ヤシ脂肪酸の基本情報・配合目的・安全性

ヤシ脂肪酸

化粧品表示名 ヤシ脂肪酸
医薬部外品表示名 ヤシ油脂肪酸
INCI名 Coconut Acid
配合目的 基剤加脂肪 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ヤシ油から得られる脂肪酸です[1]

1.2. 脂肪酸組成

ヤシ油の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
カプリル酸 飽和脂肪酸 C8:0 8.0
カプリン酸 C10:0 7.0
ラウリン酸 C12:0 48.0
ミリスチン酸 C14:0 17.5
パルミチン酸 C16:0 8.8
ステアリン酸 C18:0 2.0
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 6.0
リノール酸 C18:2 2.5

このような種類と比率で構成されていることが報告されており[2]、ラウリン酸を主成分とし90%以上を飽和脂肪酸とした構成を特徴としています[3]

ただし、カプリル酸やカプリン酸など炭素数10以下の脂肪酸は皮膚刺激性をもつことから、化粧品に用いられる際にはあらかじめ除去されています[4]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤
  • 加脂肪

主にこれらの目的で、洗顔石鹸、ボディ石鹸、洗顔料、ボディソープ製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、ヤシ脂肪酸はしっとりとした感触を付与する油性基剤として[5a]、乳液、フェイスクリーム、化粧下地、ファンデーション、アイライナーなどに使用されています。

2.2. 加脂肪

加脂肪に関しては、ヤシ脂肪酸はシャンプーや石鹸に加えることで泡をきめ細かくし、かつ過渡の脱脂を抑制することから[5b][6]、皮膚・毛髪の保護を兼ねた泡質改善目的で石鹸や洗浄製品に使用されています[7]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007-2008年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ヤシ脂肪酸の配合製品数と配合量の比較調査結果(2007-2008年および2010年)

4. 安全性評価

ヤシ脂肪酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8a]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギに100%または10%ヤシ脂肪酸を含むコーン油を24時間単一パッチ適用し、適用後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)0.0-4.0のスケールで皮膚刺激性を評価したところ、PIIは100%濃度で0.13、10%濃度で0.12であり、濃度にかかわらず最小限の皮膚刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-最小限の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[8b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギ3群それぞれに未希釈のヤシ脂肪酸を対象に眼刺激性試験を実施し、眼刺激スコア0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、眼刺激スコアは3群それぞれで8,9および1であり、最小限の眼刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1975)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ヤシ脂肪酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1004.
  2. 藤井 徹也(1995)「硬い石けん、軟らかい石けん」洗う -その文化と石けん・洗剤,34-37.
  3. 広田 博(1997)「植物脂」化粧品用油脂の科学,26-31.
  4. 藤井 徹也(1995)「化粧石けんの種類」洗う -その文化と石けん・洗剤,37-39.
  5. ab日光ケミカルズ株式会社(1982)「過脂肪剤」化粧品製剤実用便覧,17.
  6. 田村 隆光(2009)「界面活性剤水溶液の泡膜特性」オレオサイエンス(9)(5),197-210. DOI:10.5650/oleoscience.9.197.
  7. 日油株式会社(2019)「脂肪酸」化粧品用・医薬品用製品カタログ,32-33.
  8. abR.L. Elder(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」Journal of the American College of Toxicology(5)(3),103-121. DOI:10.3109/10915818609141927.

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