エチルヘキサン酸セテアリルの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名 エチルヘキサン酸セテアリル
医薬部外品表示名 2-エチルヘキサン酸セトステアリル、オクタン酸セトステアリル
部外品表示簡略名 エチルヘキサン酸セトステアリル
INCI名 Cetearyl Ethylhexanoate
配合目的 基剤エモリエント など

1. 基本情報

1.1. 定義

分岐鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステルの一種であり、エチルヘキサン酸セチルエチルヘキサン酸ステアリルの混合物です[1][2a]

1.2. 物性・性状

エチルヘキサン酸セテアリルの物性・性状は(∗1)(∗2)

∗1 比重とは固体や液体においては密度を意味し、標準密度1より大きければ水に沈み(水より重い)、1より小さければ水に浮くことを意味します。

∗2 屈折とは光の速度が変化して進行方向が変わる現象のことで、屈折率は「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表されます。光の伝播速度は物質により異なり、また同一の物質でも波長により異なるため屈折率も異なりますが、化粧品において重要なのは空気の屈折率を1とした場合の屈折率差が高い界面ほど反射率が大きいということであり、平滑性をもつ表面であれば光沢が高く、ツヤがでます(屈折率の例としては1.33、エタノールは1.36、パラフィンは1.48)。

状態 比重(d 20/20) 屈折率(n 20/D)
液体 0.852-0.857 1.444-1.447

このように報告されています[3a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤
  • エモリエント効果

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、エチルヘキサン酸セテアリルは油性感がなく、皮膚に対して軽い使用感をもち、展延性(∗3)に優れることから[2b][4a]、油性基剤として主にメイクアップ製品、クリーム系製品などに使用されています。

∗3 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

2.2. エモリエント効果

エモリエント効果に関しては、エチルヘキサン酸セテアリルは皮膚に対する親和性に優れ、皮膚や毛髪に柔軟性や滑らかさを付与するエモリエント性を有していることから[2c][3b][4b][5]、主にメイクアップ製品、クリーム系製品などに使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2012-2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗4)

∗4 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

エチルヘキサン酸セテアリルの配合製品数と配合量の調査結果(1976-2002年および2012-2013年)

4. 安全性評価

エチルヘキサン酸セテアリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚刺激性(アレルギー歴がある場合):ほとんどなし-まれに刺激反応を引き起こす可能性あり
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6a]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 13名の被検者に0.4%エチルヘキサン酸セテアリルを含むヘアケア製剤を対象に21日間皮膚累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施したところ、この試験製剤は実質的に非刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 204名の被検者に3.2%エチルヘキサン酸セテアリルを含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験製剤はいずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 111名の被検者に5%エチルヘキサン酸セテアリルを含む入浴剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験製剤はいずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Testkit Labs,1979)
  • [ヒト試験] 204名の被検者に25-30%エチルヘキサン酸セテアリルを含むデオドラントスプレーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験製剤はいずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)

– アレルギー歴を有する場合 –

  • [ヒト試験] 過去にアレルギー歴のある92名の被検者に100%エチルヘキサン酸セテアリルを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、4名の被検者が軽度から中程度の刺激反応を示したが、他の被検者は皮膚刺激反応を示さなかった(Kolmar Research Center,1963)

このように記載されており、試験データをみるかぎり健常皮膚を有する場合、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

アレルギー歴を有する場合は、まれに刺激反応を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6b]によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に100%エチルヘキサン酸セテアリル0.1mLを点眼し、6匹は眼をすすぎ、残りの3匹は眼をすすがず、Draize法に基づいて点眼24,48および72時間後にOII(Ocular Irritation Index:眼刺激性指数)0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、OIIは24時間で0.78、それ以後は0.0であり、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Kolmar Research Center,1963)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼から15cmの距離をおいて100%エチルヘキサン酸セテアリルスプレーを2秒間噴射し、噴射後にOII(Ocular Irritation Index:眼刺激性指数)0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、OIIは0.0であり、この試験物質は眼刺激剤ではなかった(Food and Drug Research Labs,1977)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6c]によると、

  • [ヒト試験] 10名の被検者に2.5%エチルヘキサン酸セテアリルを含む日焼けローションを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVライトを10-12cmの距離で15分間照射した。照射後に光刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さず、この試験製剤は光刺激剤ではないと結論付けられた(Food and Drug Research Labs,1978)
  • [ヒト試験] 27名の被検者に2.5%エチルヘキサン酸セテアリルを含む日焼けローションを光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、4名の被検者においてわずかな刺激反応がみられたが、これらの反応は光感作の兆候として重要な反応ではないと結論付けられた(Food and Drug Research Labs,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「エチルヘキサン酸セテアリル」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,226.
  2. abc広田 博(1997)「エステル類」化粧品用油脂の科学,91-113.
  3. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「エステル」パーソナルケアハンドブックⅠ,62-86.
  4. abEvonik Industries AG(2008)「TEGOSOFT liquid」Technical Data Sheet.
  5. 平尾 哲二(2006)「乾燥と保湿のメカニズム」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,62-75.
  6. abcR.L. Elder(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Octanoate」Journal of the American College of Toxicology(1)(4),81-90. DOI:10.3109/10915818209021262.

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