イソステアリン酸水添ヒマシ油の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | イソステアリン酸水添ヒマシ油 |
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医薬部外品表示名 | イソステアリン酸硬化ヒマシ油 |
INCI名 | Hydrogenated Castor Oil Isostearate |
配合目的 | 基剤、安定化(未分類)、光沢 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
イソステアリン酸のカルボキシ基(-COOH)に水添ヒマシ油のヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗1)したエステルです[1]。
∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。
1.2. 物性・性状
イソステアリン酸水添ヒマシ油の物性・性状は(∗2)、
∗2 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。
状態 | 融点(℃) | ヨウ素価 |
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ペースト状物質 | 40-50 | ≦8(不乾性油) |
2. 化粧品としての配合目的
- 油性基剤
- 発汗防止および硬度低下抑制による安定化
- 光沢付与
主にこれらの目的で、パウダー系メイクアップ製品、リップ系メイクアップ製品、その他のメイクアップ製品、リップケア製品、化粧下地製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ボディ&ハンドケア製品などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 油性基剤
油性基剤に関しては、イソステアリン酸水添ヒマシ油はべたつかず、顔料の分散性に優れ、皮膚に対して溶けるようななめらかな使用感をもつことから[3b][4a]、油性基剤として主にパウダー系メイクアップ製品、リップ系メイクアップ製品、その他のメイクアップ製品、化粧下地製品、リップケア製品、ボディ&ハンドケア製品などに汎用されています。
2.2. 発汗防止および硬度低下抑制による安定化
発汗防止および硬度低下抑制による安定化に関しては、イソステアリン酸水添ヒマシ油はスティック状基剤やペンシル状基剤の結晶構造を緻密にすることで発汗(∗3)を防止し、また硬度の低下を抑制することから[5]、固形基剤の保存安定性を高める目的でスティック系製品、ペンシル系製品などに汎用されています。
∗3 口紅などのスティック状化粧品における発汗(sweating)とは、温度変化などにより固形物の結晶バランスが崩れて結晶構造内にオイルが保持されなくなり、オイルが分離して固形物表面に油滴が発生する現象のことをいいます。
2.3. 光沢付与
光沢付与に関しては、イソステアリン酸水添ヒマシ油は自然なツヤを有しており、光沢を付与する目的で主にメイクアップ製品、リップケア製品、トリートメント製品などに使用されています[3c][4b]。
3. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 30年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、
5.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。