Theobroma Cacao (Cocoa) Seed Butter
配合目的 基剤エモリエント など

1. 基本情報

1.1. 定義

アオイ科植物カカオノキ(学名:Theobroma cacao 英名:Cacao)の種子(カカオ豆)から得られる脂肪植物脂です[1]

1.2. 物性・性状

カカオ脂の物性・性状は(∗1)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。

状態 融点(℃) ヨウ素価
固体 32-39 29-38(不乾性油)

このように報告されています[2a][3a]

1.3. 脂肪酸組成

カカオ脂の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 0.1
パルミチン酸 C16:0 25.6
ステアリン酸 C18:0 34.6
アラキジン酸 C20:0 0.9
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 0.2
オレイン酸 C18:1 34.7
リノール酸 C18:2 3.3

このような種類と比率で構成されていることが報告されており[3b]、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸を主成分としていることから、酸化安定性に優れるといった特徴を有していると考えられます[4a]

1.4. 分布と歴史

カカオノキは、中南米および西インド諸島を原産とし、その種子であるカカオ豆は中南米では貨幣の代わりに使用されたり、儀式に用いられるなど非常に貴重な食べ物とされ、またマヤ王国では不老長寿の薬として飲まれていた記録が残っており、16世紀にはスペイン人がカカオ豆をヨーロッパに持ち帰ったことをきっかけに世界中に広がっていった経緯があります[5]

ヨーロッパにおいてカカオ豆は、最初は薬剤として扱われていたものの、次第に疲労回復の栄養剤、飲用チョコレートと役割を変えつつ16-17世紀にかけてかなり普及し、19世紀には現在の飲用ココアや固形チョコレートなどが完成された嗜好品として世界的に普及するようになり、現在に至ります[6]

1.5. 化粧品以外の主な用途

カカオ脂の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 体温近くで融ける性質のため古くから坐薬基剤に用いられているほか[2b]、安定・安定化、基剤、潤滑、コーティング、賦形目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤などに用いられています[7]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤
  • エモリエント効果

主にこれらの目的で、リップ系化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ボディ石鹸、ボディソープ製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、カカオ脂は融点が32-39℃であることからヒトの体温でシャープに溶ける特性をもつため、使用感の良い油性基剤として口紅をはじめスティック状化粧品に使用されています[4b]

2.2. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、カカオ脂は閉塞性により皮膚の水分蒸発を抑え、その結果として皮膚に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[2c][8]、各種クリーム、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品などに汎用されています。

3. 混合原料としての配合目的

カカオ脂は、混合原料が開発されており、カカオ脂と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ネイチャービードC14
構成成分 コメヌカロウカカオ脂
特徴 固体油脂の真球状スクラブ剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

カカオ脂の配合製品数と配合量の比較調査結果(2017年)

5. 安全性評価

カカオ脂の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[9]によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に50.1%カカオ脂を含むリップバーム150μLを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Product Investigations Inc,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「カカオ脂」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,290.
  2. abc日光ケミカルズ株式会社(1982)「植物油脂」化粧品製剤実用便覧,107-114.
  3. ab鈴木 修, 他(1990)「油脂およびろうの性状と組成」油脂化学便覧 改訂3版,99-137.
  4. ab広田 博(1997)「植物脂」化粧品用油脂の科学,26-31.
  5. 夏目 みどり(2019)「チョコレートの歴史・食文化と機能性」化学と教育(67)(4),184-185. DOI:10.20665/kakyoshi.67.4_184.
  6. 杉田 浩一, 他(2017)「ココア」新版 日本食品大事典,279-280.
  7. 日本医薬品添加剤協会(2021)「カカオ脂」医薬品添加物事典2021,127-128.
  8. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  9. C.L. Burnett, et al(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),51S-129S. DOI:10.1177/1091581817740569.

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